第38話

「やっと二人になれた。んー!瑠夏の匂い……いい……」

 ジェットコースターに並びに行こうとした時、いきなり後ろから美玲に抱きつきられる。

 そんな美玲の手にはチュロスが。

 え?いつの間に?

 チュロスなら遊園地内で売っているけど、買っているところを見ていないからな。

 元々家から持ってきていたのかな?

 というか、元々糖分持っているならみんなの前でそれを食べて優しくて素直で可愛い姿を見せてあげてほしい。

「ねぇ。そんなに抱きつかれていた歩けないんだけど」

「別に歩く必要はないじゃない。このまま私とぎゅーっとしてよ?」

「え?ジェットコースターは?」

「あんなの別にどうでもいいわ」

 ……え?

 あんなに乗ったのに?

 春来をぶっ潰すくらいに乗ったのに?

「じゃあもうジェットコースターに乗らないの?」

「えぇ」

 えぇー。

 なんのために別行動をとったのだろうか?

「このままぎゅーっとしているのもいいのだけどせっかく遊園地に来たのだから乗り物にでも乗ろ!」

「うん。いいよ。何に乗る?」

「そーね。瑠夏は何が良い?」

「僕はなんでもいいよ。美玲に合わせるよ」

「わかった。んーっとじゃあねぇ。コーヒーカップに乗ろ!」

「わかった」

 僕と美玲はコーヒーカップに向かった。

 


「きゃー!回る!回る!もっと!」

「了解」

 僕は二人で乗ったコーヒーカップを限界まで回す。

 それに対し、美玲は楽しそうな笑い声を上げる。

 僕達が乗ったコーヒーカップはずっと回り続けていた。

 

「瑠夏ー!見えてるー?」

「はい。ばっちり見れているし、カメラでも撮れてるよ」

「ふへへ」

 僕はメリーゴランドに乗って手をふっている美玲の姿をカメラに収める。

 後で御当主様に動画のデータを送ろう。

 

「瑠夏!ちゃんと狙ってる?最高得点狙うわよ!」

「うん。任せてよ。射撃で僕がミスるわけがないから」

 僕は特殊なおもちゃの銃を構え、動き回る的の中央をきれいに撃ち抜いた。

 僕達がやっているのは動く乗り物に乗って動く的に向かって銃を打つアトラクション。

 僕たちはぶっちぎりの点数を叩き出した。

 

「結構高いわね!これ!」

「あまり身を乗り出さないで!心配だから!」

「もう!心配性なんだか!

 バイキングで、精一杯手を高く上げて全力で身を乗り出している美玲が心配で気が気じゃなかった。

 この乗り物本当に安全だよね?結構隙間あるよ?


「はー!楽しかったわね」

 僕達はかなりの種類のアトラクションを堪能した。

 楽しかった。

「たまにはいいわね。こういうのも!」

「えぇ。また来ましょうね」

「えぇ!約束ね!じゃあそろそろあの二人の元に向かお!」

「うん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る