124.混沌に踊れ
裁が気味の悪さに堪え兼ねたように吐き捨てた。
「世迷言を」
辺りの瓦礫が裁の
惰性じゃない。これが確かに、最も劇場支配人の悪魔を殺せる可能性を持つ攻撃だ。刀身から噴き出す黒の激流が、腐肉の海を、ゴーレムを、劇場支配人の悪魔を覆ったのを辛うじて捉えたが最後、私達すら飲み込んで暴れ回る。
やっと黒が失せた頃には地に投げ捨てられていて起き上がった。雑巾でも絞ったように全身から痛みと血が溢れる。頭からペンキを被ったように血が滴るのやめない中、痛みに歯を食い縛りながら立ち上がって辺りを見た。
カクタスグリーンに潰された瓦礫の平原が広がっている。反射的に、『一つ頭のケルベロス』を構え直して叫んだ。
「裁!」
肩で息をしている事に気付かないまま叫んだので、噎せ返りそうになる。
背後へ急激に気配が迫った。振り向き様に剣を薙ぐ。火花と共に弾き返されたのは、ビルを支えていたのだろう無数の鉄骨だった。
宙を躍る鉄骨の向こうへ目を凝らすと、地中から幾本も伸びる腐肉の触手が、瓦礫をひっくり返しては鉄骨を掴もうとしていた。
更にその奥では相も変わらず健在な劇場支配人の悪魔が、右手をスラックスのポケットに入れて立っている。項垂れていて顔は見えない。
……だから、直撃しているのにどうして死なない!
苛立ちに柄を握る手に力が籠る。瓦礫を蹴り飛ばし、劇場支配人の悪魔へ駆け出した。
弾かれ辺りで無茶苦茶な軌道を描いていた鉄骨が捻じれ、槍のような姿に変わると私を貫こうと迫り来る。劇場支配人の悪魔が持つ高位の
尾で地面を殴り上へ跳んだ。スターターピストルのような小気味いい音と共に槍を見下ろしながら抜き去って、劇場支配人の悪魔へ落下しながら剣を振り上げる。墨のように噴き出す魔術を纏う刃を、奴の俯いたままの脳天へ打ち込んだ。
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