第43話 魔物征伐 終結

話を終えた後、ベヒモスはダンジョンの横にある山と同化するようにして眠りについた。




「魔物征伐はこれで終わり…なのか?」




ラスボスであった中級悪魔が自滅したため、あっけない終わり方だった。


その上ベヒモスとの対話という超展開が訪れたので、頭が全然追いついていない。




『”魔物探知”には反応がないし…とりあえずアラン達と合流するか。』




ベヒモスが言っていた永い眠りというのは、おそらく俺の人生よりも遥かに長いだろう。


呪いを解く回復薬を探すと約束したが、別に探さなくてもばれないはずだ。




ベヒモスが中級悪魔を喰らわなくても、討伐軍の戦力ならばじきに召喚された魔物を倒して討伐できていたはずだ。


そのため、恩を感じていないので恩知らずと呼ばれるのは筋違いだ。




そんなことを考えながら歩いていると、救援部隊のテントが見えてきた。




「小僧!!無事だったか…!!」




「ああ。」




「ひとまずレイフィールド殿の元へ報告してこい。あの中央にある天幕だ。」




「分かった。」




1度装備に着いた砂埃を払い、中央の天幕に入った。




「アル…!!無事だったか…!!」




「良かった…レイフからベヒモスと対話してると聞いた時は驚いたぞ…!!」




「心配かけてすみません…ジル兄様、レイフ兄様。」




そこには身内しかおらず、皆ソファーに座って楽に話していた。




「坊ちゃま…ご無事で何よりです。」




「師匠…!!お久しぶりです!!」




ふと疑問に思ったことがある。


それは、俺が幼いころからずっと見てきたが…師匠が全然老けていないことだ。


レイフ兄様ほどではないにしてもがっちりした身体は衰えることなく維持され、顔のしわも全然ない。




「…坊ちゃま、私めは良いですが人様の顔をまじまじと見てはいけませんよ。」




「あ、すみません!!懐かしかったもので…」




じっと観察しても謎の原因が全く分からない。


兄様達がペンシルゴン家の七不思議の1つと言っているのも納得だ…




「ところでアル、ベヒモスの件はどうなったんだ?」




「実は…」




俺が”鑑定”を行使して調べた事実をベヒモスが自力で調べたということにすり替え、詳しく説明した。




「ベヒモスはダンジョンの横にある山々と同化して眠りについたので…当面被害は無いかと。」




「なるほど…レイフはどう思う?」




「触らぬ神に祟りなしと言うし…放っておくのが良いと思う。ジルは?」




そのことわざがこの世界にあったとは。


地球を参考に創ったと言っていたし、あってもおかしくはないか。




「俺も同じだよ。ただ、もしかしたら解呪の見返りがあるかもしれないから水面下で回復薬を探してもいいと思う。アルはどうだ?」




「俺は…ジル兄様の意見に賛成です。と言っても、何か物事のついでで良いと思いますが。」




「そうだな…そうしよう。レイフは今まで通り守護騎士の役目をしてくれ。」




「分かった。」




「俺は国交をするときについでに探そう。アルは…そうだな。気ままに旅をしながら探してくれ。」




「分かりました!」




「話は終わりだ。レイフ、俺は屋敷に戻るから後は頼んだ。」




「ああ。」




それからレイフ兄様の指示の元、討伐軍の解散式が執り行われた。


冒険者達はギルドから参加報酬とペンシルゴン家から均等に討伐報酬を与えられ、笑顔で帰っていった。


救援部隊として来た冒険者学校の生徒達は、騎士団の護衛の下馬車で寮へ帰っていった。




俺はと言うと…




「小僧、よく頑張ったな!!これからペンシルゴン家と合同で祝杯を挙げるぞ!!今夜は宴だ!!!」




「あ、ああ…」




解散式の直前から酒を飲み、既に酔ったアランに絡まれてペンシルゴン家の屋敷に連れられていた。


酔ったアランの相手は心底面倒くさいが、もう少し家族と一緒に居たかったので都合がよかった。




「…あ、そうだ。礼拝堂で礼拝してくる!!」




「んあ?じゃあ俺は…レイフィールド殿のところでも行ってくるか!!」




『レイフ兄様、面倒な輩をなすり付けてすみません…』




レイフ兄様に申し訳なく感じながらも、礼拝堂に入った。




「あっ…母上!!」




「アル、おかえり~!!出発前にここでお祈りしてたって聞いたから、来ると思ったわ~!!」




「ただいま帰りました…!!」




久しぶりに抱かれた母の胸はとても温かく、優しいものだった。


それから母上と長い間、楽しく話した。




「…っと、私はそろそろ屋敷に戻るわね。じゃあ…健康に気を付けるのよ。」




「ありがとうございます!!母上もお体に気を付けてお過ごしください。」




「ありがと~!」




父上とも話したいが…祝杯の会場の方にいるから無理そうだ。


後回しにし、俺は女神像に向かって祈りを捧げた。




『アルフレッドさん…よく頑張ってくれましたね。』




「ありがとうございます。神様も…お疲れさまでした。」




『あ、ありがとうございます!!』




「例の件はどうなっていますか?」




『準備万端ですっ!!』




「そうですか…!!では、計画通りに進めるということで。」




『は、はいっ!!ではまた会いましょう!』




「ええ。」




それから世界中の教会に再び神託が下された。


大氾濫を無事乗り越えた報酬として、この世界に新たな娯楽が流布された。




リバーシやトランプ、ルーレットなど…様々だ。


賭け事がみるみるうちに浸透し、色々な街にカジノが建てられるようになったのはまた別のお話。

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