第14話

 ウォルターが真面目に授業を受けている同時刻、イザベラとクララもまた、魔法学院で勉学に励んでいた。今は魔法属性に関しての授業を受けていた。


「…………この事から、魔力量が多くとも、属性魔法への適性が低い者には、各属性の親和性がほとんどないと言ってもいい。そのため、その様な者たちが扱える魔法は、生活魔法と呼ばれる魔法か、無属性魔法の二種類に限られる。そしてそういった者たちは、前線で戦う戦士や騎士となる事が多い。まあ言ってしまえば、我々を守る盾だな」


 目の前でニヤリと笑ってそう語る先生は、魔法学院の先生の中でも数少ない、魔法使い至上主義の考え方をする人物だ。この国の成り立ちから考えると、そういう考えに至る人がいる事もあり得るでしょう。だけれど、そういった考えを人に押し付ける事や強要する事は、間違っている事だと私は思う。それに、属性魔法が使えないだけで、魔法そのものが使えないわけでないの。つまり何が言いたいのかというと、属性魔法に適性がないまたは低いだけであって、その人たちも、広義的に見れば魔法使いなのよ。

 そして残念な事に、先生の魔法使い至上主義の考えに感化されてしまう人が多くいる。そんな魔法使い至上主義の考えとは、属性魔法を使える者が真の魔法使いであり、属性魔法を使えない者たちは、魔法使いである自分たちよりも下の存在であるというもの。

 この様な考え方をしているため、無属性魔法しか使えない戦士や騎士の方々を見下し、発言の通りに自分たちを守る盾としか思っていない。こんな傲慢で危ない主義を掲げている先生だが、腕や知識だけは確かである事は間違いないのよ。そして厄介な事に、先生の血筋が侯爵家の縁者みたいで、簡単に辞めさせる事が出来ないのよね。


「先生はこんな事言ってるけど、実際の戦場に立つ事になった時、本当に同じ事を言い続けられると思う?」


 私は、隣にいるクララに向けて、小声でそう問いかける。


「……多分無理。イザベラも、アンナ様やローゼン様に聞いた話を覚えてるでしょ?」

「ええ、ウォルターさんのあのぽやっとした感じからは考えられない程、ベイルトン辺境伯領は厳しい環境みたいね」

「そりゃあ、魔境が自分の故郷の近くにあるんだよ。常に氾濫・暴走の危険が付き纏う、一歩でも間違えたら死に直結する様な場所って言われてるしね。そんな所で幼い頃から鍛え続けてたら、麒麟児やら守護者やらなんて呼ばれるのは当然よね」

「それに魔境では、魔法使いだろうが戦士だろうが関係なく戦わないと、あっという間に喰われてしまうそうよ。それを考えると…………」

「先生の掲げる魔法使い至上主義は、現実を知らない子供の妄想みたいなものよね」

「プッ‼…………そうね。言われてみると、子供の頃に考えそうな壮大な妄想ね」


 クララの言った事がどうにも可笑しくて、私は思わず笑ってしまった。クララも私の笑いに誘われて、先生に気付かれない様にクスッと笑っている。私たちは先生の授業そっちのけで、二人の中でホットな話題である、ウォルターさんについての話を続けていった。

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