71.※ルサンチマン!!
鉄村はまだ打ちのめされていた。やっと浅く息を吸うと、言葉にする。
「……それを果たせば、お前はそうやって、溜め込まずに済むのか」
反応に待ち
「多少は気晴らしになるかもな。お前ら街の魔術師が私を恐れて、こんなもんを下げさせたりしてるんだから。本当にいいご身分だ」
左手を胸元に伸ばすと、ドッグタグネックレスを摘み上げてみせる。すぐに捨てるように手放すと、チェーンが大仰に音を立てた。
その余韻を聞きながら、ゆったりと左手を下ろす。
「この街の魔術師は、特に懐古主義であるが故に強大だ。魔術の秘匿性の維持を強く重んじ、そこから生まれた気質は排他的で、内部にも外部にも酷薄を強いる。だが、私の父のような流れの魔術師なんて胡散臭い奴を受け入れられたのも、その厳格に律された気質の下に育って来た、上質な魔術あってこそだった。束になって魔法使いに挑むのが魔術師の基本でありながら組織に属さずフラフラしてる奴なんて、腕前以前に魔術師として相応しくない。そんな奴でも組織としてコントロール出来ると判断に至ったのは、このドッグタグのような管理能力に長けた魔術の使い手を多く抱えてるからだ。悪魔
黙って聞いていると言うより、言葉を発せなくなっていた鉄村は、私が話し終えると義務のように口を開いた。
その暗い顔は表情筋が切り落とされたように固く、ただ落ち込む事も許されないような罪悪感と緊張を滲ませて問いかけてくる。
「……街が危機に陥ってる今を妨害すれば、手っ取り早く魔術師達に復讐出来るってか?」
一語一語がそれは慎重に選ばれたと分かる、掠れた声だった。
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