止まる指 (ひとりごとダーク)

 書けない。書けなくなった。

 いや、書きたい物語はある。

 書いている物語も。

 自分の文章が読みにくい分類に入るのは、なんとなく分かっていた。でも、それをはっきりと突きつけられた途端に、巨大な壁がズモモモモと迫り上がったような気がして、立ち尽くしてしまった。


 文章は、最初の入り口だ。

 家に例えるなら外装で、人に例えるなら見た目だと思う。

 人は見た目が九割という本が、昔話題になったが、小説や漫画も同じだと思う。

 どんなに頭で考えても、読みやすい文章が書けない。


 どんな物語でも、読みにくいものは読めない。正しい努力をしなければ、正しい成果は得られない。

 私の文章も物語も、独りよがりだ。

 それが、自分の人生を表しているようで、虚しくなった。


 こんなに物語が溢れた世界で、自分が新しく生み出す意味と価値は、どれくらいあるのだろうか。

 私はただの消費者であることのほうが、幸せだったんじゃないだろうか。


 

 






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日々是好日であれば良い ユト (低浮上) @krymk

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