第48話 早いのはいけません

 地図に描かれた本拠地には誰も居なかった。

 本拠地は村で中央に教会らしき物がある。

 待ち構えているとすればあそこだろう。


 俺は教会の扉を開けた。

 長椅子が幾つもあり、正面奥には本尊がある。

 本尊は男性の神が、縛って猿ぐつわした女性を犯している姿だった。

 本尊の両脇には磔台がありアイナとモーラが全裸で繋がれていた。

 アイナとモーラは眠らされているようだ。


 本尊に祈りを奉げる男性が一人。


 あれが本当のボスの教主だろう。

 影武者じゃないだろうな。


 俺は駆け寄りたいのを堪え静かに歩み寄った。


 アイナとモーラが魔力感知の範囲に入る。

 魔力感知で処女膜を探る。

 良かった破られていない。


 処女でなくても愛する自信はあるが、アイナとモーラの心の傷にならなくて良かった。


「俺を呼んで、どういうつもりだ」


 教主は立ち上がり振り返った。


「司祭を負かした男に会いたくなった」

「じゃ、二人を返してくれ。無事に返してくれればこの場は退いても良い」


「君は実に素晴らしいね。ランクエレクションを使ってみたよ。あれを君が発明した事は調べがついている」

「何がいいたい」

「仲間になれ。いいや世界の半分を君に渡そう。この世を交合瞑想で染め上げるのだ」


「お前らのは見境のないエロ。楽しくないエロだ。俺のは分別のついたエロ。幸せのエロだ。よって道が違う」

「瞑想や真理の追究に幸せなど求めてどうする」


「みなが幸せになるエロ。良いと思わないか」

「話にならん。どうやらお前とは相容れないようだ」


「俺も色魔教団と仲良くなるのはお断りだ」

「どうやら雌雄を決する必要があるようだ」


 ごちゃごちゃ問答をしたが結局戦いになるんだな。


 俺はお触り魔法を教主に近づけた。


光線レイ


 一瞬、光が見えて、お触り魔法が消えた。

 魔法を発動してから届くまでが一瞬だ。

 秘孔を突く事などできない。


 これは強敵だ。

 相手は魔力感知も使っているようだから、奇襲は無理だ。

 俺の体を隠蔽しようにも光線を乱射されたらお陀仏だろう。


 考えろ。

 思考加速フル稼働。


 針死弾に隠蔽魔法プラス、魔力の漏れを消す事。

 これは出来る。

 だが、相手の秘孔を突くまでに光線で攻撃を受けるだろう。


 光線を無効化するには、何か遮る物を空気中にばら撒けば良い。


点火イグニッション


 俺は長椅子に魔法で火を点けた。


「火事にしようと言うのだろうが、遅い。光線レイ


 俺の腹に穴が開いた。

 火が燃え移るまで待ってはくれないか。


 俺はBランクポーションを呷った。

 Cランクでは腹に開いた穴は塞がらないだろうな。

 あと二発食らったら、どうにもならない。

 椅子よ早く燃えろ。


 駄目だ間に合いそうにない。

 考えろ。

 何かあるだろ。

 あるはずだ。


 とりあえず時間稼ぎだ。

 石化の呪物を使う。

 光線が石化した体を削る。

 駄目だ。

 致命傷には程遠いが、削られまくると命が危ない。

 考えろ。

 考えるんだ。


 幻影を見せる。

 駄目だ一瞬で破られる未来しかない。

 針死弾で相打ち狙いをしてみるか。

 駄目だ。

 確実に勝てないと。


 俺の命だけではない、アイナとモーラの命も掛かっている。

 仕方ない、ぼやぼやしていると光線が飛んで来る。

 竜化はあるが、どうだろう。

 竜化では動けるがポーションは飲めない。

 発音できないので魔法も使えない。

 俺の強みを消しては駄目だ。


 だいぶ体が削られた。

 もう持たない。


 石化を解除して、針死弾を撃つ。

 針死弾と俺を結ぶ角度で光線を撃たれた。

 腹の穴をBランクポーションを飲んで塞ぐ。

 相打ち狙いも駄目か。


 考えろ、考えるんだ。

 早く。

 早く。


 光が走って俺の胸に穴が開いた。

 くそう、息が出来ない。

 慌ててAランクポーションを飲む。

 長椅子を盾にして火が燃え移るまでの時間を稼ごうか。


 それしかないか。

 俺は長椅子に身を隠そうと飛び退いた。

 光が走り俺は長椅子ごと光線に貫かれた。


 腹の辺りがぐっしょり濡れている。

 被弾したか。

 見るとポーションの入ったポーチに穴が開いていた。


 慌てて確認してみると、Cランクポーションが一本駄目になってた。


 くそう、もう終わりか。

 光が走る。

 俺は光線に貫かれた。


 C級ポーションをとにかく飲むんだ。

 段々と力が抜けていく。

 眠ったら駄目だ。

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