第60話 捜索

「全員準備はできたかー? これより出発するー!」

 ベースキャンプで一晩過ごし、守備兵団は早朝、出発した。

 相変わらず、綺麗な隊列で進むガモリの集団。

 隊列の数は昨日よりも増えていた。

 どうやら、このベースキャンプで別部隊が合流したのであろう。

 集団の中央には昨日までは見られなかった荷台を引っ張るガモリの姿もあった。


「ねぇ? あの荷台には何が乗っているの?」

「あれは、全部、爆薬だよ!」

「爆薬⁉」

「でも、すごい量を集めたものだね! あれだけ沢山あれば白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスもきっと一発だよ!」

「一発、それはすごい‼」

「これで、もし白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスと遭遇しても、大丈夫だよ!」

 とは言いつつも――。

 できれば白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスとは遭遇したくないな……。



 ベースキャンプを出発して、半日ほど経ち、隊列は見渡しがいい高原に到着した。


「よっしー、止まれー!」

 アーリカの合図で、隊列は止まった。

「あの辺りだな……」

 見上げると高い崖。

 高原の先には大きな木々に囲まれた森林。

「私たち、あんな高い所から降りてきたんだね……」

「そうだよ! で、二人は恐らくこの森の中にいるはず!」

「この森に……?」

 でも、探すにもしても少し広すぎる。


「よっしー、ここに荷台から爆薬を下ろせ!」

「イエッサー!」

「他は複数に分かれて、森の中を捜索するぞ!」

「ここからは別々で捜索するのね」

「そっちの方が効率がいいからね」

「ジュエル殿、レイナ殿、お供いたします」

 別のガモリに乗る騎士二名が近づいてきた。

 どうやらこの人たちと二体一組になって捜索するみたいだ。

「いいか、森の中でもし白銀鱗の大蛇竜ハクジュオスと遭遇したら戦わず、ここまでおびき寄せるんだ! 奴はこの大量の爆薬でぶっ飛ばす!」

「イエッサー!」

「では、捜索開始!」

 各々は分散し深い森の中へ入っていた。

 


「エン~?、アヤメ~? どこかにいる~?」

 森の中で早速、レイナは大声で名前を呼ぶ。

 しかし、ここは広い森の中。

 そう簡単には二人は見つかなさそうだ。

「捜索って言ってもこんな広い森の中じゃ、なかなか見つけるのは難しいわ!」

「確かにそうね……。ただ森の中を駆け回っても見つかりそうにないし……」

「レイナ、もし私たちが遭難したらさ……まずはどうするかな?」

「そうね……食料を……いや、飲み水を探すわ!」

「飲み水……そうだよ⁉ もしかすると、二人は川や湖の周りにいるかも!」

「そうかもね⁉ じゃあ、川を探しましょ!」

「と言っても、レイナ様、こんな木々が生い茂る中では、川を見つけるのもなかなか困難であります!」

 騎士の一人がそう言う。

「ちょっと、待ってて!」

 レイナはガモリの上に立つ。

「ちょっと……レイナ⁉」

「ハッ!」

 レイナは風を起こすと、高く舞い上がった。

「お、おっー⁉」

 全員、驚き、レイナを見上げた。

 

「ダメだ……」

 高く舞い上がったものの、高く生い茂る木々の上を越さないことには、何も見渡せない。

「よいっしょ……!」

 レイナは近くの枝へと飛び乗った。

「うわー、すごい高い……」

 下を見下ろしただけでも怖くなるほどの高さだ。

「よっし、もう一回!」

 決心し、再び高く舞い上がる。

 ようやく木の高さを超えると、辺りをぐるっと一周見渡した。


 どこを見ても木ばっかり……。

 どこまでも森が続いているわね……。

 ……ん、あれは⁉


「戻ってきた!」

 レイナは徐々に高度を落としながら、ガモリの上に降り立った。

「レイナ、飛べたんだ⁉」

「飛ぶというよりかは、宙に舞い上がることができるだけだよ! 少しの間だけど……」

「それでも、凄いよ!」

「で、レイナ殿、何か見えましたでしょうか?」

「そうだ! あっちの方向に、高い滝が見えたの!」

「滝でしょうか⁉」

「で、あればその下には……」

「下には……川……?」

「川がございますなら、行方不明のお二人は飲水を確保するために付近にいらっしゃる可能性が高いでございますね」

「でかしたよ、レイナ‼ よし、滝の方へ向かおう!」

 ジュエルはガモリを走らせた。

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