第24話 うん、気のせい
ちょっと、瀬渡一人解放するのどんだけ大変なんだよ!
でも、仕方ねぇか。
「……分かりました。責任を持ってこの俺が、侮蔑兵器を一掃してみせましょう」
「本当か!?」
俺の返事に組長だけでなく、周りの人々が一斉にざわついた。
「俺が嘘をついてると思うならいつも通り、アレをやってみたらどうです?」
「……ふっ」
鼻で笑った海斗さんは、拳銃を取り出す。そして俺に向けてドンッと一発。
気づくと、俺の後ろにいた下っ端が死んでいた。俺をすり抜けた銃弾が当たったのだろう。
海斗さんはそれを見て、満足げな表情を浮かべた。
「よし、本当のようだな、全く! じゃあ、今回も化け物を信じるとしよう!」
彼は拳銃をしまうと、そう言ってニカっと笑顔を見せて手を差し出してきた。
俺はその手を強く握る。
「今回は、俺もあなたを信じさせて頂きますよ!」
感動の握手シーン! ……なわけないよな。後ろで一人死んでるし。
この海斗さんは俺の能力を知る珍しい人間。以前、曇神組がちょっとした戦争をする際にとある依頼を受け、銃弾が飛び交う現場にいる時に不覚にもバレてしまったのだ。
これが、監視カメラに俺のビックリ映像が映っていても大丈夫だという確信の理由である。
まぁそんなわけで何故か海斗さんの中では、銃弾を撃っても俺が死ななかったら俺を信じるという変な慣習のようなものができてしまっている。
と、ここでとんでもないことに気づいてしまった。
俺はそれをおそろおそる口に出す。
「あの……すいません。俺がお願いした女、侮蔑兵器関連の店で働いてたから機村さん側の人間かもしれません……」
と言っても下っ端の瀬渡は自分の意思で機村さん側についたわけではないだろうが、それでも機村さん側であることに変わりはない。
つまり今は海斗さんの所轄外なんじゃ、と思ったのだ。
だがそんなことは全く気に様子はなく、海斗さんは明るく応じてくれた。
「お前、舐めてもらっちゃ困る。俺はこれでも組長なんだ。そんな細かいことはどうにでもしてやる!」
周りを見ると、他の曇神組の皆さんも明るく微笑んでくれている……さっき死んだ人以外は。
要するに俺は「機村さんたちの侮蔑兵器の一掃」、海斗さんは「機村さんに瀬渡の脱退を伝える」。これで取引がなされたわけだ。
しかし海斗さんはまだ機村さんと話ができる状態じゃないので、先に行動するのは俺だろう。
……まぁよく考えたら、海斗さんの目的は元から機村と話すことなわけだし、彼にとって瀬渡のことを機村さんに伝えるのは本当についでみたいなものだ。俺、完全に巻き込まれたな。曇神組の内部抗争に。
部屋に置かれている時計を見ると、もう四時半だった。もうすぐ花火が来るだろう。瀬渡に一応言っているとはいえ、俺も早く帰らないとな。
「では、俺はここで失礼させていただきます!」
「ああ!」
そして俺は海斗さんのイイ声に対して深めに頭を下げると、部屋を立ち去り、玄関へ向かった。
歩いている途中、やっぱり死体っぽいものや怪しいな粉っぽいを見かけたが気のせいだろう。うん、気のせい。
今日は話が白熱して、気づいたら花火みたいな喋り方じゃなくなってたな〜。
そんなことを思いながら、俺は曇神組のアジトを後にして家へ急いだ。
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