第175話
二十階層から三十階層までの戦闘でも思っていたが、やはりイザベラ嬢たちとの連携がもの凄くやり易く、意思疎通も自然に出来ている様に感じる。俺の個人的な感覚だが、イザベラ嬢たちとの深く強い精神的な繋がりが出来た事で、自然と動きが分かる様になったのかもしれない。そう思ってしまうほど、俺とイザベラ嬢たちの動きに無駄がなく、全くと言っていい程に隙がない。
「グォオオオオ!!」
「ウォルター、お嬢さんたち!!また飛ばしてくるぞ!!」
『はい!!』
「今度は俺が迎撃する!!」
熊は魔力を一気に高め、その魔力を右前足の先に集中させてから、高速で真横に右前足を振り抜く。すると、右前足に集中させていた魔力が形を変え、熊の鋭く大きい爪を模した魔力の斬撃となって飛んでくる。五つの魔力の斬撃一つ一つに膨大な魔力量が込められており、斬撃の威力の高さを物語っている。
迫り来る水平に五つ並ぶ魔力の斬撃に対して、俺はロングソードを上段に振り上げ、魔力をロングソードの刃に集中させていく。そして、十分に魔力を高めたと同時に、ロングソードを勢いよく振り下ろす。
「――――フッ!!」
振り下ろしたロングソードの刃から魔力の斬撃を飛ばし、熊が飛ばしてきた五つの魔力の斬撃と真正面からぶつかり合わせる。五つの魔力の斬撃と一つの魔力の斬撃はぶつかり合い、大きな衝撃波と魔力の反発を発しながら拮抗する。だが、その拮抗状態は数秒間で終わる。
五つの魔力の斬撃の刃に、俺の放った魔力の斬撃の刃がスーッと食い込んでいき、五つの刃全てを切り裂いた。切り裂かれた五つの斬撃はただの魔力へと戻り、そのまま綺麗に消え去っていく。そして、五つの刃を切り裂いた俺の魔力の斬撃は、そのまま熊へと向かって飛んでいく。
「ガァアアアア!!」
熊は全身に魔力を纏わせて、自身の皮膚や毛を硬質化させながら、左前足に魔力を集中させて迎撃する。左前足を振るい、魔力で強化した爪で魔力の斬撃に仕掛ける。しかし、魔力の斬撃は魔力で強化した爪を易々と切り裂き、そのまま熊の左前足を肩の付け根から切り裂いていく。ボトリと熊の太く大きな左前足が地面に落ち、切断面から血が勢いよく噴き出す。
「ここで一気に仕留める!!」
ジャック爺の号令によって、イザベラ嬢たちやカトリーヌさんも一気にギアを上げていく。それぞれが魔力を高めていき、幾つもの魔法陣を展開して熊に狙いを定める。それを見た熊は、大きく咆哮を上げて、喉に魔力を集中させようとする。
俺は一気に加速し、熊に向かって一直線に、真正面から駆けていく。そして、目にも止まらぬ速さでロングソードを振るい、今度は右前足を肩の付け根から綺麗に切り裂く。熊は痛みによって集中力が途切れてしまい、喉に集中していた魔力が大きく乱れる。
そこを、ジャック爺やカトリーヌさんは見逃さない。最高のタイミングで展開していた魔法陣を発動し、放たれた幾つもの魔法が熊へと向かって飛んでいく。熊は、両前足を付け根から切り裂かれた事で避ける事が出来ず、放たれた全ての魔法が直撃する。最初は全身に纏わせていた魔力によって防げていたが、それも両肩からの出血と魔力の消費によって弱まっていく。そして最後には抵抗する力がなくなり、幾つもの魔法をその身に浴びて、三十階層の階層主である熊の命の灯は消え去った。
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