★★★ Excellent!!!
その少女、奔放につき 有澤いつき
この世には見える人にしか見えないけれど確かにそこに「いる」ものがあって、それが人に益なり害なりを与えることがある。特に人に仇なす悪霊をカルマと呼び、導き手であるガイドはカルマをあるべき場所に還す存在だ。ガイドの五大家筆頭である黄龍院の分家に生まれた少女・竜胆露水。彼女はとある出来事がきっかけで「最悪の霊奴」と呼ばれるハクールを従えたことから、近年頭角を現している新米ガイドだ。黄龍院から寄越される様々なカルマ絡みの依頼をこなしながら、露水は暗躍する術師を追っていく。
色彩の対比とでも書くべきなのでしょうか。陰と陽、有彩色と無彩色、生きるものと死せるもの、ありとあらゆる対比のできる作品ですが、ビビッドな世界観だな、という所感がまず先立ちます。それは主人公・露水をはじめとしたキャラクターのビジュアルが鮮やかであり、動きもアクロバティックでホラーとは思えない明るさがある、というのもあります。ただ今作の魅力である「鮮やかさ」というのにも種類があって、露水の描き方が個人的にはいいなと感じます。今作は基本的に竜胆露水「以外」の人間による一人称視点で進んでいきます。メインキャラだけではなくゲストキャラが語り手になるので、様々な人のフィルターを通すことによって竜胆露水の像が出来上がっていきます。露水は派手な見た目もありますが、誰かに縛られることなく心の赴くままに動き回るような少女として描かれ…
続きを読む