第29話
俺がしたお願いに、二人はそれぞれの反応を見せる。ジャンの方はまあ任せろといった様な顔をしているが、マークの方は迷っている表情を見せる。
まあ、それぞれの反応は予想通りではあるな。ジャンの婚約者であるマリー嬢は、ジャンと同じ侯爵家のご令嬢であるから、今回の騒動で目を付けられたとしても、ある程度は
だが、マークたちに関しては別だ。マーク自身も婚約者であるソレーヌ嬢も子爵家だ。ジャンやマリー嬢の侯爵家に比べてしまうと、貴族としての力が弱いと言わざるを得ない。目を付けられて、無理難題を上の貴族や国から押し付けられると、家自体が傾きかねないからな。それは迷うのも仕方ないだろう。
俺たちとしては協力をしてほしいとは思うが、無理をさせるつもりはない。最悪の場合、国相手に大立ち回りする可能性もあるからな。友達として考えてもほしいが、貴族としても考えて判断を下してもらえればいい。その結果断られたとしても、マークやソレーヌ嬢に対して何かを思う事もないし、責め立てるつもりもないしな。
「二人とも、今直ぐに決断して答えなくてもいい。一度家に持ち帰って、家族や彼女たちともしっかり相談をしてくれ。そして、答えが決まったら俺に直接教えてくれ。現状ではまだ時間に余裕があるが、これから先もそうであるとは限らない。出来るなら、早めに決断をしてくれると助かる」
「了解だ」
「…………ああ、分かった」
「……マーク、無理だけはしないでくれ。友達として協力をしてほしいとは思うが、オランド子爵家としても考えて、最終的な決断を下してくれ。俺たちは、その決断を尊重する」
「ああ、助かるよ。……ふぅ。じゃあその決断を下すためにも、ウォルターが知っている限りの情報を教えてくれ。アルベルト殿下についてだけでなく、側近の奴らやローラって子の事もだ」
「了解。それじゃあ、…………」
俺はジャンとマークの二人に、今現在で分かっている事の全てを、詳細に語っていく。マルグリット様を取り巻いている学院の環境から、アルベルト殿下やその側近たちが声高々に主張する、執着とも思える様なマルグリット様への糾弾。そして、アルベルト殿下たちをいい様に操って、マルグリット様を犯人にしたがっているローラの言動。それらを、事細かに分かりやすく伝えていく。
そこから、今回考えている女性陣たちの計画について、現段階で考えられている様々な事について教えていく。それらの計画を聞いていけば聞いていく程、ジャンもマークもその徹底的で容赦のない内容に、女性の恐ろしさを再認識して顔を青褪めていく。うんうん、その気持ちには完全に同意するぞ。俺も女性陣が計画している事を傍で聞いていて、二人と同じ気持ちになったからな。
「俺、これからソレーヌを不用意に怒らせない様にする」
「そ、そうだなマーク。分かっていた事ではあるが、女性を怒らせると恐ろしい事になる。俺もマリーを怒らせない様にしよう」
ジャンとマークは、女性を本気で怒らせた時の恐ろしさを再認識し、婚約者であるマリー嬢とソレーヌ嬢を怒らせない様にと心に誓っていた。
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