第182話 出発する二人と遊離する一人
フィルと一緒に玄関の外に出た。出た先から皿が落ちている。
「この先にいるということか?」
フィルが黄色い瞳で月夜を見上げる。
「そうかもしれない」月夜は頷いた。「しかし、その反対もありえる」
その反対もありえるというのは、皿が示す先に向かってもルゥラがいない可能性がある、ということだ。つまり、皿は囮で、それを単純に追うようなことをしてはいけないかもしれない。
「しかし、ほかにどんな可能性が考えられるんだ?」フィルが尋ねる。
「分からない」
「皿は、ルゥラが自分の意志で生み出したのではないかもしれない」
「ルンルンに憑依されている、ということ?」
月夜の問いにフィルは頷く。
「それなら、このまま皿を追い続けるべき」月夜は言った。
「どちらの可能性が高いと思う?」
「可能性は比較できるもの?」
「できるだろう」
「そうか」
「そんなことを話している場合か?」
「ううん」
「それは否定の合図か? それとも唸りか?」
「そんなことを話している場合?」
「いいや」
皿が示す先を追うことにした。自宅の敷地を出て、その正面を通る道路を右に進む。
皿は道路のすべてを覆っているわけではなく、道の中心に沿って続いていた。つまり、線が、引かれているのだ。ルンルンがルゥラに憑依していて、ルンルンがわざと行き先を示したのか、それとも、ルンルンはルゥラに憑依しておらず、無意識の内に生み出された皿が道路に零れ落ちただけなのか。あるいは、ルゥラが自らの意志で皿を道路に並べたのか……。
坂は坂道を避けて続いていた。より平坦な道の上に散乱している。
「ルンルンは、歩かなくても移動できるはず」歩きながら月夜は考えを述べた。
「そうだとしても、わざと行く先が示されているか、無意識の内に零れ落ちたかの、どちらかであることに変わりはないだろう」
「それはそう」
途中で皿を踏んでしまい、月夜は一歩退く。
「どこまで続いているんだろうな」フィルが呟いた。
月夜は足もとに向けていた視線を上げ、前方を見る。
春の適度に澄んだ空気が広がっていた。遠くの方まで見渡せる。右側に鎮座する山が、そうした環境を包囲しているように見える。
もう一度前を見る。
「ルゥラが呼んでいる気がする」
思いついたことを月夜はそのまま口にする。
「そんな気がするだけさ」フィルが応じた。
「そうだといいけど」
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