第24話 私闘

初回授業だったこともあり、その後軽いテストを何個か行って終了した。


1、2個は落ちる覚悟をしていたが、全部合格できて良かった。




『今日は4限で終わりだから…寮に着いたら訓練するか。』




そんなことを考えながら歩いていると、寮に向かう途中に男子生徒の集団がいた。




「あ、来ましたぜボス!!」




「あいつか。」




こちらを鋭い眼光で見ている。




『…ん?エレナ先輩をいじめてた4人組か。もう1人の大男は誰だ?ボスって呼ばれてたな…』




俺は警戒しながら彼らに近付いていった。




「おいお前!よくも俺様の部下を可愛がってくれたな…」




ボスと呼ばれている大男が絡んできた。




「…いや、彼らが勝手に逃げていっただけだぞ。」




「後輩の分際で口答えするな!!お前に私闘を申し込む!!」




「断る。」




「なっ…!ここは受ける流れだろうが!!後輩のくせに断ってんじゃねーよ!!」




「いや…俺に受ける義理はないんだが。するだけ時間と労力の無駄だ。」




私闘は学校で認められている決闘とは異なり、あくまで個人間における戦いである。


そのためどれほど血が流れても、学校側は手出しできないのだ。




『負けたら痛いし、勝ったら余計に周りから怖がられるだけだろうからな…俺にメリットがない。』




「…なら取引だ。」




「取引…?」




「そうだ。俺様が勝ったらお前には俺様の奴隷になってもらう!」




「もし俺が勝ったら?」




「お前の言うことを何でも1つ聞いてやろう。」




ということは、勝ったら今後エレナ先輩に手出ししないようにできる。


推しを守るためにも、ここは引き受けよう。




「…分かった。」




「3日後の午後、闘技場だ。せいぜい足掻くんだな!」




「ああ。」




「…ちっ!つまらん野郎だな。」




唾を地面に吐き、集団は帰っていった。


俺はすれ違いざまに大男を“鑑定"した。






名前 ダン 種族 人間 Lv.46




HP 260/260 TP 3215/3215 SP 0




STR 90 VIT 90 DEX 30 AGI 50 INT 20 LUK 10




スキル


片手剣Lv.3 棍棒Lv.5 盾Lv.3 体術Lv.4






『力に極振りするタイプか。STRとVITの数値は高いがスキルLvは大して高くないし…これなら滅多なことがない限り負けないな。』




しかし、別れ際の自信ありげな笑顔が頭から離れない。


絶対に何かしてくるはずだ。




『…残りの期間は一応両手剣と片手剣の訓練をするか。』




それから何事もなく時間が過ぎ、約束の日になった。




「次に洞窟内での戦闘だが…っと、時間だな。今日はここまでだ。小僧、そういえば私闘はこれからだったか?」




「えっ、どうしてそのことを…?」




「2年のダンという奴が騒ぎまくってたからな。嫌でも耳に入ってるさ。」




「なるほど…では行ってきます。」




「ああ。…気をつけろよ?あいつは卑怯な手を平気で使うからな。」




「はい。ありがとうございます。」




移動中に心を落ち着かせ、トレーニング着に着替えて闘技場に入った。




「おおおおおおおおおおお!!!!」




「…⁉︎」




俺が闘技場に入った瞬間に歓声が沸き起こり、困惑した。


闘技場の観客席に人が溢れている。




「よく来たな。」




「ああ。ところで…この観客はなんだ?」




「賭けをしてるんだよ!俺様とお前のどっちが勝つかってな!!」




私闘では賭博が出来るのか…


これはぼろ儲けのチャンスかもしれない。




「…俺も賭けてきていいか?」




「構わん。どうせお前は負けるんだからな!!」




大男は相変わらず自信満々だ。


何か俺に勝つ策があるのだろうか…?




そんなことを考えながら、賭場に着いた。




「いらっしゃい!!ダンが1.4倍、アルフレッドが2.6倍だよ!!」




『観客も皆大男に勝ち予想しているのか…好都合だな。』




「いくらまで賭けれる?」




「最大金貨1枚まで!!」




出家した際、父上から金貨10枚(日本円にして1,000,000円分)の資金をもらっていたのだ。


…本当に助かる。




「アルフレッドの勝利に金貨1枚。」




「毎度!!」




これで俺が勝てば金貨1枚と大銀貨6枚(日本円にして160,000円)の儲けだ。


ウキウキな気分になりながら闘技場に戻った。




「待たせたな。」




「じゃあ私闘の規則を決めようぜ…!!木剣じゃなく真剣を使った本気の勝負でどうだ?敗北条件は戦闘不能になることだ!!」




「おおおおおおおおお!!!!」




観客の沸き上がり方からして、この大男がこの形式で私闘をするのはよくあることのようだ。


賭博だけでなく、弱い者がぼこぼこにされるのを見て楽しんでいるんだろう。




「…それで構わない。」




「ちっ!余裕こいていられるもの今のうちだ!!」




1度闘技場の更衣室に戻り、しっかりした鉄の防具とグレートバスタードソードを装備した。


これからの学校生活で舐められないようにするためにも、大男には見せしめになってもらおう。




命を奪う覚悟を決め、再び闘技場に上がった。


大男は鉄の防具と片手棍、盾を装備していた。




『…予想通りだな。対策は練ってある。落ち着いていこう。』




「審判は私、ジェシカが担当いたしますわ。両者武器を構えて…試合開始!!」

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