第174話 蟲のダンジョン 中層①
それから安全地帯で”腐蝕”スキルを実験した。
効果は体験した通り、物質的なものすべてを腐らせ溶かすというものだ。
自身にも付与することができるが、付与しすぎると自分も腐って溶けるらしい。
『…自身への付与は辞めておこう。』
転移門を開通していわゆるセーブポイントを設置した後、11層に登った。
そこは洞窟の中のように狭い道が続いており、所々で岩が溶かされたような跡がある。
『ここの層の魔物は酸を使うのか…?』
岩がドロドロになるということは、かなりの強酸だ。
掠るだけでも身体が溶けるだろう…
『できれば対面は避けたいな…あ、そうだ。さっき思いついた戦法使ってみるか。』
俺は”レーダー”でこの層に俺以外の人族や魔族がいないことを確認し、そして毒魔法”デッドリーポイズンエリア”を11層全体に広がるように行使した。
そう、広範囲毒殺だ。
これならMPを結構消費するが、少し待つだけで魔物を一掃できる。
『我ながらえげつない戦法を思いついてしまった…』
待つこと数分
ステータスを眺めていると、経験値がどんどん流れ込んできた。
やっと毒が回って死んだのだろう。
『…よし、じゃあ進むか。』
少し直進すると、開けた場所に出た。
そこには蟻の魔物の死体がゴロゴロと転がっていた。
『なるほどな…あの強酸は蟻酸だったのか。』
便利な魔物スキルだったら”略奪”しようと思ったが、強酸を吐くという人間離れしたものだったので遠慮しておいた。
ということは、11層は巨大な蟻の巣状の場所ということだ。
そう考えると、穴を掘っているかもしれないので罠を警戒して進んだ方がよさそうだ。
俺は常に”レーダー”と”罠探知”を行使して注意しながら進んだ。
予想通り、道の至る所に穴が掘られて道が複雑化していた。
『…”マッピング”面倒くさいけど頑張るか。』
そして数十分移動し続け、思ったことがある。
『…宝箱が全然見つからない。』
おそらく11層の大方は”マッピング”し終えているだろう。
それにも関わらず、まだ宝箱を一つも見かけていない。
『どういうことだ…?』
まさか蟻酸で宝ごと溶かされてしまったのか…?
いや、もしそうだとしてもダンジョン型魔物が再設置するはずだ。
ではそもそもこの層には宝箱が無いのか…?
いや、そうしたら侵入する冒険者の数が減ってダンジョン型魔物が損をする羽目になる。
『…っ!!まさか…穴の中にあるのか…?』
まだ”マッピング”していないところといえば12層に続く階段までの数十メートルと縦穴、つまり落とし穴の中だけだ。
『…一度確認してみるか。』
俺は風属性魔法を行使して宙に浮き、すぐ後ろにあった落とし穴の中を光属性魔法”ライト”で照らしながらゆっくりと降りていった。
『ん…?底に何かあるな。』
”ライト”の光球を底の方に移動してみると、予想通り宝箱があった。
早速宝箱を開けるべく”罠探知”を行使すると、”毒魔法”の時と同じくらい強い反応があった。
M おっ…!!これは期待できるな!!』
普通では見つからないような場所に設置されており、しかも強い罠が仕掛けられている…
相当レアな代物に違いない!
俺は”罠解除”で罠を取り外し、蓋を開けた。
宝箱の中身は、”アジリティーリングS”というものだった。
効果は敏捷性60%増加、攻撃力10%低下だった。
『おぉ…!!当たりだ!!!』
この〇〇%増減は元の値に作用するようで、また”ストレングスリング”の効果と同時に装備しても効果を発揮できるようだ。
…ということは最大で十個同時に装備できるということだ。
『ワンチャン足の指にもつけて二十個行けるか…?』
”ストレングスリング”も”アジリティーリング”もデザインはシンプルなので、たくさん付けていても悪趣味には見られないだろう。
…おそらく。
『ま、まあ気を取り直して他の宝箱も探しますか!!』
それから合計3つの宝箱を見つけたが、どれも”〇〇のリング”系だった。
こちらは予想を外してしまった。
『おかしいな…どれも見つかりにくい場所に設置されてたけど…』
考えてもわからなさそうなので、素直に攻略本をカンニングしよう。
「本来は道の端や行き止まりの広場に設置される宝箱だが、この層では縦穴の底に移動されていることが多い。
これはダンジョンが意図的に設置したのではなく、設置された宝箱を魔物が移動したことで起きている事象である。
よって、特別な宝箱というわけではないので中身は他のものと同じである。」
とのことだ。
つまり”アジリティーリング”を見つけたのは偶然だったらしい。
『紛らわしいわ!!ダンジョン側も一回撤去して見つかりやすい場所に再設置してくれればいいのに…!!』
文句を言ってもどうしようもないので、先に進もう。
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