99.天才にニセモノはつきもの
……
いや、あの人間から乖離した異常な笑みで、事実だろうと分かっている。だが混乱を止められない。それでも呆けている時間は無いと、理解しやすい部分から手を着ける。
……まず、不死の魔法を使える魔法使いは存在しない。魔法使いが己の願望と、それを叶える為に寿命を削って交わした悪魔との取引に苦しむ様を見る事を、悪魔は娯楽とする為に魔法使いを生み出すから。〝館〟で裁に殺された青砥部長がここに現れる方法は、不死の魔法しか無い。つまり彼とは矢張り、魔法使いでは無く悪魔。今彼を中心に街を襲っている怪現象も、彼という悪魔が持つ魔法だと言えば説明が付く。魔法使いへ貸し出せる程幾つもの魔法を所持しているのも悪魔だ。美術館で見た複数の魔法も、彼が持つ魔法だと考えれば納得出来る。
「誰が娘やボケ」
裁は心のままに嫌悪を吐いた。
「悪魔
私は驚いて裁に尋ねる。
「あの彫刻、お前が作ったんじゃなかったのか?」
「
鉄村に縛られているくせに器用に尾を踏まれた。
「いぎゃあ!?」
八つ当たりだろ!
裁は飛び上がる私へ、顎で瓶を指す。
「あれの姿の意味は考えんでええ。悪魔の魔法が意味分からん形してんのは、人間とは違う感性持ってる事からの異国情緒みたいなもんに過ぎんから。肝心なんは内容やけどまあ……。兎はあの性悪に殺されたんやろうし他の魔術師も狩人も動く気配が無い感じ、魅了を撒くもんやろ。今や正体はあの性悪みたいやったけど、美術館の魔法使いを捕まえる為に一定数の魔術師は、あたしらに寄越さんと別行動させとったんやろ? その指揮は兎の役目やったんとちゃうか」
裁は鉄村へ首を回す。
確かに『責め苦のプレゼンター』が効かなくなった以上、
「……ああそうだよ。お前がこっちにいるのに離れた位置にいた
「その兎の魔術師もお前ぐらい利口なら、用も無いのに殺してやらずに済んだんだけどなあ」
青砥部長は嘆息した。
「全く嘆かわしい。兎にされて脳まで小さくされちまったか。無価値な殺し程虚しいものは無いぜ……」
裁はその不快感から、だらだらと青砥部長へ頭を戻す。
「……今朝あんたが街に作った、四つの彫刻の意図は何やねん」
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