第15話 変態野郎は爆ぜろ④(シーラ&レイネ)

※14話一部修正しました。


「どわぁぁぁぁぁー!?!?」


 真っ暗闇に落ちるユベル。

 何かに触れようとするも、掴むのは空気だけ。


「とりあえず下に落ちてるから足に神護を……」


 誰もいないから神護の使用はバレないよな、と神護を発動。


 そして、一番下まで落ちたのか、足に地がつき。


 ドカァァーン!!


 神護の効果で、勢いよく土壁を破った。


「あっ」

 

 勢い止まらず、誰かの顔面に衝突。

 ユベルの勢いは止まったが、逆にカルトが吹っ飛んだ。


「はっ! 死ぬかと思った!」

 

「ユ、ユーくん!?」


「ワンコ先輩!?」


「ん? おお、シーラとレイネ……って、あっ、これはだなっ」


 休暇中なのに、無断でアジトに侵入していたことを誤魔化そうと慌てるユベル。


 誰もそんな事は気にしておらず、突然現れたユベルと吹っ飛んだカルトで頭の中がいっぱいだ。


「ユベルアスカルトぉぉッ!!」


 無事だったカルトは、カカカと高速で歯軋りし、鬼の形相でユベルを睨む。


「え、なに? めっちゃ怖い」


 何故、自分に怒っているかも分からないし、聖騎士同士で争っている現状況にも混乱中であるユベル。


 ふと、シーラとレイネに視線を向けた。


「つかお前ら、なんでそんなボロボロなの?」


「「……」」


 シーラとレイネは顔を合わせて黙る。


「まぁカルト団長なら俺たちと大差ない実力だとしても、他の団員は楽勝だろ? まさか……余裕ぶっこいてのか?」


「はい? 負けてませんけどーっ! ちょっと休憩してたんですーっ!」


 ぷんぷん、と怒るレイネ。

 背中から血を流しているにも関わらずピンピンしている。


「シーラ、お前もだぞ? いくら相性が悪い雷でも発想によっては余裕で倒せるだろ」


「……私、負けてないもん。これから反撃しようとしてもん」


 2人して『負ける』という言葉が嫌いらしい。


「死ねッ死ねッ死ねッ」


 話をしていると、起き上がったカルトが憤りを露にしながらユベルに剣を向けた。


 神護が発動し、雷撃がユベルを襲うはず……なのだが。


「な、何故……っ!?」


 シーラのように倒れると思いきや、ユベルは何事もなく立っていた。


「あー多分、俺の神護が触れたら吹っ飛ぶだから」


「は?」


「攻撃が吹っ飛んで俺には当たらないの」


 ユベルの神護のトリガーは念じること。

 「ぶっ飛べ」と念じていれば、攻撃を弾くこともできるのだ。


「俺たち相性いいな」


「チッ」


 カルトは察する。

 ユベルの前では自慢の神護は無意味。

 なら、自分に有利なシーラを先に倒した方がいいと。


「さてシーラ、続きを始めようじゃないか。部外者の君は邪魔しないでくれよ?」


「お、おう……」


 なんで聖騎士同士で争っているのかということを聞きそびれ、シーラから離れる。


「見ててね、ユーくん。ちゃんと勝つから」


「今更余裕ぶっても意味がないよ、シーラ・オルフェル」


 実力は互角……いや、自分の方が上。

 カルトはそれが頭に入っており、余裕の笑みを浮かべていた。


「これで負けたらお約束通り、ヤらせてあげますよ」


 そう言ってお互い剣を構える。


 先に仕掛けたのはまたもやシーラ。


 パチンと指を鳴らす。

 水の玉が出てくると思ったが、今回は何も起こらなかった。


「ハハッ、不発か。なら、もう決めさせてもらう」


 剣を向けるカルト。

 周囲の騎士たちも勝利を確信していた。


 またもや絶対絶命の中、シーラはクスッとほくそ笑み、口を開いた。


「5%で頭痛、熱。8~10%で身体動揺、けいれん。20%以上で——死亡。さて、今の状態はどれだろう」


 何を言ってるだ、と思った矢先。


 カランッ

 カルトが神護の発動に必要な剣を落とした。


「カァ、アッ、カァッ」


 喉を押さえ、地面に座り込む。

 喉の渇きが異常。

 徐々に視界がぼんやりし始め、身体が痺れてきた。


 シーラの神護の効果で体内の水が一気に無くなったのだ。


「貴方が余裕ぶっているおかげで助かりました。私の神護は水を操る。何もないところに水を出現することもできれば——無くすこともできる。最初から私が勝つことなんてあからさま。カルト団長、貴方は私……私たちに遊ばれたんですよ」


 苦しむカルトにその言葉は聞こえているのやら。


「強い者の前では警戒心を持ってしまう。けれど弱い者の前では誰もが警戒心をなくし、ありのままの全てをさらけ出す。——化けの皮が見れて良かった」


 スッとポケットから何かを出したシーラ。

 それを見て、過呼吸状態のカルトがさらに青ざめた。


「女騎士を舐めないでくださいね」


 シーラが持っているのは、事情聴取などに使うボイスレコーダー。

 騎士であれば誰もが知っている。


『手から脳を操作する微電流を相手に流すこともできる』

『第3騎士団の性欲処理』

『虐めるのが大好きなんだよぉ』


 自分が発言したことが、あのボイスレコーダーに入っている。

 今までは実力と外面でどうにか丸め込んできたが……。


 カルトはようやく気づく。

 ——騙されたのだと。


「おい、俺たちもやばくねぇ……?」

「あ、ああ」

「俺は発言してないから、大丈夫大丈夫」


 騎士の中には嘘を発見する神護を持つ者もいるので、言い逃れは無用。


 カルトの敗北……いや、圧倒的に不利な状況に他の騎士も青ざめ、襲うことをやめた。


 シーラとレイネの目的は最初からこれ。

 騎士の大半は男。

 女騎士の中には不遇な扱いを受ける者もいる。


 だからこうやってボロを吐かせ、女騎士を舐めるなと他の騎士にも忠告する事で騎士団の男女平等が保たれる。


 最強の呼ばれる第0騎士団が進んで潰す事で、男騎士たちも改心するだろう。


 剣をしまったシーラはユベルのところへ向かう。


「最初からやれよ」


「だって瞬殺だと面白くないじゃん」


「俺たち一応、聖騎士団最強なんだぞ。隙を見せたら舐められるだろ」


「ワンコ先輩は甘いですよぉ。最強の形はそれぞれ。『ワンチャン倒せるかも』って思わせてから、圧倒的な力でねじ伏せた方が絶望感がありますよ〜」


「あー確かに」


「そうそう。負けなければ最強なの」


「でもお前ら負け——」


「「負けてない!!」


「それに、私たちがわざと五分五分の戦いをしていたお陰で、が省けましたぁ」


 カルト以外の騎士など、一瞬で片付けることができるレイネがわざわざ渋っていた理由。


「……っ。まさか最初からそのつもりで」


「あれれー、ワンコ先輩の方が衰えてるんじゃないですかぁ。私たちはあくまでも任務優先♪ ——が来ますよ」





次回 ルディー&ティアナside


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