第42話

 僕は呪怪が春来たちを襲うよりも前に

 春来も呪怪の攻撃から身を守れるように結界を張ったりしていたが、少し怖かったので介入した。

 多分一撃くらいは耐えれたと思うが、これでなんか会心とか急所に当たるとかして守れず二人が死んでしまったら目も当てられない。

 別に美玲も特に文句言ってこないし、これが正解だよね?

「な。なんだ……。その力は……」

 僕が圧倒的な呪力で呪怪を倒したところを見ていた春来が呆然と声を漏らす。

「執事の嗜みだよ?」

 それに対する僕の答えはこれだ。

「そんな嗜みあってたまるか!」

 春来は僕の答えに納得いなかったのか叫ぶ。

「普通は持っているよ?」

「当たり前のことよ」

「え?」

 だがしかし、これくらいは執事の嗜みだ。

 美玲も同意している。

「え?え?そうなの?……いや、俺は現実の執事なんて知らないからな。もしかしたらそうなのか?化け物レベルでみんな強いのか?……俺の一族の意味とは……?」

「いや、違うわよ。私の家もたまには執事に仕事を頼むことはあるけど、その人はそんな化け物なんかじゃなかったわよ。そもそも燕飛服を着ている執事なんか普通はいないわよ。基本的にスーツよ。変に目立っても動きにくいだけじゃない」

「え?そうなん?」

「えぇ。そうよ」

 冷静なった美奈が春来にそう教える。

 え?いや、冷静になるの早すぎない?

 ……いや、まだ冷静にはなっていないか?

 未だに春来に抱きついたままの美奈を見て、まだ冷静になっていないと判断する。変に吹っ切ったのかな?

「それは契約型の執事の話でしょう?隷属的に生涯主人の一族に尽くす終身雇用型の執事の場合は違うわよ。基本的に財閥や政治界の重鎮の一族とかの場合は先祖代々からずっと仕い続けている一族なんかを持っているものよ。呪力を持ち、呪怪や他の呪術者から主人を守れるような強い一族を」

「え?」

 そう。

 お嬢様の言う通り昔ながらの家だと、大抵がそういうお使えの一族を持っている。その一族の人間の血は濃く、基本的に圧倒的に強い。

 まぁ強くなったら他の一族の呪力を持って戦う呪術者なんかに殺されちゃうからね。

 西園寺家はここ近年で急激に発展した新参者なのだが、それなのに旧財閥たちに並び立つ勢いの企業になれたのは僕の一族、蛇蠍の一族のおかげと言っても良いかも知れない。

 当然西園寺家の御当主様方の先見の明こそが一番の要因ではあるが。

「そうなの?」

「えぇ。そうよ。まぁ普通の人には知られていない世界って言うものが存在しているのよ」

「へ、へぇー。そうなんだ」

「驚きだぜ……。ところでよ。美奈はいつまで俺に抱きついているんだ?」

「え、あ!ごめんなさい」

 美奈が顔を赤くして急いで春来から離れた。

 おや?

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