第45話

「もういい…喋るな…」


カズキは威圧を放つと女はあまりの恐怖に上からも下からも体液をこぼす。


「あわわわ……」


立ったまま泡を吹き気絶した女に呆れて水をかけて目を覚まさせる。


「ば、ばけもの…」


女は気がつくとカズキから後ずさりする…


「そうだ…お前が喧嘩を売ったのはそういう相手だ…これでもまだ戯言を言うつもりか?」


「わ、悪かった…です。もう言わない…だから助けて…下さい」


カズキの足に縋りつこうとすると


「触るな!汚い」


軽蔑するように女を見ながら吐き捨てる。


「いいか…もう二度とこの町に近づくな。少しでも足を踏み入れたらその時は手加減はしない!」


カズキは近くに生えていた木に向かって剣を振るうと…離れた場所にいたにも関わらずに木が真っ二つに切れた。


「は、はい!」


女は腰が抜けた体を引きずりながら急いでカズキ達から離れた。


カズキ達から十分離れると…


(くそ!あんな化け物を仲間にしていたなんて…あのガキ!いつか…)


グッと砂を握りしめる。


「ワオォォォォン!!」


するとそばにいた犬が急に遠吠えをした。


女はビクッと後ろを確認するが別に追ってくる様子は無かった…。


(と、とりあえずあいつらから見えないところまで離れよう…)


這いつくばりながら大きな岩場へと向かった。



「なんだ?今のは」


カズキは急に遠吠えをしたジャックを見ると


「別に…ただ魔物を呼び寄せる遠吠えをしたくなっただけだ」


ジャックはじっと女が消えた先を見つめる。


「そうか…」


カズキはニヤッと笑うと…


「さぁエイトがきっと心配しながら待ってるぞ!早く帰ろう!」


ジャックがこくんと頷くと…


「もう…エイトと話しても…いいか?」


ジャックが伺うようにカズキを見上げる。


「いいかも何もエイトにバレちゃったんだろ?」


「ああ…」


バツが悪そうに答えると


「エイトも何となく気がついてそうだったけどな…」


「そ、そうなのか!?」


ジャックが驚いてカズキを見つめると


「たまに…じいちゃんはジャックと仲良くていいなぁとか言ってたからな」


驚いているジャックを可笑しそうに見ていると後ろからカエルが潰れた様な音が響いた…。


貪り食うような魔物の唸り声が聞こえる…


カズキ達は後ろを振り返ることなくエイトの元へと一直線に帰って行った。

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