第14話 変態野郎は爆ぜろ③ (シーラ&レイネ)

 高速で剣がぶつかり合う音が洞窟に響く。


 カルトとシーラの一進一退の攻防。

 団長クラスになると、0団と実力はほぼ互角と言われている。


「……団長の名は伊達じゃないようですね」


「シーラこそ、噂より遥かに強いよ」


 名前を呼ばれることにイラッとしたシーラだったが、浅く息を吸い、止める。


 すると、背後に無数の水の玉が出現。

 カルトに向かって放つ。


「ほう、これがシーラの神護かぁ。だけど僕には効かないよ」


 ほくそ笑むカルトは刃をシーラの方に向けた。

 雷撃が水の玉とぶつかり、蒸発。

 跡形もなく消えた。

 

「僕たち相性がいいみたいだね」


「私はそうは思いません。貴方のこと、好きじゃないので」


「酷いなぁ」


 ヘラヘラとしたカルトの態度にイライラが増す。


 それだけではなかった。


 カルトは良い噂を聞かない。

 恐喝、暴力、女性関係でよくトラブルを起こしてきた。が、戦力は折り紙付きなので誰も彼を制御できない。

 しかも外面だけは好印象なのだ。


「っ、……渋っていても仕方ない。一気に片付けます」


 シーラの神護は【溺水暴走アクア・ベルゼイク


 水を操ることができる。

 稀に時を止めることも可能。


「へぇ、一気に……そりゃ大変だなぁ」


 困ったように頬を掻くカルトだが、その表情にはまだまだ余裕が感じられる。


 神護が発動するにはなんらかのトリガーが必要。


 カルトであれば、剣を握っている。

 シーラであれば、息を止めている間。


 お互いに神護のトリガーを見破っている。

 あとは、相手の弱点トリガーを一瞬の隙で仕留めるだけ。


 先に仕掛けたのはシーラ。

 息を止め、パチンと指を鳴らすとカルトの頭上から滝のような勢いで水が降る。

 カルトの時間だけが止まり、彼は避けることができず、大量の水を全身に浴びた。


「プハッ!?」


 時間の停止が解除された頃には、カルトは全身ビショビショ。


 そしてシーラはカルトの間合いに入って——


「ガフッ!?」


 溝打ちをかました。

 拳は手首まで腹にめり込んでいる。


 カルトはよろめき、そのまま地面に膝をついた。


「終わりですね」

 

 剣を鞘にしまい、悶絶するカルトの剣を足で弾く。


 これで神護は発動しない。

 そう安心し切っていた時だった。


「がぅ゛!?」


「シーラ先輩ッ!?」


 シーラは突然、身体を硬直させたと思えば、スローモーションで倒れた。


 逆に、先ほどまで戦意喪失状態だったカルトが起き上がる。


 手にはショートソル。

 隠し持っていたのだ。


(……やられたっ)


 電気で全身が麻痺する中、シーラは油断した自分に後悔する。


 カルトの神護は剣を握っていれば発動する。

 その剣にサイズの制限がないとすれば……。


 よく考えれば分かったことだった。


「ふふふ、ふふふ……」


 顔を手で覆い、随分と楽しそうに笑うカルト。


「シーラせんぱ——かはぁッ……」


 シーラに気を取られ、背後から刺されたレイネ。

 騎士の白銀の剣が血の紅に染まる。


「ケル……ちゃん……」


「ガルゥゥゥゥ!!」


 ケルベロスが刺した騎士と周りの騎士を薙ぎ払う。

 レイネの神護のトリガーは声を出す。

「ケルちゃん」と口に出さないと、ケルベロスが動かないのだ。


 傷口は深く背中からは出血が止まらない。


 地べたに這いつくばるシーラとレイネを嘲笑うカルトと騎士たち。


「勝負ありだね。僕らの勝ち。君たちは今から我が第3騎士団の性欲処理」


「……だ、誰がそんなのに……ッ」


「ふーん。体内に電気を流したのに、喋れるんだ。僕は手から脳を操作する微電流を相手に流すこともできるよ。クックック……」


 加減を間違えれば、簡単に人を死に至らしめる神護。

 そんな残虐な事には使わず、カルトはもっぱら女を調教するのに使っている。


 それが彼の性癖。


「僕はねぇ、虐めるのが大好きなんなよぉ」


 嬉しそうに首を傾げるカルトからは狂気が滲み出ている。


「……変態ッ」


「なんとでも言ってよ。この強気な態度がいつまで保つか……楽しみだなぁ」


 クスクスと笑う。

 それは不気味さを超え、恐怖以外の何者でもない。


 笑顔で一歩……また一歩とシーラに近づく。


「じゃあまずは……腕を一本無くそうか。そうすれば大人しくなるよね」


 カルトは薄気味悪い笑顔を保ちながら、次々と皮肉な提案する。


『朝昼晩毎日、性欲処理だけのための性騎士にしよう』

『胸を切ってもっと大きくしよう』

『いや、四肢は切り落とすか』


 頬はすっかり赤く染まり、自分のやりたい事を脳内で実行しているのか、興奮気味に吐息をふーっ、ふーっ、引っ切りなしに漏らしている。


「じゃあ……始めよっか」


 シーラの右手目掛けて剣が振り下ろされる。


 絶望的な状況。

 打開策はない——はず。


(……どうしようかな。いっそのこと——)


 シーラがそう考えている時だった。


 ドカァァーン!!


 石造でできた壁から何かが飛び出してきたと思えば、勢い止まらず——


「グハッ!!」


 カルトの顔面に衝突した瞬間、強い力に引っ張られたように彼が壁際に吹っ飛んだ。


「ゲホッ……ゲホゲホッ」


 もくもくと立ち上がる砂煙の中、落ちてきた人物が明らかになった。


「はっ! 死ぬかと思った!」

 

「ユ、ユーくん!?」


「ワンコ先輩!?」



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