第7話 お前の自業自得じゃん

 とある貴族の会議に出席するため、俺たちに行き帰りの護衛を依頼したとか。


 今は街に出て、レイネと俺で挟むように護衛していた。


「この頃、狙われやすくなってなぁ」


「……」


「……」


「そんな冷たい目でワシを見るなっ」


 自業自得だろ、と2人して顔に出ていたようだ。


 あと、扱いが雑になったのは当然だと思ってくれ。


「まぁ、相当恨みを買ってるようですね。ね、ワンコ先輩?」


「そうだな。——さっきから誰かが後をつけてるし」


「はい!?」

 

 50メートル後ろに全身をすっぽりと包むローブを羽織っていていかにも怪しげな男が3人ってところだ。


 中々気配を消すが上手いことから、慣れているのだろう。殺し屋らへんか?


「じゃ、じゃあ早く始末してくれよ!」


「アンタアホか。今始末しても、根源を潰さないとまた狙われるだろ」


「そうですよー。もういっそのこと牢屋に入れた方が早いと思います〜」


 レイネの言う通りだ。

 牢屋は安全は保証されるし、いっその事、今捕まえて——


「——先輩きました」


「了解」


 レイネの言葉と同時に鞘から素早く剣を抜く。


 カキーン


 剣と剣がぶつかり合う鈍い音。


「チッ」


 あっさり攻撃を塞がれたフードの男は、舌打ちをしながら距離を取った。


「残念だったな。バレバレだったぞ」


「げっ、よりにもよってゼロ団の方かよ……」


 俺の剣を見ながら別の男が呟く。

 

 騎士の剣というのは通常は銀色。

 しかし、ゼロ団だけは黒色仕様。

 

 裏社会の方でもゼロ団はかなり有名らしく、警戒されているらしい。


「きゃーーっ!」


 甲高い女性の悲鳴が、近くで聞こえた。


 声の方を見ると、ナイフの刃を女性の首元に当てるフードの男の姿が。


「この女を殺して欲しくなかったら、そのクズ領主を寄越せッ」


「……」


「……」


「だからそんな目をするな! ワシをちゃんと護れッ!」

 

 どうぞどうぞーという目がバレていたか。


「残念だが、こっちも任務だから渡すわけにはいかない。だが、コイツはどっちにしろ牢屋にぶち込まれる運命だ。わざわざ殺さなくてもいいだろ」


「なっ!? ワシが牢屋行きだと! 貴様説明しろッ!」


 何やら隣がうるさいが無視しておく。


「俺たちはソイツを殺さないと気が済まないんだよッ!」

「このクソ領主には騙されて無一文にされた過去がある」

「俺の娘なんてソイツに散々遊ばれたあげく、廃人化して帰ってきたんだぞッ」


 ……マジでコイツ最低だな、これじゃどっちが悪役が分からない。


「……」


「……」


「だからそんな目をするなと言っている! 早くソイツらを始末しろッ!」


 ……よしっ、コイツはあとから殴ろう!


「殺すのはダメだが、グーパンチは許す! だから武器を下ろせ」


「ダメだ! 殺すんだよッ!」


 うむ、これ以上言っても聞く耳を持たないな。

 殺すことしか頭に入っていないようだ。


「俺はアンタたちを人殺しにしたくないから——止めるぞ」


 俺は隠し持っていた強力な睡眠薬が入った注射針を人質を取っている男に投げつける。


「痛ッ。なんだこれ……——すぅ」


 腕に刺さった注射針を抜いた男は、すぐにバタリと倒れた。

 

 相変わらず凄い効き目だ。

 騎士団の中にはこういった薬を作るの神護を持っている者もいる。


「テメッ、なにしたぁぁぁぁ!」


 奇声をあげて飛びかかってくる男の腹に蹴りをお見舞いする。

 男は痛みに悶絶し、地面に倒れたまま起き上がらない。

 

 思ったよりも弱い。

 この程度の相手であれば、神護を使うまでもないな。


「くっそぉぉぉぉぉーーっ!」


 最後の1人は狙いやすいと思ったのか、レイネの方にいった。

  

 あー可哀想……。


「ケルちゃん、ご飯の時間だよ」


 現れたケルベロスによって頭からパクッと喰われた。

 身体だけがぷらーんと出ていて絵面がえぐい。


 マミったという言葉がふと思いついたのは何故だ。


「す、すげー! あれが噂のゼロ団か」

「ほぼ瞬殺じゃねーかよ!」


 一連の光景を見ていた周りの人から拍手と興奮気味の声が上がる。


 ふと、隣が静かになったと思い、視線を向けると。


「あ、あぁぁぁ」


 ケテルテ領主は地面にへたり込み、大きなシミを作っていた。

 おもらしである。

 

 なんでアンタがビックリしてるんだよ……。

 レイネのケルベロスがよほどトラウマのようだ。


 周囲は安心モードだが——まだ気は抜けない。

 何故なら、襲ってきた男たちが俺たちが最初、察知した人物と違っていたから。


「レイネ分かっているな」


「もちろんですよ〜。これはちょっと厄介な戦いになりそうですねぇ」

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