第42話 亜麻色の髪の少女
「あの、助けてくれてありがとうございます!」
「いいの! いいの! それより、あなた、このガモリにすっかり気に入られているみたいだね!」
――フン
ガモリはレイナの方を向き、鼻息を立てる。
「ひぇっー!」
「そんなに怯えなくても、ガモリは噛みついたりしないよ。ほらほら、いい子だね~!」
そう言いながら、女の子はガモリの頭を撫でる。
爬虫類の気持ちなんか全く分からないけど……。
嬉しそうな表情をしている様にも見える。
「私、アヤメ!」
「俺は、エン!」
「レイナです!」
「エン、レイナね! よろしく! そこで寝ている猫ちゃんはあなたたちの?」
「そいつは、ニャーって言うんだ!」
「にゃぁ――!」
「愛くるしい寝顔だね! ニャーちゃんよろしく!」
「アヤメはガモリの扱いは慣れているんだね!」
「いや、私も今日初めてガモリに乗ったよ!」
「うっそー、じゃあ、なんでそんなに上手に乗れるの?」
「小さい頃からいろんな生き物に乗ってきたから、生き物の扱いには慣れているんだけかな?」
「それでも、初めてであんなに乗りこなしてて凄いよ! エンに比べて……」
レイナは俺の顔を見た。
「いやいや、結構、難しいからな……。コイツに乗るのは!」
「エンが乗っているのも見ていたよ! けど、あれはね……」
俺がガモリに宙吊りになる姿を思い出したのか笑い出すアヤメ。
「あ、ごめん、ごめん! で、二人はこのガモリを買おうとしてたの?」
「そうなんだけど……。俺たちには乗りこなせそうにはないな……」
「ここでガモリを買うってことは、やっぱり
「そうだよ!」
「なら、ちょうどいいかも!」
「何が?」
「二人にちょっと相談があるんだけど……」
「……相談?」
「私も
「……うん」
「それで、お願いなんだけど……エンたちがガモリを買ってくれたら、私が
「なるほど、それは俺たちにもいい話だけど、レイナ、どうする……?」
「……ガモリは嫌だけど……アヤメがちゃんと言うことを聞かせてくれるなら……いいかも……って……」
「やったー! ガモリの扱いは私に任せて!」
「ありがとう、助かるぜ!」
「これで
「じゃあ、交渉成立ということで、二人ともよろしくね!」
「よろしく、アヤメ!」
俺たちはアヤメと握手を交わした。
「そうとなったらすぐにでも出発したんだけど、二人とも、ガモリの他に準備は終わった?」
「……準備?」
「食料はもちろん、あと、そうね……薬や寒暖差も激しいからローブとかも必要かな?」
「そんなに準備が必要なんて知らなかったわ!」
「いえいえ、これから一緒に木登りする仲間なんだから! 私もこれから買い揃えるところだし、じゃあ一緒にお店に行かない、案内するよ?」
「助かる! 頼むよ!」
「オーケー、任せて!」
* * *
その後、アヤメの案内で市場のお店を転々と周った。
これからはまでは長旅になる。
途中に街や村があるにしろ、数日分の保存食から野宿に備えての準備も必要だった。
何しろ、これから目指すのは海の上からでもはっきり分かるほど巨大な木の頂上。
アヤメの話によると、頂上付近では雪が積もるぐらいに寒いそうだ。
そんな準備も必要だと知らなかった俺たちにとって、アヤメとの出会いは感謝しかない。
アヤメが指示する通り、必要な物を買い揃えると、再びさっきのガモリ屋へ。
「お姉ちゃんたち、ありがとうね!」
俺たちはガモリを購入した。
アヤメはさっきのガモリが威勢がいいからと迷わず選んだのだが……。
レイナは相変わらずガモリからは距離を開けている……。
「よし、これで準備は完了だな!」
ガモリの背中には三人用のシートを設置し、荷物をしっかりと結び付けると――。
「じゃあ、乗る順番だけど、私が一番前ね! で、その後ろは……」
「私は一番後ろがいいです!」
真っ先に手を挙げ名乗り出たレイナ。
ガモリが嫌いだからってそこまで……。
「分かった。じゃあ、間にはエンが乗って!」
「はい」
「そうと決まったら、早速、出発するよ!」
「おう!」
「じゃあ、気を付けて行って来いよ!」
店主のおじさんに見送られながら、俺たち三人とニャーはガモリに乗っかった。
「ありがとうございます! 行ってきます!」
俺たちは手を振り返す。
「よし、じゃあ、進め!」
その合図にガモリが前へと進み出した。
「おおっ!」
「なに、この動き⁉」
爬虫類に乗るのは、乗馬とは全く違った感覚だった。
ヌルヌルと前に進む感覚。
この変な乗り心地に慣れるにはしばらくかかりそうだ。
港街リューコの街中をあっという間に抜けると、壮大な草原が広がった。
「よし、じゃあここから飛ばすわよ!」
「えっ⁉ わぁー‼」
草原に入るとガモリのスピードは格段に上げ、一気に駆け抜けた。
ガモリの力強い四本の足はとても速く、どんな道でも駆け抜けることが出来るのだ。
「すごい!」
「速い、速い!」
馬にも劣らないほどスピードを上げるガモリ。
何もない大草原を猛スピードで駆け抜けていく。
これから目指すは
かなり離れたこの草原からでも、高く聳え立っているのがはっきり見える。
さて、一体、どんな冒険が待ち望んでいるのだろうか。
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