　今後の事を考えながら黙々と質の高い肉を楽しんでいると、俺の隣にカトリーヌさんがスッと座って、ニコリと妖艶な微笑みを俺に向けてくる。何だろうと思っていると、カトリーヌさんはフォークで肉を刺して持ち上げて、そのまま俺に向けて差し出してくる。

「ウォルター君。はい、あ～ん」

「――――!?」

『――――!?』

　この場の空気が、先程とは違う意味でシーンと静まり返る。イザベラ嬢たちは驚きながらも、カトリーヌさんの行動に俺がどう応えるのかを、ジッと見ながら待っている。そしてジャック爺はジャック爺で、何時もの格好いいお爺さんといった感じから、ほんわかした雰囲気の優しいお爺ちゃんといった感じになって、微笑ましく俺とカトリーヌさんを見ている。

　揶揄（からか）われているのは分かっているが、カトリーヌさん程の超が付く美女から、恋人同士がする様な事をしてくれるというのは、正直に言ってもの凄く嬉しい。この事で今後揶揄われ続けたとしても、俺の人生に一切の悔いはない。

（――――いざ!!）

　俺は腹を括（くく）り、差し出されたお肉をパクリと口に入れた。それを見たイザベラ嬢たちは驚き、ジャック爺は微笑みながらウンウンと満足気に頷いている。驚きの反応は分かるのだが、ジャック爺の反応はどういった意味なんだろうか。

　ダンジョンさんのお肉の美味しさと、カトリーヌさんが恋人の様に食べさせてくれた幸せを噛みしめていると、いつの間にか俺の周囲にイザベラ嬢たちがいた。しかも全員がフォークを持っていて、その先端にはお肉が刺さっている。

「次は私ですね。はい、あ～ん」

　イザベラ嬢がニッコリと妖艶な笑みを浮かべながら、お肉が刺さっているフォークを差し出してくれる。皆が近くにいた事や、イザベラ嬢の流れる様な驚きに一瞬固まってしまったが、開き直ってこの夢の様な幸せを存分に楽しむ事にした。俺は、イザベラ嬢に差し出されたお肉をパクリと食べた。それを見たイザベラ嬢は、花が咲いた様に微笑んだ。

「次は私の番ね。はい、あ～ん」

　クララ嬢がそう言って、同じくお肉が刺さっているフォークを差し出してくれる。まだまだ緊張はするものの、先程の様に固まる事なくノータイムでお肉を口にする。

　それを見たクララ嬢も、イザベラ嬢と同じく花が咲いた様に微笑んでくれた。

「それじゃあ私たちも――――」

「――――はい、あ～ん」

　次はマルグリット嬢とナタリー嬢が、二人同時にお肉が刺さっているフォークを差し出してくれる。俺は再びノータイムで食べにいく。最初にマルグリット嬢の差し出してくれたお肉を口にし、そのままナタリー嬢の差し出してくれたお肉を口に入れて、二倍の幸せを噛みしめる。マルグリット嬢もナタリー嬢も、咲いた様に微笑んで喜んでくれた。

　夢の様な時間が終わったと思ったら、ニコリと妖艶な微笑みを浮かべたカトリーヌさんが、再びお肉が刺さっているフォークを差し出してくれた。何と、幸せのお代わりをさせてくれる様だ。さらに、イザベラ嬢たちも妖艶な微笑みを浮かべながら、お代わりを差し出してくれる。

　この恋人の様に食べさせてくれる幸せな時間は、休憩時間が終わるまで続いた。俺は開き直って幸せを噛みしめていたが、恥ずかしさが徐々に勝ってきて、顔が赤くなっているのを感じながら過ごした。それを見たイザベラ嬢たちは、その間ずっとニコニコと妖艶な微笑みを浮かべて、もの凄く上機嫌な様子だった。