第27話 一体化タイプと擬態タイプのいいとこどり

「……………………あんた、変身アイテムから人間に変身できんの!!?」


「そうですが何か?」


 アルマライザーから姿を現した銀髪の女性は、さも当然とばかりに答えた。


 その女性……フェーミナの人間態は、銀色のセミロングと切れ長の鋭い目が特徴的だ。外見年齢は大方18歳辺りで、白系統のラフな服装をしている。

 線の細いクールビューティーと言ってもいいか。あるいは氷の女王様な雰囲気。


 ……こういうクール系美人もいいな……。


 舞さん達とはベクトルの違う美しさに、俺は少し心を奪われた。

 ついでに胸は大きくも小さくもない普通サイズ。


「つうか、異世界出身にしては服が普通っぽいな」


「これは光と初めて接触した際、彼女が着ていたものを参考にしたものです。顔立ちや身体は私オリジナルですが」


「そうなんだ……って、憑依しているなら光さんの中にいるんだよな? 何で俺の目の前に……」


「アルマライザーを経由して、私の存在をこの場に投影しているだけです。触れられる立体映像とでも思って下さい」


「ああ、なるほど……」


 俺はてっきり、光さんを巨人シリーズでいう『一体化タイプ』とばかり思い込んでいた。

 

『一体化タイプ』とは主人公と巨人が文字通り一体化し、共に戦うタイプの事。

 それに加え巨人が人間に擬態する『擬態タイプ』、人間が巨人に変身する『変身タイプ』などが存在するが、もっとも有名なのは初代でも設定された『一体化タイプ』だろう。


 ここから察するに、光さんとフェーミナは『一体化タイプ』と『擬態タイプ』を持ち合わせているという事になる。

 なんて贅沢。やはり光さんはオタクの俺から見ても色々と特異過ぎる。


「……一応聞くけど、フェーミナって女性だよな?」


「これで男に見えたら視力が落ちている証拠ですね。目の治療をおススメします」


「ああうん。それは間に合っているかな」


 やはりフェーミナは正真正銘の女性だったようだ。

 これで性別男だったりしたら複雑な気分になる。


「持ってきたよ~。あっ、フェーミナその姿になったんだ。もしかして悠二クンと分かち合った?」


 その時、光さんがお盆を持ちながら帰ってきた。

 お盆の上にはケーキとお茶が乗っている。


「もしかして光さん、この姿知ってたの?」


「もちのろん。まだ両親や恵美子さんにも紹介していないけどね。知ったら腰抜かしそうだけど」


「ならばなおの事話さない方がいいでしょう。それと私は彼と分かち合った訳ではありません」


「そんな事を言って~。もっと楽になりなよ~」


「やめて下さい。離れて下さい」


 フェーミナに後ろから抱き付く光さん。

 本当に仲がよさそうだ。


「……コホン。話が逸れてしまいましたね。それではあなたの事をお聞かせ下さい」


「いや、まずはフェーミナの事を知りたい。まだあんたのあれこれがよく分かんないし、それを言ってくれたらこっちも話す」


「はい、ケーキどぞ」


 光さんが3人分のケーキとお茶をテーブルに並べた。

 俺は「どうも」とお礼を言ってから、お茶を少し飲むが。


「3人分……フェーミナの事を明かしていないのに、よく恵美子さんにバレなかったね」


「まぁ、上手く丸め込んで。フェーミナなしってのは可哀想じゃん」


 と言って、光さんがフェーミナの頭を撫でる。

 まるで姉をあやす妹……いや構図的に逆だが、そうにしか見えない。


「私のような存在は食事を必要としないので、あくまで嗜好品となります。ではお言葉通り私から……はふ、ほほへはひへは……」


「いや、ケーキ食べながら話すなよ……」


「んぐ……失礼。まず、この世界では怪獣による破壊が行われています」


 食事は必要ないと言いつつも颯爽と食べた挙げ句、食べながら話すという所業。

 もしかしてフェーミナは天然ボケだろうか? そう俺は思ったが、とりあえず話を聞く事にした。


「私はいわゆる異世界からこの世界を観測していました。あくまで観測者故、この世界にはなるべく干渉しない決まりだったのですが、ある日を境に『怪獣』という非常事態が起こっている事を知りました。私は特例措置……あるべき世界に戻し、再び観測を行う為、光と一体化し戦っている訳です」


「そこも何かテンプレな……。つまり、観察対象であるこの世界が怪獣でおかしくなったから、それを修正しようとこっちにやって来たという」


「そうなりますね。怪獣に対抗できるのは私だけというのもありましたので。……あなたというイレギュラーを見るまでは」


 イレギュラーねぇ……。


 俺はその言葉を噛みしめる。確かによくよく考えれば、俺は『舞さんが生み出した怪獣少年』という特異な存在だ。

 フェーミナにとって怪獣はタラスクやサーペントのような奴らを指すだろうし、まさか『怪獣を倒す怪獣』が出てくるとは思ってもみなかっただろう。

 

「さて、私の話はこんなところです。次はあなたです」


「…………」


 言うべきかどうか。俺は非常に迷った。


 ただフェーミナがこうして語ってくれたのに、自分は何も言わないなんてフェアではない。

 こういう場合は少し考えて事を運びたい。

 

「実は俺は作られた怪獣なんだ。ある人が怪獣を作り出す能力を持っててさ、俺はその人と一緒に戦っている」


 その言葉を口にすると、2人が驚いたように目を見開いた。

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