第12話 火山
再び、俺とニャーは森の中を歩き続けていた。
「あれは……⁉」
行く先に何が見えた俺は走り出した。
「やったー! 森を抜けたぜ――――!」
「にゃぁ――‼」
思わず、ニャーとハイタッチ。
森を抜けた先には雄大な高原が広がる。
「凄い!」
緑豊かな丘をいくつも超えた先に薄っすらと聳え立つ火山。
「にゃぁ……」
「……そうだな。まだまだ遠いな……」
火山までの道のりはまだまだ続く。
「ぐぅ――――」
「にゃぁ……」
「そうだな、お腹減ったな……お昼にしようか!」
「にゃぁ―――‼」
出発前、お爺さんから旅中で食べろと食料を貰っていた。
この広大な景色を見ながら、ここでお昼にしようか。
辺り一面見渡す限り、草木しか無く、モンスターの姿はない。
ここなら安全に休めそうだ。
「さて、お昼は何だろうな」
お爺さんかた貰った食べ物を取り出す。
大きな葉っぱで何重も包まれた中にあったのはクッキーの様な焼き菓子。
「何か分からないけど……食べようか! いただきます!」
「にゃぁ―――!」
「美味しい!」
木の実だろうか、中にたくさん入っており、サクサクで甘くて美味しい。
「にゃぁ~~!」
ニャーも同じように一回り小さなクッキーを食べる。
にしても本当に猫みたいだ。
本物とは違うのは、二本足で立ち、器用に手が使える点。
クッキーも器用に手を使って食べている。
「にゃぁ~~‼」
出会ってからずっと気になっていたことだが、不思議なことに、ニャーの言いたいことはなんとなく理解できるのだ。
これも魔法の力だろうか……。
理解できないことばかりのこの世界だ。
今はそういうことにしておこう。
「そうだな、これ旨いな!」
「にゃぁぁ~~~‼」
「よし、食べ終わったし、そろそろ出発するぞ、ニャー!」
「にゃぁ〜〜〜!!」
その後も俺たちは歩き続けた。
緩やかな丘を越え。
流れる川を横切り。
広大な草原を往く。
何時間も何時間も果てしなく続く道を歩き続けた。
こんなに長い距離を歩き続けたのは人生初めてだ。
でも、体に全く疲れはなかった。
きっと、目にする景色全てが広大で、とても綺麗で新鮮で、俺の冒険心が燃え滾っていたのだろう。
目的地の火山を目指し、ひたすら歩き続けた。
「着いたー!」
「にゃぁー!」
朝から歩き続けてようやく目的地の火山の麓に辿り着いた。
しかし、周辺には家一軒見当たらない。
代わりに看板らしき物を見つけた。
「なになに、何って書いているんだ……?」
看板に書かれた文字をしばらく眺めるが……。
この世界の文字を読めることはなかった。
流石にそんな都合よく行くわけ無いか……。
他の異世界転生物ではよく初期設定で備わっているスキルだが……。
文字が読めなくても、おそらく、いやはっきりと、看板の矢印は山の上を指していた。
どうやら爺さんの知り合いの家はこの山の上にあるのだろう……。
「仕方ない、登るか!」
「にゃー!」
登山口から続くゆるやかな坂道を進んでいった。
「くっそ、坂道が辛い……」
朝からずっと歩き続けたせいだろうか、流石にこの坂道は足に来る。
しかし、俺は歩むのを止めない。
この剣を直すため、そして玲奈を探すため――必死に登っていった。
草木も何もなく、落ちるとただ危険な崖道が火山の周りをぐるっと何周も続く。
「すげー、綺麗だ!」
ある程度の高さまで登り詰めた所で、この島の、いやこの世界の壮大な景色が目の前に広がった。
さっきまで居た大森林、その先には広大な海。
そして、果てしないこの世界の空。
華麗な翼をした大きな鳥たちが飛び回る。
それに海には大きな生き物の姿が。
海面から跳ね上がり、大きく波しぶきを上げる。
「すごい、すごい! ここが魔法の世界!」
俺はしばらく山からの景色に見入っていると――。
「にゃぁー?」
「そうだな、急がないと……」
既に陽は沈み、眩しい夕日が俺たちを照らしていた。
頂上まではあと少し。
一歩一歩、しっかりと登っていく。
「はぁはぁ……あれは……?」
行く先に、小さな家が見えて来た。
「もしかして……着いた?」
俺は家に向かって駆け出した。
「ここだー!」
「にゃぁー‼」
「ようやく、着いたー‼」
目的地に辿り着いた喜びに、ニャーとハイタッチ。
少し休みたいところが、そうにもいかない。
肝心のこの剣を直せるというお爺さんの知り合いは一体どこに……?
俺は恐る恐る家の中へと入る。
「あの……? 誰かいますか?」
「お前か……?」
家の中から声が聞こえた。
「……あの? あなたがお爺さんの知り合いの?」
「そうじゃ、ワシが刀鍛冶のテツだ!」
中から現れたのはまたしてもお爺さんだった。
この島にはお爺さんしか住んでいないのか。
それにテツ……?
なんか、日本人みたいな名前だな。
「マツの野郎からお前がここに来るって言っていたからな!」
マツ……?
きっと、あの爺さんの名前だろう。
「お前の名は……?」
「エンです!」
「そうか、エン。話にあった、お前の剣をちょいと見せてみろ!」
「はい! これです!」
「ほう~ほう〜。また、懐かしい物を拾って来たもんだ!」
「この剣を知っているんですか⁉」
「知ってるも何も、この剣を打ったのはワシじゃ!」
「そうなんですか! じゃあ、この剣を直してくれま……」
「無理じゃ!」
「……え?」
何かの聞き間違いだろう。
念のため、もう一回聞いてみよう。
「あの、この剣は直せるんですよね……?」
「だから、それは無理じゃと言ってるだろが!」
「…………。え~~~~~~⁉」
ここまで来た苦労は一体……。
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