第140話 冒険者ギルド
『おぉ…おぉぉぉぉ!!!』
そこは酒場も兼ねているようで、武装した冒険者達がワイワイ酒を飲んでいた。
右の大きな掲示板にクエストがずらりと貼られており、奥には10個のカウンターと受付があった。
『ファンタジーだ!!この雰囲気…悪くないな!!』
胸を躍らせながら、4人の後をついて中央の受付へ向かった。
そこにはほぼ全裸のマッチョな男で、顔に化粧をした人が立っていた。
『…ん?マッチョで化粧…?』
「あら、クレアちゃん!!剣闘祭ぶりね~!!」
「久しぶりだなサリーちゃん!!」
「んも~!!可愛いわね~!!」
容姿と口調から察するに、どうやらこの受付はいわゆるオネエらしい。
ファンタジー世界の冒険者ギルドといえば可愛い受付嬢が定番なので、期待していたが仕方ない。
前世で仲が良かった会社の上司が、
「人生が辛くなったらオネエバーに行くといい。彼女達は俺たちより何倍もつらい人生を送ってきてるからな。」
と言っていたものだ。
それはさておき、どういった経緯でクレアとサリーちゃん(?)が知り合ったのか非常に気になる。
「アイリスちゃんにスーちゃんにイザベルちゃんに…あらあら~!!アルフレッド君じゃな~い!!」
「あっ、どうも…」
この人との面識は全くないのだが…
おそらく1年次の剣闘祭で俺のことを知ったのだろう。
「やっぱり良い男だわ~!!あ、アタシはサリーよ!!サリーちゃんって呼んでね~!!」
「はぁ…」
「ちなみにサリーちゃんはコルセア支部のギルマスなのです!!」
「えっ!?そうだったのか…」
確かに良い人そうで、周りからの人気も高いように見える。
適任であることには間違い無いだろう。
見た目は強そうだが、実際のところどうなのか気になって“鑑定“してみた。
すると、Lv.100を超えていてアランほどではないがなかなかに高いステータス値だった。
「今日は仲間と冒険者登録に来たぞ!!」
「あらっ!!バッジを提出してちょうだ〜い!!」
クレアに続く形でバッジを手渡した。
渡すときに何やらいやらしい手つきで手を触られたが、我慢した。
「…うん?あらあら〜!!アルフレッド君は主席なのね〜!!」
「あ、ああ。」
「んも~釣れないわね~!!」
「あははは…」
「規定通りアルフレッド君はDランク、クレアちゃん達はEランクでいいのよね?」
「おう!!」
「じゃあちょっと痛いけど、このカードに血を一滴垂らしてちょうだ~い!!」
親指を針で刺し、少し分厚い鉄板のようなカードに血を垂らした。
すると、自動でカードに名前やステータス値が記された。
一種の魔道具なのだろうか?
「これで登録完了よ~!!」
『…よし、ちゃんと“偽装“できてる!!』
新入り冒険者がLv.217と超高レベルで、さらにHPやTPが膨大だと悪目立ちしてしまう。
そう考え、あらかじめアランを基準にLvは+10の122、ステータス値はそれぞれ+10に偽装工作をしておいたのだ。
「ギルドの説明はいるかしら~?」
「頼む。」
「分かったわ~!!まず右を見てちょうだ~い!!」
「掲示板…があるのです?」
「そうよ~!!掲示板には通常クエストと緊急クエスト、常設クエストが貼られているわ~!!」
掲示板を見てみると、ランクごとに分けて貼られていた。
ランクも種類もごちゃごちゃで見にくいものを予想していたが、見やすくて助かる。
「確か通常クエストは誰かが依頼して貼られるもの、緊急クエストはスタンピードなどの緊急時に貼られるもの、常設クエストは数が多いゴブリン退治など常に貼られているものですよね?」
「流石アイリスちゃ~ん!!勤勉ねぇ~!!」
「ありがとうございます。」
「…ん?B~Gランククエストしか貼られてない…?」
「アルフレッド君は目聡いわね~!!ここの周辺にAランク魔物は滅多に出ないのよ~!!」
「なるほど…ありがとう。」
「うふふっ!!いいのよ~!!」
それからもサリーちゃんに詳しくギルドの説明をしてもらった。
大雑把にまとめると、以下の通りである。
1.冒険者ギルドはF~SSSのランク制になっている。
D→CはDランクのクエストを300回、C→BはCランクのクエストを500回、B→AはBランクのクエストを1000回達成した後昇格試験の合格、…(以下略)という構造だ。
2.クエストには有効期限があり、失敗すると違約金を払わなければならない。
ちなみに違約金はクエスト報酬の20%である。
3.クエストは自分の冒険者ランクより1つ上のランクまでしか受けられない。
俺の場合はDランクなので、Cランククエストまで受けられるということだ。
4.重犯罪を犯すとギルドカードが永久凍結される。
重犯罪の分類については説明されなかったが、犯罪を犯す気は毛頭ないので気にしなくていいだろう。
5.ギルドカードは自動的にクエストの受注回数とその成功率が記載される。
成功率が高い冒険者ほどギルドからの信頼が厚くなり、指名依頼や”裏クエスト”の受注ができるとのことだ。
6.ギルドの2階は資料室になっており、そこで周辺の地理情報や近くに生息する魔物の情報を得られる。
師範の教えや冒険者学校の教本で大体頭に入っているが、資料室には必ず赴くことにしよう。
『師範に常に最悪の状況を考えて行動しろって耳に胼胝ができるくらい言われたしな。』
それはさておき、中には冒険者学校の教本には載っていない貴重な情報もいくつかあった。
その最たる例が”裏クエスト”だ。
サリーちゃん曰く、ある時は国家間のトラブルが深刻になる前に陰ながら解決するエージェントとして…
ある時はダンジョン攻略の筆頭冒険者として依頼されるらしい。
詳細は言えないとのことだが、なかなか面白そうだ。
ギルドの説明を聞き、冒険者になった自覚が強まるとともに今後への期待が強まった。
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