第122話
「ウォルターさん、私たちと一緒に魔法競技大会を観戦しませんか?」
「へ?」
イザベラ嬢たちからの突然のお誘いに、頭が真っ白になってしまう。友人とはいえ、女性の方からお誘いを受けるとは思わなかった。
「私たち王都の魔法学院からは、このままだと予定通りアホな男共が出場します」
「……確か魔法競技大会に出場するためには、各校で行われる予選を勝ち抜いた、上位五名だったかが選ばれるんですよね?それなのに、アルベルト殿下や側近たちが出場する事は確定なんですか?」
「まず間違いなく、あのアホな男共が出場する事になりますね」
「それはアルベルト殿下や側近たちが、他の生徒たちよりも強いからですか?」
「王都魔法学院に在籍する生徒全員よりは強くありません。しかし、王都魔法学院の中で上位に位置する魔法使いである事は確かです」
「殿下は言わずもがなですし、側近たちも昔から要職を任せられてきた家系の生まれですからね。それ相応の血筋の相手、魔法使いとして優秀な女性と結婚し、血を受け継がせていきましたから」
「魔力量もさることながら、属性魔法への適性も非常に高いから、様々な属性の魔法を使う事が出来るわ。でも使う事は出来ても、完全に制御出来ているかと言うとね」
「そこまでではないと」
「以前までなら私たちもそう言いきれなかったけど、賢者様に色々と教わり始めてから、そういった事も分かり始めてきたのよ」
「なる程」
ジャック爺は、人に何かを教えるのも凄く上手いからな。それが自分の一番得意な魔法という分野となれば、他の分野の何倍も分かりやすく丁寧なものになるだろう。そんなジャック爺の教えを受けているイザベラ嬢たちは、本格的に教えを受け始めてからメキメキと腕を上げている。魔法に関する知識も叩き込まれているので、最近では上位属性魔法も発動する事が出来るようになっているとの事。
上位属性魔法とは、一般的に知られている属性魔法に比べて、高威力・広範囲の属性魔法となる。ただしその発動には、多くの魔力と精密な魔力操作・制御が必須となる。それに発動出来たとしても、上位属性魔法そのものも制御をしなければ、暴発するか不発に終わってしまう。そんな上位属性魔法を発動出来る様になった事自体が、イザベラ嬢たちが魔法使いとしての殻をまた一つ破ったという事の証だ。
だが上位属性魔法は、習得するにしても練習するにしても、周囲に気を遣う事が絶対条件の危ない魔法だ。イザベラ嬢たちは一体何処で習得し、練習を重ねていったんだ?今日の夜にでも、ジャック爺にその辺の事を詳しく聞いておくか。
「ウォルターさんは、アホな男共の顔や戦い方を知っていますか?」
「いえ、知りません」
「純粋に魔法競技大会を皆で楽しみたいという思いもあります。それと同時に、いずれぶつかり合う可能性の高い相手の顔や戦い方を、ウォルターさんに知っておいてもらおうと思ってお誘いしました。どうですか?」
「何か用事があるなら、そちらを優先してもらって構わないけどね」
「いえ、特に用事はありません。なので、ぜひご一緒させてください」
すまんな同志たちよ。今年は一緒に傷をなめ合い、慰め合う事は出来そうにない。だが安心してくれ。心は同志たちと共にある。一度女性から誘われただけで勘違いする程、俺は愚かではないからな。また来年の魔法競技大会の日に、屋台の料理を飲み食いしながら悲しみを語り合おう。だから、頼むから俺を敵認定しないでくれよ、心の同志たちよ。
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