043:緑と茶のブロック

 その後のこと……三人娘のことは森下社長、そして三沢さんに任せればどうにかなりそうだ。気配に悪意は全く感じられなかったし、あの伝わってきた実力は、正直、俺なんてまだまだだな……と反省するレベルだったのだから。


 なので……問題は自分か。正直、今後相手にするのが昨日の様なアレな相手なら良い。でも、拳銃などを始めとした、飛び道具を中心に罠や搦め手でやられてしまうと、さすがにじり貧になってくるのは想像に難くない。


 もしも、ヤツラのうち数人が昨日のことを告白したとして……最初はいろいろと信じられないだろうが……まずは調査に入るだろう。


 名前がバレるとしたら、まずは松山さんか。えっとあのストーカー男の岡田と裁判で争っているということは実名や住所などが公的な資料として、ある程度の関係者に開示されてしまっていると思った方が良いはずだ。

 そこから……会社……交友関係……で、こないだの猟銃事件。捜査関係者が個人情報をペラペラと喋ることはないと思うが……様々なルートから漏れ出すのも時間の問題だろう。


 俺に気付く。そこに至るまで……そうだな。最初から本気なら一日仕事かもだけど、今回は三~四日。その後、直接俺にアプローチをかけてくる、うちの家に訪ねてくる様な事態になりそうなのは……今週末くらいかな。


 つまり、今週末までに……もう少し自分を強くして、できればやれることを増やしてしまいたい。

 

 会社業務で現在進行中なのは、森下社長から提案された新規飲食案件くらいだ。プロジェクトとしてかなり規模が大きいので、準備期間もかなり取られている。

 そんな中俺は、白い部屋効果で作成した書類のおかげで、各部署の提案を待っている状態だ。というかアレを使えば誰でもそうなるよな。うん。


「……とはいえ……変に有給を取って家から出ないのも……おかしいか。会社は普通に行こう」


 そもそも、帰宅後、通常のアフター5から行動したところで、時間が止まっているのだから問題無いのだ。


「シロ。転送」


「はい、なのよぅ」


 と、なんとなくな感じで周回を始めてから気がついた。


「そうか……問題は……食糧か」


 個人的強化合宿を開始して気がついたのだが、この計画を実行するにあたっての問題点は「ダンジョン攻略中での食糧にあることに気がついた。

 毎日……1カ月間篭もるとして……いや、ここへ来たらもう、3カ月でもいいかもしれない。毎日三カ月篭もるとすると、当然一日で三カ月分の食糧が必要となるのだ。

 肉は……「狼の肉」でどうにかなる。それこそ、グレーウルフリーダーを倒すと……5キロくらいの肉の塊が手に入るのだ。ランダムの様なので、出現しないこともあるのだが、大体、6~7割程度の確率で手に入っている。正直、既にダンジョンのワンルームの冷蔵庫も、自宅の冷蔵庫、冷凍庫もパンパンになっている。最近は持ち帰らない事もある位だ。


 かなり食べている。毎食食べている。でも無くならない。こういうとき、自分が何年でも同じ食事が出来る体質で良かったと思う。


 朝、スープとパン、ちょっとの野菜。夜にスープとパン、肉、野菜。これで十分だ。カレーでも良い。毎日カレー。問題無し。


 ああでも、そういえば、会社帰りに安売りのフルーツを買って帰ってそれなりに食べてたな。これも、買い置きが結構難しいのは確かだ。


 ……と。ここまで考えて気がついた。


「シロ、シロ。あのさ、ダンジョンって森林エリアとか、果樹園エリアとか、草原エリアとか作れないの?」


「作れるのよぅ」


「! やっぱり!」


 ダンジョンという名前に引っ張られて、俺の大好物な石造りの地下迷宮的なモノしか考えられていなかったが……小説なんかで有名なのは、大自然に溢れる要素で構成されたフロアに挑むタイプのダンジョンだ。


「……このブロックの色……タイルの色か!」


 言い訳をすると最初に買ったセットには、草原の様な黄緑色のブロックやパーツ、空色のタイル。森林を構築するような、緑、茶のブロック、パーツ、果実のパーツなんてモノは存在しなかった。なので気付かなかったのだ。


 とりあえず、それっぽいパーツを適当に購入した。DP使ったの久々だ。


「この樹木パーツ……に果実っぽいパーツをくっつけた……果樹を森に配置すれば、実が採れる?」


「採れるのよぅ。でも、魔物がいないとDPが稼げないから失うばかりなのよぅ」


 そりゃそうだよな。


「薬草なんかの素材系、食用できる草が欲しい場合は?」


「それは……」


 あ。また読み込んだ。


「泉と草を森に設定するとその周辺には様々な草が発生するのよぅ。発生する草はランダムなので、どんな素材が手に入るかは実際に行ってみないと判らないのよぅ」


「……えっと、泉のそばに、運良く薬草が生えたとするじゃない? それは……もう一度行っても同じ薬草が手に入る?」


「んー判らないのよぅ」


 要確認か。というか、これが上手く行けば……ダンジョンに行くたんびに、様々な果実や草が手に入る。ということで、まずは、もの凄く小さい森? 林? を作って果樹をいくつかと、泉を組み込んだ。


「えっと。階層はレベル分作れるんだよな……シロ、これは二階層に登録して」


「はいなのよぅ」


 

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