011:ダンジョンポイント

 ゴブリンを斬り刻むという、生理的に無理のある斬新なVRゲームみたいなバトルをして即、ここに強制的に戻された。そしてレベルアップ。


 10分程度の時間しか経過していないハズだが、凝縮感がすごい。巻き込まれ系のよくある展開だとしても……ものすごく慌ただしい。身体が保たん。こちとら33歳。オッサンの仲間入りしたゲーム大好き運動不足の不健康体だぞ?


「で? 何が出来るの? の前に確認だ。シロ、さっき俺が跳ばされて、ゴブリンと戦ったのは「俺がロゴブロックで作ったダンジョン」で良いんだよな?」

「そうなのよぅ。マスターの創った、しょぼくれダンジョンなのよぅ」

「あのさ、シロ。俺がボス部屋、それこそレッドドラゴンを配置した部屋を創ってたら?」

「死んだのよぅ。一撃ワンパンで殺されたのよぅ」


 ……ダメじゃねーか。


「シロさんや。お前は俺を殺しに来たのかな?」

「そんなことないのよぅ。逆なのよぅ。もしもマスターがあのおもちゃ屋さんに入らなかったら、マスターは死んでたのよぅ。木っ端微塵だったのよぅ」

「そこんとこ詳しく」

「んーと。因果律が変更されて、世界が交わる場合の可能性が変革されたのよぅ。なのでマスターは出会うべくして迷宮に出会ったのよぅ。これはもう、大いなる意志なのでどうにもならないのよぅ」


 良く判らん……なんかスゲー宗教臭い。あ。いや。大いなる意志なんて出てくる話だからそりゃそうか。それにしても……なんだ、意志って。神様? このシステムがそういうレベルの物ってことか。


「そりゃそうだよなぁ……。大いなる意志っていうか、神様でもなけりゃ、種も仕掛けもない手品であの扉を出したり、こんな場所を生み出したりすることはできないよなぁ……」

「なのよぅ。なので、シャキシャキ先へ進むのよぅ」


 詳細解説は……求めようもないのか。


「究極のダンジョンを作ると、褒められるのよぅ。だからガンバルのよぅ」


 誰にダヨ……意志に? まあ、問題というか、大事なのは、目の前に迷宮創造主……なんだっけな?


「ってお前を作ったのは神じゃ無いのか? なんだ、大いなる意志って。さっき判らないと言ったじゃ無いか」

「それは知らないし判らないのよぅ。意志の事は、迷宮創造主マスターのレベルが上がって、話をしているうちに新しくセットされたのよぅ」

「セット?」

迷宮創造主マスターが成長したり、迷宮が成長して、シロと会話をすると新しいシステムとか新しい知識とかが解放されるのよぅ」


 フラグ立てないと知識を漏らしてくれないということか……。


「シロは迷宮なんだっけ?」

「迷宮創造主補助機構附属多方向対応支援妖精最終世代なのよぅ。迷宮を創り出し、発展させていく迷宮創造主マスターを助けるのがお仕事なのよぅ」

「その文字面から推理しろってか……」


 まあ、海外会社相手の多国語の面妖な翻訳契約書よりはマシか。漢字の字面から想像できるし。えーと。とりあえず、根本的な部分。扉を開けたことによる始まった一連の不可思議現象の根幹……はいったん棚上げだ。神様案件らしいからな。シロの言う事が正しい前提だが、嘘をついている風にも見えないし。


 ということで次だ次。俺は……迷宮創造主マスターとなってしまったらしい。ロゴブロックを楽しんでいただけなのに。そのせいで自宅の一室、元客間の中央にデカい扉が出現してしまった。


 扉の中に入ると、この制御室? シロは迷宮総操作室とか言ってたか。


 ここで……文字通り、迷宮を創造して操作しないとなのか? というか、ご褒美で褒められるのが目的になるのか? 


「好奇心を満たすために迷宮を創る? うーん。謎が多すぎるな。シロ。俺が出来る……いや、やった方が良いのはブロックで迷宮を創っていく事だけなのか?」

「そうなのよぅ。でもレベルも上げないと行き詰まるのよぅ」

「何か使命は? こういう流れで、そういうのが無いのおかしくね?」

「ん~それは知らないのよぅ」

「それこそ、俺が迷宮を創らなければ何か不具合が発生するのか?」

「知らないのよぅ」


 大いなる意志……世界とか因果律とか言ってたから、迷宮を創らないデメリットもあると思うんだけどな……。まあ、少なくとも今は不具合は無いらしい。直接ダンジョンで敵と戦って命の危険に晒されるのは少し勘弁だけど~ダンジョンを創って、そこを自分の足で歩けるっていうのはスゲー魅力的だよな……。

 自分の創ったブロック製の箱庭(ダンジョン)を自分の足で歩けるんだもんな。バーチャル何ちゃらみたいな感じだけど……戦闘の手応えなんかは本物だったしな。


「そうか……シロ、今のダンジョンを造り直すこととかできる?」

「できるのよぅ。ダンジョンポイントの消費も少ないのよぅ」

「何をするにもダンジョンポイントが必要なのな」

「そうなのよぅ。ブロックを買うのにも必要なのよぅ」

「え? マジデ? ブロック買えるの?」

「買えるのよぅ。小さいパーツから大きいモンスターまで買えるのよぅ」

「お高いんでしょう?」

「お高いのよぅ。さっきの迷宮創造主マスターが倒したの全部合わせて、現在のDPは10Pなのよぅ」

「10P……ゴブリン三匹でか。ブロックのパーツってポイントいくつ?」

「色々アルのよぅ。1Pからなのよぅ」

「……1Pか。うーんうーん。お高いのかどうか判らないな。リストって無いの?」

「あるのよぅ」


 デスクに備え付けられているアームに支えられているモニター。その一つが光る。シロがその前に移動して、操作し始めた。タブレットの様にタッチパネルになっている様だ。


「はいですなのよぅ」


 シロが表示させたリストには……よくあるショップの商品リストの様に各種アイテムが並んでいる。確かに、ブロックのパーツの一番安いヤツが1Pだ。ちょっと大きいので2P。大きい板みたいなパーツが5P……なんて感じでリストが並んでいる。種類は少ないな。

 あ。モンスターもあった。ゴブリンが……70P~か。ああ、装備によって違うのか。というか、職業が違うのか。


「というか、ダンジョンでモンスターを倒すともらえるのがこのP、ダンジョンポイントってことだよな?」

「そうなのよぅ。世の中の全てはポイント次第なのよぅ」

「お前の世界な。そういうシステムか」


 自分が命がけでゲットした10Pが小さいブロック10個分だと思うとどことなく悲しい気持ちが溢れてくるが……。まあでも、戦闘の素人がただただ良い剣を振り回していただけで得たと思えば、大した事ないのか。



 

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