第22話 王様ゲーム(1)

 海では大いにはしゃいだ。

 水の掛け合いや砂山くずしやビーチバレ、さらにはスイカ割りと、これでもかと青春してるなーと感じたのであった。


 


 19時に早めの夕食を取った僕たち。

 寝るにはまだ早い時刻なので、何をして時間を潰すか、案を出し合っていた時。


「王様ゲームなんてどうかしら」

  

 食後の紅茶を優雅に啜っている鹿波ちゃんがそう言った。


 王様ゲームとはお手軽にできて、最大限の利益を得られる素晴らしいしいゲームだ。


「王様ゲーム?」


「あれ、立夏先輩知らないんですか? 王様ゲームとは、くじで『王様』役を決めて、『王様』が直接指名する、または参加者の持つくじの番号を指定して命令を下し、王様以外の参加者はそれに従わなければならないというゲームのことですよーっ」


「うわ、なんかWikipedia調べたらありそうな説明だな……」

 

「1番重要なのは、王様の命令は絶対だということよ」


「王様の命令は絶対……」


「面白そうなのでやりましょう〜!」


 みんなが説明を受けている間にキッチンで準備を進める。


 割り箸を割ったものを人数分用意して、数字を振っていき、一つだけ端を赤く塗る。


「鹿波ちゃん、用意できたよ」


「じゃあ始めましょう」


 僕は番号が書いてある下の部分を手で隠すように握りながら割り箸を回していく。


「掛け声は、『王様だーれだ』ね」


「せーのっ」


「「「「「王様だーれだ?」」」」」


「アタシだ」


 赤く塗られた割り箸を見せる美奈ちゃんが最初だ。


「2番と3番は下着になって」


「え、もう!?」


 下着姿は終盤のメインイベントだと思っていた。


「そんなんだからビッチと勘違いされるのよ、美奈」


「い、いいだろ別に。で、2番と3番は誰なんだ?」

 

「僕だ」

「私だ」


 弥夕ちゃんと声が被る。


 僕の裸に需要はないが、弥夕ちゃんのABCDEF……Gカップにはめちゃくちゃ興味がある。

 

 別に恥ずかしがることもないので、テキパキ脱いでいく。


「大晴くんって体育の着替えの時も思ったけど、ほんと脱ぐのに抵抗ないよね……」


「実は露出魔だったりしてな」


「可能性はあるわね」


 すんごい被害妄想受けてるんだけど……。


 前を見ると、弥夕ちゃんが巨乳を包む黒い色に染めたブラとショーツ姿になった。


 みんなが僕の身体に注目している間にしっかり目に焼き付けておこう。


「大晴って、本当にいい身体しているわね」


「服越しだと分からないが、結構引き締まってるよなー」

 

「そう?」


 まぁ腹筋も割れかかってるし、身なりを気にしない貞操逆転の男たちと比べればいい方かもしれない。


「弥夕は……相変わらずでかいね〜」


「Gカップだっけ? 半分分けてくれよ」


「ちょっ、美奈先輩、そんなに雑にぽんぽん叩かないでくださいよ」


 下から押し上げるようにポンポン、いやボンボン叩く美奈ちゃん。

 ブラを付けているのにも関わらず、双丘は激しく動いていた。


 釘付けになっていると、弥夕ちゃんと視線が合う。


「あんまりじろじろ見ないでくださいよ、ヘンタイ先輩」


 口元が笑ってんぞ、Gカップ。


「じゃあ次行くわよ」


「えっ、このままなんですか!?」


「ええ。服を着たかったら、王様になることね」


 と、鹿波ちゃんが割り箸を回していく。


「「「「「王様だーれだ!」」」」」」


「私ね。じゃあ5番が大晴を好きになった理由を話す」


「また私ですか……」


 頬を赤らめた弥夕ちゃんがおずおずと手を挙げた。


「うぅ、下着で好きになった理由説明するとか、なんの罰ゲームですか……」


「王様の命令は絶対。さ、話してもらおうかしら」


「……分かりましたよ。遡ること3ヶ月前。小さい女の子が持っていた風船が飛んでいって木き引っかかったようなんですよ。そんな時、とある人物が木によじ登っていくのを見て……それが大晴先輩でした」


 あー、あのツインテちゃんのことか。

 あの子可愛いかったよなぁ……。


「木の高さも結構あったし、落ちればそれこそ大怪我。でも先輩は自分の危険を顧みず、一生懸命その子のために取ろうとしてて……。そんな頑張ってる姿に惚れたというか、なんというか……」


「ふーん、案外ピュアな恋の仕方なのね」


「……うぅぅ! つ、次行きますよっ!」


 恥ずかしがった弥夕ちゃんが仕切り、割り箸を回していく。


「「「「「王様だーれだ!」」」」」」


「あら、また私ね」


「ええ!? 鹿波ちゃん運強すぎだよ!」


 こうゆうのって、男が当たってエロい命令をするんじゃないの!?


 何をしようか数秒考えている様子の鹿波ちゃんだったが、いい事を思いついたとばかりにニヤリと頬を緩めた。

 

「王様の命令よ。私以外は——大晴とすること」


「「「っ!?」」」


 みんな顔を真っ赤して、鹿波ちゃんに注目する。


 僕も唖然としていると、小指と小指が交わる。

 隣にいる鹿波ちゃんだ。

 逃げられないよう捕まえておくかのように、ギュッと握ってきた。


「じゃあ最初は、1番からいきましょうか」

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