第63話 剣闘祭 小休止
剣闘祭1日目が終了し、俺はアランと共に4人と合流した。
「おいアルフレッドーー!!どこ行ってたんだよ!!」
「アランと賭場の前で賭博勝負してた。」
「アルフレッド、アランのようなダメな大人になってはいけませんよ?」
「そうだよ~!!アルフレッドは将来有望なんだから!!」
「ボ、ボクもそう思います!!」
3人が熱い眼差しでこちらを見つめてくる。
しかし俺は何としてでも金を稼ぎたい…!!
「オレはまあ度を越えなけりゃあいいと思うけどな!!」
「クレア…!!」
「ちなみに2人とも、収支はどうだったのですか?」
アイリスが冷たい目でこちらを見てくる。
ここでマイナスだったら一生この目で見られるのだろうが…
「俺は金貨7枚分くらいプラスだな。ただアランは…」
「…金貨2枚と大銀貨8枚のマイナスだ。」
「プラス…?マイナス…?」
「プラスは利益、マイナスは損害だ。」
魔物征伐の報酬としてこの世界にカジノが生まれた際、プラスやマイナス、オッズなどといった地球の言葉がこの異世界にも広がった。
しかし、残念なことにカジノに通う人以外にはあまり広がっていないようだ。
「お~!!すごいね~!!」
「ア、アルフレッド君は賭博の才能もあるのです?」
「それに比べてアランは…情けねぇーな!!アッハッハッハ!!」
「そうですね。ですが、アランのように損害を出してくれる人がいるおかげで賭博が成り立っているのです。ここは優しくしてあげましょう。」
クレアの直球な言い方も心に刺さるが…
アイリス、時に優しさは残酷なものへと変貌することを知っておいた方がいい…
「くっそぉーー!!明日は大儲けしてやるからな!!!小僧、首を洗って待っとけ!!」
そんな捨て台詞を吐くと、アランは走って逃げていった。
「さてと…じゃあオレ達も帰るとするか!」
「そうだな。それにしても、イザベルの試合は圧巻だったな。」
「だよネ~うちもびっくりしたヨ!!」
「そ、そんなこと…っ⁉メリッサさん、びっくりするのでやめて欲しいのです…」
「あはは~ごめんネ!!」
殺気や気配を感じないため、俺もメリッサの接近を感知することができない。
気配察知には自信があったんだが…自信が無くなる。
「…それでメリッサ、何か用か?」
「キミに用があって来たんだヨ~アルフレッドきゅん!」
「きゅんって…悪い4人とも、そういうわけだから先に帰っててくれ。」
「分かりました。」
4人をその場で見送ると、メリッサが興味津々な表情でこちらを見つめてきた。
「今日賭場で大儲けしたアインザス校の学生ってキミのことだよネ?」
「た、多分。」
「ちなみにプラスいくらなのかナ?」
「金貨7枚と大銀貨2枚、小銀貨8枚だ。」
「エッ…⁉そんなに儲けたのカ?」
「あ、ああ。」
そういえばメリッサも剣闘祭で大儲けしてやると意気込んでいたな。
観光したときにメリッサのせいで4人に色々詰問されたから、ここはやり返してやろう。
「そういうメリッサはどうだったんだ?まさかベテランのギャンブラーが素人に負けてるなんてこと…無いよなぁ?」
「うちは…金貨4枚と大銀貨8枚のプラスだヨ!!笑いたきゃ笑うんだナ!!」
ちょっと煽るつもりが、涙目になってしまった。
いじるのは慣れてるがいじられるのには慣れていないのか…
「わ、悪かったよ。」
「へぇ~そう思うなら明日の16試合、賭博勝負を受けるんだナ!!」
「今のウソ泣きかよ…まあ特に予定もないし、受けて立つよ。」
「約束だからナ?賭場の前で待ってるからナ!!」
そう言うと、メリッサは走って宿の方へ帰っていった。
宿で夕食をとるときにどんな顔をして会えばいいのだろうか。
『…まだ夕食まで時間あるし、散策してから帰るか。』
「アルフレッド君~!!」
早速散策を始めようとしたところで、後ろから名前を呼ばれた。
この落ち着いていて透き通ったような女性の声は…!!
「エレナ先輩!!お久しぶりです。」
「久しぶり!やっぱりアルフレッド君も剣闘祭メンバーに選ばれたんだね!!流石だよ!!」
「いえいえ…」
「イザベルさん…だっけ?あの子すごい強いんだね~!!」
「そうですね。イザベルもそうですが、他の3人も夏休み中に立派に育て上げましたから…!!」
「まさかお母さんだったとは…なんてね。アハハハッ!!」
毎朝ランニングの時に顔を合わせていただけあって、冗談を言い合えるくらいには仲良くなった。
これからの剣闘祭に向けて細剣使いはいないので、今度4人に混ざって一緒に練習をしたいものだ。
「ところで、先輩はこの後時間ありますか?」
「宿で夕食の時間が決まってるから、少しならあるよ。」
「俺も同じです。夕食の時間まで一緒に散策しませんか?」
「いいね!!じゃあエスコート頼もうかな?」
「お任せください!!」
それからエレナ先輩とコルセアを歩き回った。
この前メリッサに案内してもらったおかげで、楽しく街並みを見て回ることができた。
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