第九話 粋なはからい

(誰だこの女の子…?)

急に入ってくる史上、前世も含めてこんなびっくりしたことは初めてだ。

「あんた今日学校休んだみたいね!あたしのところに連絡が来たのよ??

あんたの携帯に何度も連絡取ったのに全然出ないし!!」

とても清楚で美しい見た目とは裏腹に、とても勢いがすごい女性だが。

どうやら俺のことを知っているらしい。

(ならなおさら、ここで変なこと言って怪しまれる訳にはいかないな。よし。)


発動。『omniscience G』


とりあえず、彼女に関する基本的な情報を調べた。

彼女の名前は戸来明桜へらいめいら

年齢は19歳のO型。

近所に住む大学生で、

幼い頃からずっと姉のように面倒を見てくれているらしい。

(なるほど。)

どうやら神が、現世に馴染みやすいように設定してくれたようだ。

調べることに集中していると、彼女が突然、

「ねぇ!聞いてんの!?」


「あ、ごめんなさい。」

(やばい、普通にこの状況のこと忘れてた。)

とりあえず今はこの場をやり過ごすしかない。

「ちょっと朝頭が痛くて、携帯も見れなくてさ。

さっきまで寝てたんだよね。」

とりあえずとっさ嘘でしのいだ。

「え!?ちょっと大丈夫なの!?無理しちゃだめよ!!ご飯食べた!?てか食べれる!?おかゆとか作るから待ってて!!」

「だ、大丈夫だから!」

(す、すごい。)

優しすぎるというか世話焼きというかお節介というか。

どちらにせよしのげたようで一安心した。

「でも連絡ぐらい入れなさい!!

今日色んなところで落雷による火事があったみたいだったから心配したんだからね!!」


(う…。)

割と痛いところをついてくる。


その後彼女はおかゆを作ってくれて、俺はどうやら力を使ったせいかお腹が満たされたからか、寝てしまったようで、気付いた時にはいなかった。

(嵐のような人だな。)


ふとテーブルの上にある何かに気づく。

どうやら書き置きを残していったようだ。

『あると

あんまり無理しちゃだめだよ?

私にとってあるとは、唯一の家族のような存在なんだから。何かあったらちゃんと報連相。

って会社じゃあるまいしね笑

とにかく心配だから、大変なら明日も休んでいいけど、ちゃんとするんだよ?明桜より』

少し心が暖かくなる気がした。


(こんないい幼馴染がいるなんて、神も粋なはからいをしてくれるな。)


そして、もう一度眠りについた。










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