第57話 揃う顔ぶれ

 五奇いつき達がルッツに連れてこられたのは、無知性妖魔むちせいようま達と戦った山岳地帯の更に奥だった。

 なお、Eチームの教官である齋藤と祓神ふつかみみぎわも一緒だ。フルメンバーで修行させるつもりらしいルッツが運転する車で、山道を走る。


「おい、貴様。いくら許可が下りたとは言えだな……。責任は持てるのだろうな?」


 齋藤がにらむようにけば、ルッツが微笑みながら答えた。


勿論もちろんだとも。僕はそういうことはできる大人なんだよ? さ、着いたよ!」


 ルッツの言葉で、全員で車を降りると、意外なメンツが揃っていた。


「おぉ! 五十土いかづちか! 元気になったようだな! うむ!」


 五奇いつきに向けてそう声をかけてきたのは、灰児はいじだった。


愛原あいはら君!? それに、神禊かんばら君に……鬼神おにがみさんのいとこの……?」


「ワタシも鬼神おにがみよ? 鬼神柩おにがみひつぎ


 ひつぎに指摘され、気まずそうにする五奇いつきの耳に聞きなれない声が響く。


「おいおいおい! そこにいるのは、等依とういじゃないか!? わたしの前によくも現れられたな!」


 その声に、珍しく心底嫌そうな顔をすると等依とういが答える。


「……どーもっス。両我りょうが


「それだけか!? お前と当主の座をあらそい、見事に勝利したこのわたしを!」


「べっつにー? そもそもあらそった記憶ねーっしょ?」


 やたらと食ってかかる両我りょうがに対し、冷めた態度で接する等依とうい。そんな二人の空気を読まずに、ひつぎ鬼神おにがみに声をかけた。


乙女おとめ百鬼びゃっきと仲良くなれたそうね? 技を扱えるようにはなったのかしら?」


「お前も人の話聞いてねーよな……。まだだが、文句あんのかよ?」


 こちらの二人も微妙な空気で会話をするため、五奇いつき空飛あきひはどうしたものかと顔を見合わせた。すると灰児はいじが考え深げに声を発する。


「うむ! 親族同士で会話がはずむのは良いことだな!」


 そんな彼の様子に五奇いつき空飛あきひはますます困惑してしまう。しばらくして、齋藤やルッツと同い年くらいの花魁おいらんのような桃色の髪の女性が五奇いつき空飛あきひの横に並んできた。十代くらいの、角の生えたこちらも和装の少年を連れて。


「あらあら、若いっていいわよねぇ? 私は鬼神由毬おにがみゆまり、Aチームの教官にして、乙女おとめの姉よぉ? よろしくねぇ?」


 唐突すぎる情報に思わず声を上げる五奇いつき空飛あきひの反応を見て、鬼神おにがみが珍しく焦った口調で由毬ゆまりに食ってかかる。


「な、なにばらしてんだよ! 姉貴!」


「姉貴じゃあないでしょう? お姉さま、よぉ? そして、こちらにいらっしゃるのがAチームの祓神ふつかみ句句能樹埜辰智主くくのきのたつちぬし様。通称、辰智たつち様よぉ?」


 紹介された辰智たつちは、Eチームのメンバーに次々と視線をやる。


「ふむ。素養はあるようだな……」


 そう呟くと辰智たつちはしばらく沈黙しみぎわの方を見て声をかけた。


「きみ、成長できそうだな?」


 みぎわはというと少し驚いた顔をする。


「光栄じゃの。くらいの高きおかたに言われると」


 嬉しそうに答えるみぎわの姿を横目で見ていた齋藤が咳払いした。


「コホン。顔合わせはもういいだろう? さっさと始めるぞ……合同訓練をな!」


 はっきりと聞こえた言葉にAチームとEチーム、双方から困惑の声が上がった。

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