ギルドまでの道中 元気な町
直也が助けたエルフの女の子はリーシェと名乗った。生まれ育った森を一人出てリーシェは生命の樹に巡礼に訪れたそうだ。
本人の希望は、大いなる生命の樹があるセフィロトで仕事を探して、出来ることならこの町で暮らしていきたい、との事だった。
「リーシェさんは何かつきたい仕事はあるんですか?」
「私は精霊魔法が、特に水、土系統が得意なので、それを生かした職が良いなと思っています」
「へー、実は僕も今仕事を探していて、冒険者ギルドに話を聞きに行こうとしていた所だったんだですよ」
「そうなんですか。冒険者ギルドに。もし、よければなんですけど、私も一緒に行っても良いですか?私も仕事を探したいのですけど、もし一人で行って、またさっきみたいな目に会うのは怖いので」
「そうですね、それが良いかもしれないですね。分かりました。一緒にギルドに行きましょう」
「はい、宜しくお願いします。それと、もう一つお願いがあるのですけど」
リーシェは直也の顔を窺う様な上目遣いで、両手の指で三角や丸を作りながら
「この人込みでは、私ははぐれて迷子になるかも、なのでさっきみたいに手を繋いでもらってもいいですか?」
「はい、リーシェさんが良いのであれば、僕は構わないですよ」
直也が差し出した手を、はにかみながら恐る恐る握り返すリーシェの小動物みたいな仕草を、可愛いらしく好ましく思い、直也が自然と微笑んだ時、今まで歩いて来た通りの後ろの方で何かが爆発するような音が聞こえた。
「あれ、何かあったのかな?」
直也が振り返り爆発のあった方を見ようとすると、
「隊長、あっちで爆発」
「良し、いくぞ、ミーナ隊員、皆の者、総員駆け足俺に続け―!」
と、町の治安維持部隊らしい小隊が現場に急行して行く姿が見えた。
「大きな町は怖いですね。直也さん、もっと傍にいってもいいですか?」
さっきの冒険者の件もあるし、怖いなら仕方がないなと了承する直也。
「はい、リーシェさんのような可愛らしい方なら、僕は歓迎ですよ」
怖がるリーシェが元気になるのならと、少し冗談めかして伝えると、リーシェは顔を赤くしながら、腕を抱き込む様にしてくっついてきた。
「姉さん、姉さんじゃないッスか!」
先ほどの兵隊さんなのだろうか?。
「姉さん、落ち着いて下さい、さっきの爆発はなんすか?姉さん、一体どしたッスか?」
切羽の詰まった大声が聞こえてきた
「・・・・・・殺!」
「姐さん!駄目ッス!町の往来で刃物はマジで駄目ッス!なに、キレてんスか?」
結構激しい剣戟の音が響いてくる。
「総員退避!隊長はがんばれ!」
「ミーナ、お前ら俺を置いて逃げる気か!それでも仲間か!クソ、これが放置プレイと言う奴か!」
「放置違うよ。あえて言えば尊い犠牲?」
「隊長がんば!隊長がんば!」と少隊員一同の
感情のが一つも籠っていない応援。
「クッソ、ミーナ、お前ら。覚えてろよ!・・・くっ、姐さん、俺もうヤバいっすって、あッ、ほら、ちょっと切れたっすって、マジヤバいっスって、ムリ、ムリッスって!ぎゃー!」
「たいちょー!」
話の内容からすると姉弟喧嘩だろう。バイオレンスな姉のようだ。でも、弟も思ったよりも大丈夫そうな声だし、問題はないだろう。直也はそう思った。
(この町の住民は、こんなにも楽しそうで元気一杯だ。僕も見習って頑張ろう!)
直也は町の元気な皆さんに、やる気と元気をいただき、リーシェと恋人同士の様に密着したまま冒険者ギルドに向けて、力強い一歩を踏み出すのであった。
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