第16話 オドオドガール≠男性恐怖症
一方のルディーとティアナは、ユベルの元カノであるマーシャ・クラリエに会いに街中に出ていた。
「そういえばティアナとこうやっているの、久々かも」
「最近は単独の方が多かったですからね」
「まさかユベル関連で2人で動くことになるとは……。ふふっ、そんなにティアナはユベルのことが好きなんだぁ」
「〜〜〜っ。す、好き……ですよ……っ」
「へぇ。あの恥ずかしがり屋のティアナがハッキリ言っちゃうんだぁ。理由とか聞いてもいい?」
「私がユベルさんを好きになった理由……」
—1年前—
入団試験を終えたティアナは、試験官役の騎士に「手伝って欲しいことがある」呼び止められ、部屋に来ていた。
「ありがとう。助かったよ」
作業は簡単なものでただの書類整理。
入団試験生に何故こんなことをさせたのか疑問に思ったが、帰れるのでいいだろう。
「では私は失礼します」
そう言って、ドアの方へ行こうとした時。
「まあ待ちなさい。もう少し話をしようじゃないか」
「いえ、この後予定があるので失礼します」
「お茶でも淹れてやろう」
「先程、頂いたのでもう結構です」
「人の好意を無下にするもんじゃない。ほら、早くこっちにきなさい」
「だからですね……」
「いいからこいっ!」
「きゃっ……!?」
なかなか言う通りにしないことに痺れを切らした試験官がティアナの腕を無理矢理引き寄せ、机に押し倒した。
「や、やめてくださいっ……」
「うるせぇんだよっ。俺が点数を下げられる立場だと分かってモノをいってるのか? クッヒッヒッ……」
薄汚い笑みを見せる試験官。
ティアナを最後まで残したのは、担当したグループの中で一番タイプだったから。
「大人しくしないと、君を不合格にしちゃうかも。そうなったら困るよね? ねぇ? 大丈夫さ、天井のシミを数えていればすぐに終わる」
と、ティアナの服のボタンを外し始めた。
抵抗したいティアナだったが、何故か身体が思うように動かない。
「なんで身体が動かなって顔してるね? さっき飲んだお茶の中に身体が麻痺する薬を仕込んどいたからだよ。もうちょっとすれば指さえ動かすこともできないから」
このままでは犯されると察したティアナは大声を上げた助けを呼ぶ。
「誰か助けて——むぐぐ!?」
「おっと、そうはさせないぜ」
口に布押し込ましまった。
これでは助けが呼べない。
「試験生はテストが終わって帰っているだろうし、他の試験官も片付けしてる頃だろう。つまり、この空間を邪魔できる者いない。そんじゃ頂きまーす!」
試験官がティアナのシャツをはだけさせ、次は下着に手をかけようとしていた時。
「失礼しまーす!」
ドーン!!
誰かが内側から鍵のかかったドアを蹴り破り、ズカズカと部屋に押し入った。
入ってきたのは男性。
入団試験生のバッチを付けている。
これがユベルとティアナの出会い。
「なっ!? 貴様ッ! ドアを蹴破るとは何事だ!」
「何事と言うお前こそ何事だ。えーあー、これはこれは。入団試験生を押し倒して、服を剥がして……どうするつもりだったんです?」
「チッ! お前さえ黙らせれば後はどうとでもなる!」
剣を構えてユベルに突進する試験官。
ユベルはそれをアッサリ交わし、溝内。
「ゲホッ……ゲホッゲホッ!」
「えー、弱っ……。——すぅ……オラッ!!」
「かぷらッ!?」
ユベルはトドメとばかりに胸ぐらを掴み、身を任せ頭突きを喰らわせる。
数歩よろめいた試験官は脳震盪を起こして床にぶっ倒れた。
「え、あの……」
「大丈夫だった……って、大丈夫じゃないよな。あー……ちゃんと服を着てもらえると助かる」
「……! は、はい!」
ティアナは服を整えて改めてユベルの方を見る。
「あの、助けていただいてありがとうございました……っ!」
「なんのなんの。たまたま声が聞こえたからさ。つか、この人どうする?」
「どうするとは……?」
「アンタに強姦まがいの事したんだし、他の騎士に訴えれば罪に問われるだろ」
床でピクピクとのびている試験官を尻目に、ティアナは口を開く。
「い、いえ……そこまでしなくても……」
「まじか。アンタお人好しだな。俺だったら訴えてるよ。それか今ここでボコボコに殴るか」
「あはは……まぁこう言う悪い人はいずれ痛い目を見ますよ」
「だな。アンタアンタって言って悪いな。俺はユベル・アスカルト」
「私はティアナ・シフォルドです」
「ティアナだな。お互い騎士を目指す同士、頑張ろうな」
「は、はいユベルさん!」
自分の名前を言い合い、お互いに握手を交わした。
それから第0騎士団の内定をもらい、2人はまた再会することになる。
1年前のことを思い出し、ふぅと一息するティアナ。
「……一目惚れに近いかもしれませんね」
「ふーん」
「そういうルディーさんはどうなんですか?」
「アタシ? アタシは……まぁ同じ理由かも」
「……そうですか。みんな、ユベルさんの人柄に好かれたかもしれませんね」
「ええ」
ルディーとティアナ、2人して前を見る。
視線の先には元カノがよく通っているらしい宝石店があった。
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