第44話

「大丈夫かな…」


カズキ達が見えなくなっても心配そうにしているエイトにラルクが声をかける。


「何が心配なんだ?あの女を傷つけないかとかか?」


ラルクが聞くと


「うん…じいちゃん達が何かしちゃっらどうしよう…」


「やっぱり母親は心配か?」


ラルクが素っ気なく聞くと


「違うよ!じいちゃん達が僕の為にそんな事して欲しくないだけ!もう…あの人とは会う事も会う理由も無いもん」


エイトがムッとして答えると


「そうか…」


ラルクがガシガシとエイトの頭を撫でた。


「おじさん…撫で方がじいちゃんそっくりだね…ずっと一緒に冒険してた仲間だから?」


エイトがラルクをじっと見つめる。


「なんだ?カズキはそんな事も話してるのか?」


「うん!一番信頼してる仲間たちだって言ってた」


「あいつ…」


ラルクがきまり悪そうにすると


「あっ!そうだ!ラルクさん家に帰る前に山爺の家に寄ってもいい?僕薬を届けないと行けないんだよ」


エイトが頼むと


「でもナナミが心配してるんだろ?カズキもああ言ってたし早く帰った方がいいんじゃないか?」


「うっ…」


ナナミと聞いてエイトの気持ちが揺れる。


「まぁちょっと寄り道するくらいいいか…じゃあ急ぐから少し走るから?」


「ありがとう!ラルクおじさん!」


エイトがニコッと笑うと


「おじさんか…」


まぁ悪くないかな…ラルクは笑いながらエイトの後を追いかけた。




カズキはラルクとエイトの気配が遠のくと女に向き合う。


そのまま服を掴むとエイト達が向かった方とは反対方向に引きずって歩き出した。


「ジャック…お前エイトの前で話したな?」


カズキが着いてくるジャックに話しかけると


『エイトがそいつに木の棒で滅多打ちにあってな…仕方なかった』


「なに!」


カズキが足を止める!


「エイトを木の棒で打っただと!」


「ひいっ!」


女はカズキの声にビクッと体を縮こめる。


「あんな子供に手を上げるなんて…あのまま大人しく町で生きていればよかったものの…」


「ど、どうする気だ!殺すのか!私を殺すのか?あのガキに聞かれたらなんて言う気だ!」


女は服を離せとカズキの腕を外そうとするがカズキにはビクともしなかった…


そのまま町を出て何も無い荒野に連れてくるとポンッと前に投げ出す。


「ギャッ!」


地面に倒れてキッ!とカズキを睨みつけると…


「いいのか!あの場には町のみんなが見てた!私の死体が出たら真っ先にお前が疑われるぞ!それともあのガキが疑われるかもなぁ!」


女がニヤニヤと笑う。


「本当にこいつがエイトを産んだのか?」


ジャックが唖然とする。


「そうだ…エイトはこいつに育てられ死にそうになっていた所を俺が拾った…やっと普通の子のように笑えるようになったのに、こいつに会ってしまうとは。だからあまり町には行かれないようにしていたのに…」


「うるさい!私が産んだものをどうしようと私の勝手だろうが!」


一切悔やみも謝罪もしない女にカズキとジャックは嫌悪感しか無かった…

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