妄想する乙女火竜

 それは、あたいが山々を越えて、残る海峡を渡ると旦那様がいるセフィロトの町にまでもう少しで辿り着く、という時のことだった。


 「旦那様?・・・旦那様?旦那様の気配が消えた?」


  さっきまで戦闘をしていたであろう、懐かしい旦那様の昂った霊気。それが突然現れた巨大な魔力に呑み込まれて消えてしまった。


 突然現れた魔力の持ち主は一体何者だろうか?恐らく2度は大きな魔法を使ったはずだ。

何だあの魔力は? 何か変な感じがする。


  何と言えばいいのか、魔力の中に何か違う力が、あたいがしっている何かが少し混ざっている感じだ。この混じり物の魔力はなんかイライラする。なんでか、嫉妬心が湧いてくる。

 

 だが、とても強い。これだけの魔力を持っている人間や亜人はおろか、竜種や悪魔ですらそうそういないだろう。並の悪魔やドラゴン位なら簡単に倒してしまうだろう。


 

 それでも旦那様やあたいの力には遠く及ばない。その程度の相手に、旦那様はやられちまったの?


  いや、まさかそんなことはない。この程度の奴に旦那様が負けるはずがない。でも、旦那様はさっきの戦闘で、全然本気を出していなかった。


 もし何かがあって、不意を突かれてしまっては、万が一という事が有るのかもしれない?

 もし何かがあって、油断していることころを狙われてしまったのであるのかもしれない?


 

 でも戦闘中に旦那様が油断をするなんて。


 ・・・そんな事があるか?


 旦那様が油断?


 まさか、もしや相手は雌か? 


 いや、あり得るな。旦那様は雌には特に優しかった。もしも、雌にエッチな罠でも仕掛けられた日には簡単に引っかかるだろう。


  旦那様エッチだし。


 

 あたいは思い出してしまっていた。遥か昔に受けた旦那様の愛撫。その卓越した指のテクニックを。


 旦那様、そこは・・・アン!駄目だ、旦那様!


 ・・・ハッ! 


  旦那様、もしや雌と何かあったのではないか?

 まさか、雌との戦闘は今も続いているか?


  まさか、旦那様あなたは今、暗い部屋で夜戦を、ベッドでくんずほぐれつ超密着肉弾戦を!


 


 ・・・・・・・・・・・・!!(妄想中)


 「どうだ、参ったか。参ったと言え。俺自慢のご立派様の侍ソード。お前はもう耐えられないはずだ。ふふ、お前は良く戦った。だが相手だが悪かったな。俺の高速腰さばきの百烈突きに耐えられる雌はいない」


「ハアハア、私は負けないわ。誰があんたなんかの短剣に屈っするものですか」


「威勢がいいな。だがいつ迄持つかな? 受けてみろ!必殺連続振動・乱れ天国昇天突き」


「イヤーン、アッアーン!参ったわ!私の負けよ。とっても、す、素敵よー!」


「はっはっは、可愛い雌め。今夜は寝かせないぞ」


「イヤーン、素敵よー!」


 

・・・もっと頂戴ー! って、旦那様酷い! そんなのあたいだって、まだしたことないのに!


  ていうか、落ち着けよあたい。冷静になるんだ。旦那様がそんなことする訳がない。旦那様はそんなことはしないが、いやでも、もしかしたら逆に・・・。


 

・・・・・・・・・・・・!!(妄想中)


 「クッ、離せ! やめろよ、僕触るな! 僕には心に決めた雌がいるんだ」


「そうかい、それは残念だったわね。今から私がお前を食い散らかしてやるよ。フフフ、嫌がっていても無駄だよ。だって体は正直じゃないか。ほう、お前は随分と立派なマグナムをもっているじゃないか」


「あふん、やめろよ。やめろよ。それ以上僕の僕を触るなよ!アアン! やめてよ!そんなにいじるなよ!そんなに僕を虐めるなよ!ヤバいって。もういっそ僕を殺してくれよー!」


「可愛い奴だね。こっちもぼうやも、誤射しそうになっているよ。もう我慢できないようだね。待ってな、今すぐに止めを刺さしてやるよ」


「怖いやめてよ!何!熱い。熱いナニかに僕の僕が食べられていく。僕の僕が熱くて、軟らかくて、狭いナニかに食べられていくよー!」


「ウフフ、全部入ったようだね。それじゃ逝くわよ」


「助けてレ、レーヴァ! レーヴァ! レーヴァごめん。僕の僕がもう負けてしまう。クソ、でも、でも、アッアーン!とってもとっても良い! 凄い!すんごい、す、素敵ですー!」


 


  旦那様、待ってイカないでー!


  イヤー!駄目、駄目、駄目、駄目、そんなの絶対に駄目!

 そんなことをあたい以外の雌とするなんて絶対に駄目!

 ここまで来て他の雌に奪われるなど絶対に許せない!


旦那様はあたいの運命の番いなんだから。


誰にも渡すことはできないんだから。


 


アクセルげ、アクセルげ、アクセルげ、アクセルげ 、アクセルげ。


 


 早くしないと旦那様がヤラレちゃう。


 旦那様を美味しくいただくのはあたいなんだ。


 他の雌となんて絶対にダメ。


 旦那様すぐにあたいが助けに行くから!


 


 未婚の純潔1,007歳の乙女レーヴァテイン。


 彼女は妄想力を凄まじい力に変えて、加速魔法を何度も重ね掛け音速の壁を越えた。


 乙女はマッハの速度を維持したまま、愛しい旦那なおやさまの元へ向かって飛ぶのであった。


 


 


 「団長大変です」


「何事だ」


「報告します。先ほど火竜レーヴァテインの飛行速度が突然急加速、音速を越えて移動しています。設置している魔力感知レーダーでは捉えることが出来ません。恐らくこのままの速度を維持したとすると、あと数分で町に到着すると思われます」


「なんだって!全隊員に緊急配備だ!全隊員は万が一に備えて住民の避難と町の結界の強化を今すぐに始めろ。決してレーヴァテインには手をだすな!すべて私に任せろ。大丈夫だ、奴の事を私は良く知っている」


 「イエス・ユア・マジェスティー!」


  隊員が全員いなくなった部屋でイズナは静かに呟く。


 「レーヴァ、お前に直也様は渡さない」


 


 


 


 


 


 


 


 


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