高杉探検隊
この森には地竜以外にも獰猛で恐ろしい魔物達が住み着いていて、高ランクの冒険者達ですら踏み込むのには2の足を踏むと言う。
いつ何処から強力な魔物に襲われるかも分からない危険な森だ。少しの油断から死を招いてしまうこともある。実際に過去に多くの冒険者達がこの森で命を落としていることだろう。
”僕は冒険者だ。少しの油断も許されない僕がみんなを死なせやしない。絶対に守って見せる。”
非日常である森という空間、薄暗く危険に溢れている感じの雰囲気に飲まれてしまい直也は今とてもアガッていた。
遠い昔にテレビで見た秘境探検隊の隊長になった感じがしていたのだ。
地竜と思われる反応がある場所へ直也は気配を殺し力を抑えながら周囲を警戒してゆっくりと近づいて行く。
人の手が全く入っていない木が思うがままに成長してして光が入らない森はとても危険だ。いつ何処から蛇や昆虫の魔物が襲ってくるか気が気ではない。
「この森はあとどの位続くんだ?このままでは僕の方が先に参ってしまいそうだ」
直也は額からとめどなく流れる汗を拭い、顔に何故か泥を付けながらながら進んで行く。
「今日は直也さんは、凄く楽しそうですね!」
「うん、主様は探検をしているみたいですよ」
「旦那様も子供みたいで可愛いところがあるよな」
リーシェ、アス、レーヴァは子供を見守る母親のような目で温かく探検隊隊長の直也を見ながら後ろをついていく。
「みんな気を付けるんだ!あの木の陰にキングアナコンダヴァイパーがいるかもしれない」
「ん、この足跡はなんだ?これは人の足跡よりもかなり大きいぞ。この森には一体何がいると言うのか?」
「リーシェ隊員、君の知識を貸して欲しい。この森についての情報が欲しいんだ。原住民とコンタクトは取れるかい?」
リーシェ隊員は少し悩みながら告げた。
「・・・はい、多分タイミングが合えば可能だと思います」
「隊長の主様、私はコンタクトを試みている間に、この先への威力偵察にいってきます」
アス隊員が邪悪なドラゴンがいると噂されている森奥深くを偵察する危険な任務に志願した。それは、八方塞がりの手詰まりな状況を変える逆転の一手だ。しかし、それ故に危険を伴う。
「アス隊員、それは隠密偵察任務が専門も君でも危険すぎる」
「いえ、私に行かせてください隊長様。こんな私でも隊長様の力になりたいんです」
「ア、ス、隊員」
「私は無事に帰って来ます。約束したじゃないですか、帰ったら一緒に海の見える一軒家で主様とぐふふ」
「アス隊員?」
「ハッ、だから私は帰って来ますから」
「隊長の旦那様よ、あたいもアスと一緒に行くから心配すんなよ」
冒険隊のレーヴァ副隊長が自分がアスをフォローすると言う。それならば安心だ。
「レーヴァ副隊長も行ってくれるか?」
「ああ、心配するな。その代わり無事に帰って来たら、あたいとマグマが見える火口で、燃え上がるくらい熱い隊長の旦那様の聖剣を抜いてくれるかい?」
「レーヴァ副隊長・・・・・・それは無理だな」
「ああ隊長の旦那様のいけずぅ、でもそんな処も好き」
アス隊員がレーヴァ班長をきひずりながら、地中がいる森の奥へと消えていく。
これはなんだ、この茶番はどうなっているんだ?彼女達は何故?
目の前で行われているアマテラスによる探検ごっこ。高杉変態のテンションが何故だか急に高くなったのは覚えている。今日は割と暖かいからなと軽く考えていた。
今更スケベな変態男が変態探検隊隊長になったところで驚きはしない。むしろ、その流れに自然とのっていった彼女達に驚きを感じた。彼女達はとても楽しそうに高杉変態と絡んでいるではないか。これはコント?
・・・!! まさか、そっち系の薬か!
なんて奴だ! あの男はは彼女達にも薬を! あの男は何時の間に薬を使ったんだ! しかし薬ならばこの変態の陽気も彼女達に突然の変化にも説明がつく。このクソ野郎め。
私が必ず証拠を掴んで見せる。高杉変態を必ずや牢屋に送って成敗し、私がアス隊員と海が見えるお家で幸せに結ばれて・・・エヘヘへへ、ジュルリ。
「隊長、隊長!シャロンさんが変です。笑い顔がとてもエッチです」
「見るんじゃないアス隊員。彼女を見ると真っ白なアス隊員までピンク色に染まってしまうぞ」
三者三様、三人がそれぞれの楽しみ方で探検隊ライフを楽しんでいる時の事だった。森の奥の方から大きくて甲高い獣の様な叫び声に続いて大きな爆発が聞こえてきた。
「まずい、二人共もう戦闘は始まっているぞ」
直也は勢い良く走り出す。
「しまった油断していた、僕が行くまで何とか持ちこたえて下さい」
今日の直也にはいつもと違っていた。こちらの世界で目を覚ましてから、実は結構気にしていた無職のヒモと言われ続けた辛く悲し日々。
依頼を成功させてお金を稼げそうだ、その安心が今まで感じていたストレスが一気に良い感じに発散さてた。そのせいで変なテンションのまま森の雰囲気に飲まれ探検家の隊長になってしまったのであった。
地竜との戦闘に関しては何の心配もしていなかった。何故なら今地竜と戦っているのは大罪の魔王と伝説の終焉の火竜なのだから。
だから逆に、
「急がないと、地竜が狩られてしまう」
ヤバい、このままでは自分は戦わずに女に竜と戦わせた男、そんな不名誉な称号をいただいてしまう。
「間に合ってくれ」
直也はここ最近で一番必死になって戦場へと走ったのであった。
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