ふともも×混霊術
家に帰るとツツと星野が気だるそうに部屋着で寝転がっているのが見えた。
「……遊びに行ってた俺達が言えることじゃないけどな。もうちょっとシャキッとしろよ」
「いや……とは言ってもずっとパソコン弄るのもしんどいし、かと言ってこんな田舎というか、崩壊した場所だとやることもないからなぁ。というか、ゲームとかないのか?」
「ねえよ。……まぁ、娯楽がないと人間は辛いか」
「なんか唐突に人外みたいな発言しはじめたな……」
星野は床にゴロゴロと転がっていた体を起こし、寝癖のついた頭を掻く。
「まぁ、ダラけるのぐらい許してくれよ。迷宮でかなり気を張っていたからか気分がどうにも落ち着かない」
「気持ちは分かるが……じゃあ勉強でもしたらどうだ?」
「なんで研究疲れの休憩中に勉強しないとダメなんだよ……もっと楽しいことをさせろ」
楽しいことって言ってもなぁ。ほとんど物のない部屋に腰を下ろしていると、ツツが自分の顔を両手で指差して小首をかしげる。
「春だし、かわいいツツちゃんを見るとか?」
「……はあ」
星野はツツの言葉にため息を吐く。
それにしてと娯楽か……全然考えていなかったな。俺は元々遊んだりはあまりしないし、初も少なくとも目立つところにゲームなどをおいてはいなかった。
少し考えてから口を開く。
「仕方ない。やるか、おにごっこ」
「却下」
「遊びのセンスが小学生以下。カス」
なんだよ……必死に考えて提案したのに……。
俺が少しいじけていると、初がヨシヨシと俺の頭を撫でる。
俺に遊びのセンスがないのは分かっているけど、もっと優しくしてくれてもいいじゃないか。俺の仇を討つように新子が前に躍り出た。
「ふふん、最近の若者はピコピコばかりだからこういう時の遊びを知らないようだね。おばあちゃんの知恵というものを教えてあげよう」
そう言って新子が取り出したのは毛糸だった。
「あやとり……それを伝授しよう」
「いやだ」
「さっきから保育園とか幼稚園とかなんだよ。遊びのレパートリーが」
新子が落ち込んでいるので頭を撫でる。
「あー、俺と新子は修行をしに行くけど、星野はどうする?」
「ん、ああ……そうだな。行くか」
「ツツはどうする?」
「ん、んー、スキルの特訓でしょ? 邪魔したら悪いからやめておくよ。ヨクくんのスキル卑猥だし」
「卑猥ではない」
「いやでも……鎖で縛るのはやらしいよ」
「それをやらしいと思うツツがやらしい」
鎖というのはそもそもそういう行為に使われることを想定しているものではないし、俺にそういう趣味はない。
髪を括って短パンとパーカーという少しボーイッシュな格好のツツを見ながら、鎖でその肢体が縛られている姿の想像をしてみるが、全くもって心に響かない。……いや、少しは響く。
……いや、悪くないか。むしろいいかもしれない。
「……ヨクくん、変な想像してない?」
「してません」
無駄に鋭いな。じとーっとした視線から逃げるように初の方に目を向けて「留守番頼めるか?」と尋ねると初はコクリと頷いて「家の整理をしておきますね」と答える。
ああ、ほとんど荷物がないとは言えども適当に放置しているものが多いもんな。
「あ、あとお洗濯しておきますね。ホテルで結構溜まっちゃってますし」
「いや、それは明日で良くないか。俺も手伝えるし」
「兄さんと一緒の時間はひっついていたいので、兄さんがいない間に家事をしたいのです。それにその……下着とかもあるので、恥ずかしいですから」
「ああ……」
初はもじもじと口にする。やっぱり、若い男女での共同生活となるとそういうのが問題になるか。今まではたまたまないが、ハプニングでそういうことがあるかもしれないので多少気をつけた方がいいかもし」ない。
「……あとで生活のルールとか決めるか。男女で生活していたら揉めたりしやすいだろうし」
「ん、そうですね。兄さんは他の女の子にデレデレしたらダメとか」
「それは生活に当たって必要なルールではない。まぁ、適当に考えておいてくれ、どうせあとから細かく調整はするだろうけど」
初はコクリと頷いて小さく「いってらっしゃい」と口にする。
ツツはソファの上で膝を抱えて小さくぴょこぴょこと手を振る。
「いってらっしゃい。怪我しないようにね」
「ああ」
ツツの短パンから覗いている白い脚が目に入る。油断してだらけているからかズボンの隙間からかなり奥の方まで脚が見えている。
性格は変わり者すぎてどうにも苦手だが、本当に容姿は整っているのは認める他ない。
なんとなく見ているとそのツツのふとももの付け根まで隙間から覗けてしまい……ズボンとは違うピンク色の布地が見えてしまう。
柔らかそうなふとももがパタパタと動き、ツツが俺の視線を見て不思議そうに首を傾けたあと、気がついたのか少し照れた様子で手でズボンの隙間を抑えて隠す。
「ヨクくんのえっちー」
俺はえっちではない。と否定しようかと思ったが、見えていることに気がついてじっと見てしまったことは確かで……どうにも否定出来るところがない。
「あー、その、悪い」
俺が素直に謝ると、ツツはその反応が意外だったのか驚いた表情をしてから少し恥ずかしそうに俺から目を逸らす。
「い、いいよ。ツツちゃんが魅力的すぎるのが悪いからね。そ、それより、いってらっしゃい」
「……ああ」
新子と星野と共に外に出て、廃墟ばかりで人がいない辺りにまで繰り出す。
それから新子は俺と星野の方を見ながら近くの木の根っこに腰掛ける。
「んー、スキルの性質上、ヨクくんは混霊術を習得、星野くんはスキルを使いこなせるようにするのがいいかな。とりあえず星野くんは何回までなら使えるかを数えながら色んな動きでスキルを発動してみて、ヨクくんは……そうだね、まず手本から見せようか」
星野は俺の方の修行というか、新子の手本が気になるのかあまり離れずにこちらを見ている。
新子は近くのコンクリートの破片を手に取ってポイッと放るが、それは落ちることなくふわふわと漂う。
「これが私のスキル【
新子はゆっくりと口を閉じ、集中するように【
そうするとふわふわと浮かんでいた石が、突如として発生した光の鎖によってガッチリと掴み取られる。
光の鎖は確かに石を捕らえているが、光の鎖は地面や壁などにくっついておらず、何もないところから生えているように見える。
新子が石を触ろうとするが、石はしっかりと固定されていて動くことがない。
「これが混霊術。今回のものはヨクくんの【
「……俺と新子のスキルの合いの子……いや、かなり新子寄りか」
新子はコクリと頷く。
なるほど、これがか……。確かにスキルのレパートリーが増えてかなり使えそうだ。
「……というか、俺のスキルが混ざっているのか。確か、その人を慣れ親しんでよく理解したらと言っていたが……」
そこまで仲良くなっただろうかと思っていると新子は小さく頷く。
「ん、まぁ……一緒に寝たし、仲良くなってるから」
新子は照れたように言う。……ああ、この混霊術というのは、その相手とめちゃくちゃ仲良くしている証拠みたいなものだから恥ずかしいのか。
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