第9話 強酒の姉さん≠頼れる

 その後は何もなかったが、ケテルテ領主の悪事はあまりに酷いので、任務が終わった瞬間、牢屋にぶち込むことにした。


 拘束すると、何やら唾を飛ばしながら文句を言われたが、綺麗な聖騎士の姉さんたちに受け渡すと、だらしない笑みを浮かべながら大人しくなった。


 全く……相変わらず女には目がないんだな。

 だが、その姉さんたちは厳しいことで有名なので、ドMに目覚めないことを祈る。


 宿舎に戻ると、お話がありますとレイネに追いかけ回され、神護を使って逃げていた時、丁度、任務から帰っていたルディーに見つかり……



「かんぱーい!」


 俺は今、酒場に連れられていた。


 お酒は15歳からなので、俺とルディーは普通に飲めるが、お酒に弱い俺はアルコール度数が低いジュースみたいなのを頼んだ。

 

「いやー、こうやってユベルと飲むのも久々ねぇ〜」


「ルディーはいつもミューラ団長と飲んでるからな」


 何故かというと、 ルディーは強酒だから。

 ミューラ団長とルディーは聖騎士団の中でも1、2を争うお酒好き。

 2人に朝まで付き合える人はいないと言われている程だ。


 そしてルディーは既に2杯目に突入している。


「で、何があったのー?」


「何がとは?」


「誤魔化すつもり? なんで聖騎士団を辞めるなんて言ったのよ」


 またもやこの話題。

 シーラやレイネには言ったし、ルディーにもとなると、そろそろ0団以外にもバレそうなんだが……。


 よし、ここは上手く誤魔化して乗り切るぞ……。


 …………

 …………………

 …………………………………

 

「俺なりに大切にしてたんだよぉ〜。なのに、なのに……」


「まぁまぁ。ほらほら、お酒を飲んで忘れなさ〜い」


「んぐんぐんぐ……ぷはぁ!」


 アルコールで身体が心地よく弛んでいます。


 お察しの通り、彼女と別れたことを話しました。


 この時の俺はめちゃくちゃ酔っていたのだろう。いつの間にか、アルコール度数が高いものを頼んでいた。


「うぅ……ある日急に冷たくなって、そこからなんとなく予感はしていたが……現実になると、やっぱ悲しいよぉ〜」


「うんうん。そりゃあ災難だったねぇ。その女はいい男を見つけたらコロッと変わっちゃう属性だったのよ。……でも良かった」


「んー、何が?」


「0団のみんなが嫌いになったんじゃなくて」


 その言葉でハッとする。


 団員が辞めると言った時、真っ先に自分に非があったのではないかと考えてしまう。


 俺は、自分のことばかり優先させて発言したことに改めて後悔した。

 

「……俺が0団のみんなを嫌いなわけないだろ」


「知ってる。アタシもユベルも他の3人も、みんな0団のことが好きだもんね」


「ああ。しかし俺、そんなに魅力なかったのかな……うぅ……」


「ユベルは自分の事を下に見過ぎ。優良物件だと思うよ」


「そうか? でもお世辞だろ?」


「そこまでいうなら――試してみる?」


「試す?」


「ええ。ユベル、アタシと付き合わない?」


「えっ……」


 酔いが一気に冷めた。


 唖然とする俺に、ルディーはお酒を含み、言葉を続ける。

 

「アタシと付き合えばユベルがどれだけ価値のある人間なのか……よーく分かるはず」


「えーと……」


「ふふっ、アタシこれでも結構可愛くていい女だと思うなぁ〜。まぁ胸のデカさじゃ0団の中で最弱だけど」


「……」


 なんて返せばいいんだろ……。

 胸のことにツッコんだら怒られるのは間違い。


 ここで付き合ったら、お情けをもらったみたいで男としてどうかと思う。


「やっぱり巨乳が好き?」


 そっちから胸の話を振ってきたか。


「いや、胸の大きさとかは関係ない。問題は内面と相性だろ。……今回のでよく学んだし」


 顔で好きになったからなぁ。

 内面を探れなかった自分も悪い。


「ふーん。じゃあアタシはアリの方?」


「アリというか…… ルディーなら他の男からモテモテだろ」


「まぁね。よく告白されたりはするけど、断ってる。0団って一番モテモテの団らしいよ〜」


「へぇ、そうなのかぁ」


 確かに、よく誰か呼び出されているよな。

 レオンさんもモテモテだったし……。

 あれ? 俺、告白とかされたことないぞ。やっぱり俺はモテないのか?


 あとレオンさんで何か忘れていたような…… ――あっ。


「俺、レオンさんに呼ばれてたんだった!」


「急に立ち上がったからびっくりしたっ。じゃあすぐに戻りなさい。今の話は適当に考えててくれればいいから。あと、ここはアタシが奢るわ」


「マジか! ありがとうなルディー!」


「アタシはもう少し飲んでいくから。いってらっしゃい〜」


 お酒を飲んで、話をしたら少しはスッキリして、帰りは気持ちが軽かった。




「ふーん、『別れた』ねぇ……」


 酒場で1人になったルディーは、お酒を飲みながらそう呟く。


「別れたじゃなくて、……こっちの方が正しいわねぇ」


 急に冷たくなった。

 他の男と浮気していた。


 ルディーはこれらの言葉が気になっていた。


 要するに態度が急変。

 一見すると、ユベルより散財してくれる男を選んだと思うが……。


「これは帰ったら話を聞かせてもらわないと…… ―――ね、


 


次回 『騙されているのは誰か?』

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