第73話 霧散的思考の果てに
昼休みが始まった。
屋上に行った。
空を見上げた。
青色。
白色。
二色のコントラスト。
なぜ、空は青く見えるのか?
なぜ、海は青く見えるのか?
空の青さと、海の青さは、どちらが先だろう?
背後を通り過ぎていく生徒たち。
声。
足音。
自分の鼓動を把握。
自分の呼吸を認識。
眼下に流れる噴水。
循環してまた吐き出される水。
延々と繰り返すプロセス。
きっと人間の血流も同じ。
お腹を空かせた二羽のスズメが下りてきて、水面に嘴を浸して喉を潤す。
喉?
鳥に喉はあるのか?
吹きつける風。
まだ少し冷たい。
固いブレザーの袖。
自分の皮膚に触れる、その瞬間。
悪寒が走る一瞬。
自分の身体も冷たいはずなのに、どうしたのだろう?
何を恐れているのだろう?
喧騒が途絶える。
誰もいなくなった、屋上。
自分しかいない、屋上。
校庭にブランコがないのはどうしてか。
あったらきっと素敵なのに……。
滑り台も……。
エクスクラメーションマークが日本語として認識されているという事実。
クエスチョンマークが英語以外の言語に用いられているという事実。
日本語とは何か?
なぜ、様々な表記が混在していても平気なのか?
人間とは何か?
なぜ、色々な考え方が顕在していても元気なのか?
考える、考える。
考えなくても良いことを考える。
足もとにビー玉が転がっていた。
しゃがんでそれを手に取る。
立ち上がって太陽の光を透過させる。
鈍く光る曲面。
人差し指と親指の狭間でくるくると向きを変える、ビー玉。
けれど、決して一周することはない、ビー玉。
爪先を立てて上履きの位置を調節する。
何のためか分からない。
何のために生きているのか分からない。
何のために生まれて死んでいくのか分からない。
地球は回っている。
けれど、月も回っている。
太陽も回っている。
何も特別ではないという真実。
頭も回っている。
血液も周っている。
この世に存在するものは、すべて回っているという事実。
それなのに、どうして、地球が回っていることに気がつかなかったのだろう?
どうして、地球だけ特別だなんて、そんな傲慢な考え方ができたのだろう?
死にたい?
生きたい?
いずれにしろ、同じ。
どちらを選んでも、この星に在る物質であることから逃れられない。
生きていても物質。
死んでしまっても物質。
では、心は?
では、意識は?
私とは、何か?
自分?
自我?
自己?
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