第62話 共鳴する人造妖魔達

 一方。

 灰児はいじからの突然の申し出に、等依とうい鬼神おにがみは顔を見合わせていた。


「あのーほんっとに、やるんスか~? 任務は……?」


「……諦めろ、等依とうい愛原排除あいはらはいじという男は一度言ったら聞かない性質タチだ……」


 等依とういの問いかけに輝也てるやはそう答えると、灰児はいじに向かって告げる。


「おい、加減はしろよ?」


「うむ! わかっているとも! さぁ、乙女おとめよ! 来るがいい!」


 灰児はいじに名前を呼ばれ、鬼神おにがみが怒鳴る。


「なんでてめぇに名前呼びされなきゃなんねーんだ! ざっけんな!」


「ではなんと呼べばいいのだ? 鬼神おにがみならひつぎ由毬ゆまり様も入ってしまうぞ?」


 指摘された鬼神おにがみは、灰児はいじを睨みつける。


「なら、せめてフルネームで呼べや! てめぇみたいな野郎に名前呼びなんざ、されたくねぇんだよ!」


 声を張り上げると鬼神おにがみは他の三人から少し距離を取り、百戦獄鬼ひゃくせんごくきを呼び出した。


「お~。鬼神おにがみちゃんてば、すっかり仲良しじゃないスかー」


 等依とういが感心した声を上げれば、鬼神おにがみは少しだけ嬉しそうな顔をする。それを確認した灰児はいじが言う。


「うむ! では修行と行こう! 行くぞ! 術式じゅつしき! 伍銘ごめい! 舞砲烈火まいほうれっか!」


 炎をまとった妖魔剣ようまけんでいきなり鬼神おにがみに襲いかかった。


「ざっけんな! 大体、百鬼びゃっきは人間は襲えねぇんだよ! ひつぎがいるなら知ってんだろう!?」


あんずるな! このけんであれば鬼憑おにつきも私に対して攻撃できるはずだ! ひつぎ!」


 そう告げると、抗議する鬼神おにがみを無視して次の攻撃体勢に入る灰児はいじ。二人の様子に、等依とういが思わずあいだに入ろうと動く。だが、それを輝也てるやが止めた。


「……やめろ。もう、止められないし……。それに、?」


「……っ!」


 なんの反論もできない等依とういに、輝也てるやが次の言葉をかけようとした瞬間だった。周囲をきりが包む。


「む?」


「な、なんだってんだ!?」


「……これは……」


「なんか来るっスよ!?」


 動きを止め、周囲を警戒する灰児はいじ鬼神おにがみ、そして輝也てるや等依とういの前に、人造妖魔じんぞうようまが二体現れた。


人造妖魔じんぞうようま! もしや引き寄せられたか! これは好都合! 鬼神乙女おにがみおとめよ! 百戦獄鬼ひゃくせんごくきで倒してみるがいい!」


「てめぇに指図さしずされる理由なんざねぇよ!」


「……攻撃が来るぞ? 灰児はいじ鬼神乙女おにがみおとめ


「……」


 四人それぞれ攻撃に備える中、犬型と猫型の人造妖魔じんぞうようまは赤と青のオーラのようなものをまといいながら、こちらに接近してきた。


「うむ! 共鳴し合っているようだな! 鬼神乙女おにがみおとめよ、頑張れ!!」


「マジかよ!? クソが! やりゃあいいんだろ、やりゃあ! 百戦獄鬼ひゃくせんごくき!」


 鬼神おにがみの指示を受け、百戦獄鬼ひゃくせんごくきが二体の人造妖魔じんぞうようま達に向かって行く。だが……。


「あぁ!? なんだってんだ!?」


 百戦獄鬼ひゃくせんごくきの攻撃が中々なかなか当たらない。いや、当たってはいるのだが、きりのように妖魔ようま達は霧散むさんして行く。それを見た等依とういはあることに気づいた。戸惑いながら言葉を発する。その声は自信なさげだ。


「もしかして……。アイツら、実体どっか別にあるんじゃ……ないスかね?」

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