第124話 beautiful
「ルゥラはどこから来たの?」彼女の髪を櫛で梳かしながら、月夜は質問した。
「どこから? 私が前いた場所ってこと?」
「うん」
「うーん、どこだろう……。あんまり、そういうの覚えていないからなあ」ルゥラはきょろきょろとした目を月夜に向ける。「月夜はどこから来たの?」
「どこから?」月夜は尋ね返す。「私が前いた場所ってこと?」
「そうだよ」
問われて、分からない、と月夜は思った。そうだ……。自分はどこから来たのだろうか。なぜ、自分はここにいるのだろうか。そしてどこに行くのだろうか……。
「分からない」月夜はそう答えることしかできなかった。
「じゃあ、私と同じだね」ルゥラが応える。「仲間」
「皿はどうやって生み出すの?」月夜は違う質問をした。
「皿? ああ、あれはね、こう、頭の中に円い形を思い描いて……」そう言って、彼女は空中に人差し指で円を描く。「それで、目を瞑って、えいってやると、出てくるの」
「よく、分からない」
「うーん、じゃあ、月夜もやってみたら? できるかもしれないよ」
「どうして、皿をあんなに大量に生み出したの?」
「え? どうしてって……。だから、月夜にご飯を食べてほしかったから」
「ご飯を食べるだけなら、あんなに沢山は必要ない。沢山生み出したのは、どうして?」
「その方が、インパクトがあるかな、と思ったから?」
「どうして、疑問形?」
「自分でも、分からないから?」
ルゥラの髪を弄るのが一通り終わって、月夜はドライヤーと櫛を片づけた。彼女自身は髪を乾かしたり梳かしたりすることがあまりないので、使わない。
「皿って、好きなんだ」ちょこんとソファに座った格好で、ルゥラが呟いた。彼女は今は月夜の服を着ている。当然背丈が合わないから、裾と袖を何重にも捲ってあった。「なんだか、円くて、白くて、素敵」
「円くて、白いと、素敵なの?」月夜はルゥラの隣に腰を下ろす。
「うん、そうだよ。とっても綺麗。色の中では、白が一番綺麗だし、形の中では、円が一番綺麗。だから、綺麗と綺麗が合わさって、とっても綺麗」
言葉としては「純白」というものがあるし、表現としては「丸く収まる」というものがあるから、ルゥラが言っていることは分からなくはない。けれど、月夜がそれに共感できるかといえば、よく分からなかった。
「綺麗なものだから、沢山生み出したかった?」
月夜が尋ねると、ルゥラはにっこり笑って頷いた。
「そうかも」
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