第44話 草とエッチ

「師匠、ランクカムを100個発注します」


 授業が終わり、トニアに話し掛けられ、頼まれた。


「そんなにか」

「あれは良い物です。瞑想と循環をしなくても、普通に使えます」

「まあバイブだしな」


「聞きましたか。行方不明の生徒が戻ってきたって」

「知ってるけど、一応教えて」


「なんでも工場で強制労働させられてたとか。内容に関しては誰も口にしないようです」


 強制労働というより嬌声労働だったからな。


「何か目新しい話はないか」

「実はランクカム。リノアちゃんの伝手で学園外に売ってます」


 ああ、あの大商店の娘のリノアか。


「じゃあ、ランクエレクションも捌いてもらうか」

「ええ、大丈夫だと思います」


「サンプルだ。渡しておく」


 鞄からランクエレクションを取り出した。


「これって等身大のを作ったら流行りませんか」

「一部の人には受けるだろうな」


「なら、モデルはアイナさんとモーラさんですね」

「却下だ、却下。二人は俺の物だ。譲れん」

「失礼しました。二人のファンクラブがあるから流行ると思って」


 俺はファンクラブのたまり場に行った。


「ゴキブリローパーが何の用だ」

「映像の記録を欲しくないか」

「ほしい」

「じゃ、魔道具を作るんだな」


 こいつらに魔道具を作らせよう。

 声は振動刃で再生できるから、記録の部分さえ作れば良い。

 映像の再生は幻影魔法でできるから、こちらも記録の部分だな。

 こいつらがどう課題をクリアするか見ものだ。


 一週間後、生産科から情報が入った。

 記録の問題はインテリジェンスウェポンの応用でクリアしちまいやがった。

 だが、一つ作るのに金貨100枚は掛かる。

 俺は余裕でだせるが、ファンクラブは三つも発注したらしい。

 この方法だと透視眼鏡魔法の映像は記録できないな。


 よく考えたら、俺って二人にエッチな事をする時に裸にしてない。

 記録する物を作っても被写体がエロくないとな。

 せめてスケスケの下着ぐらい着て欲しい。


「二人の裸を撮影させて欲しい」

「いやですわ。お断りです」

「記録が残るのは駄目よ」


「若いぴちぴちの姿を記録しておきたい。この考えがなぜ分からない」

「そんなの分かるかぁ」

「そうですわね」


「仕方ない貝殻ビキニでどうだ」

「ええ、それならよろしいですわ」

「そうね」


 数日後、撮影する為に着替えた二人は、30センチぐらいの貝殻を身に着けていた。


「なんじゃそりゃ」

「大王貝よ。これでも稚貝なのよ」


 くそう、でもこれも良いかもな。

 インパクトはある。

 見えそうで見えないエロさもある。


「はい、チーズ」


 カメラの魔道具に二人の映像が記録された。


「エッチなお願いを聞いてあげたんだから。私達の頼みも聞いてくれるわよね」

「そうですわね。それが対等というものですわ」


「えー」

氷の槌アイスハンマー

「カメラを狙うな。高いんだぞこれ。降参だ。何でも言えよ」


「ではミレニアムフラワーを採ってきて下さいませ」

「そうね。私にもね」


「あれは上級ポーションの材料で滅多に見つからないんだぞ」

「ええ、分かっております。特殊な加工をすると宝石のようになるのですわ」

「出来るでしょ」


 いや、時間さえあれば出来るけどもさ。

 空気嫁と戯れていたいが、頼みは断れない。


 俺は辺境に飛び、猟犬を借りた。

 猟犬にミレニアムフラワーを乾燥させた物を嗅がせる。


 犬は走り出し、ある草の前で止まった。

 簡単に見つかるんだな。

 でも肝心の花はどこだ。

 花が咲き難いのか。

 花が咲く要因はなんだ。

 土壌か、雨量か、日照時間か、魔力か。

 俺が都合できるのは魔力だけだ。


 分かったよ、やれば良いんだろ。

 パオーンを出して、幻影魔法で百合映像を出す。

 元気になったパオーンを草に押し付ける。

 そして魔力の循環を始めた。

 人間の花となら良かったんだが。

 なんで草とエッチしなきゃいけない。

 これで駄目だったら黒歴史決定だな。


 循環していると草から蕾が生えて大輪の花を咲かせた。

 何となく感覚だけど、100年分ぐらいの魔力を使った気がする。

 花が咲かない訳だ。

 100年分の魔力ではな。


 無事、ミレニアムフラワー2輪をゲットした。

 俺は意気揚々と学園に戻ってきた。


「採ってきたぞ」

「早いですわね」

「何かコツがあるの」


「草花とエッチした」

「冗談ですわよね」

「まさかぁ。助平でもそこまではしないでしょ」


「比喩表現に決まっているだろ」

「そうですわね」

「本当だったら、付き合いを考えるところだったわ」


 本当だけどな。

 これが言わぬが花だな。

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