第63話 防御は最小の防御
物の怪は生き物ではない。しかし、生き物だった、といえば間違いではないかもしれない。要するに、もとは生き物だった。その成れの果てが、物の怪という形で現れる。
月夜は小夜とフィルがどういう関係なのか、だいたい理解している。そして、フィルがどうやって物の怪になったのかも知っていた。けれど、小夜から聞いた説明には、幾分曖昧な部分がある。それはたぶん、小夜が当事者として関わる出来事であることや、物の怪という存在がそもそも曖昧なものであることが関係しているのだろう。
小夜は物の怪ではない。けれど、半分その性質を持っている。
「物の怪は、どうやって殺すの?」
月夜が尋ねても、小夜は明確な答えを口にしなかった。
「私にも分かりません。物の怪を殺したことがないので」
「フィルは?」月夜はフィルに問う。
「……俺も知らない」閉じていた目を片方だけ開いて、彼は答えた。「普通に、物理的に圧力をかければいいんじゃないか?」
「物の怪は、物質でできているの?」
「物質……、ではないかもしれません」月夜の質問に小夜が応じる。「ただ、我々にとっては、物質との違いはあまりないかもしれません」
「じゃあ、フィルが言ったように、物理的な攻撃を仕掛ければいいの?」
「いえ、おそらく、そういうわけにもいかないでしょう」小夜は話した。「物質と変わらないというのは、あくまで、巨視的な視点に立って見ると、という意味です。この際、微視的な視点は問題にならないというだけです。相手も月夜に対して攻撃してくるので、最終的には物理的な影響を受けることになる、ということです」
「とりあえず、守ればいい?」
「鎧を着たりして、ということですか?」
「……うーん、そうかな……」
「それも大事かもしれません。ただ、それすらも凌駕する攻撃も考えられるので、どのくらいの強度のものを用意すればいいのかとなると、よく分かりません」
「まあ、そのままでいいんじゃないか」フィルが口を挟んだ。「物理的なダメージを受けても、耐えられればいいんだろう? じゃあ、今の内に鍛えておいて、如何なる戦況にも柔軟に対応できる身体を用意すればいいんだ」
フィルの意見を受け、月夜は小夜に尋ねる。
「小夜も、それでいいと思う?」
「いいかもしれませんが、あまり現実的ではありません」小夜は答えた。
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