80.お風呂で反省会です
ドラさんにおやすみを言って自室に戻った後、広い半露天の風呂に浸かりながら、インベントリの中身を確認することにした。
ちなみにこの風呂、掛け流しの温泉だ。地下から湧出しているらしい。それも岩風呂。超日本風。リョー兄ちゃんってば、いつの間に温泉旅行なんて行ったんだろう。じいちゃんにスーパー銭湯でもつれてかれたのかな。
一覧の表示は、魔石に魔素を流すことでできるようで、その中から対象を選ぶと取り出しが可能であるようだ。確認メッセージが挟まるからうっかり取り出してしまう事故もない。同じ腕にブレスレット重ねて着けると常に魔素が通ってしまうので、間に絶縁体みたいに魔石じゃないブレスレットでも挟もうかな。
ただ名前の表示だけの一覧なのだが、物の名前がしっかり記載されているものもあれば、赤いスイッチ状の物体、なんていう見た目の説明が名前になっているものもあって、多分これは正式名称が付けられないガラクタなのだと思う。
しかし、入れた物の名前が表示できるって、めちゃくちゃ高機能だな。物を判別して名前を割り当てる、なんてことが自動でできる機械は日本にもないぞ。いや、俺が知らないだけであるのかも知れないが、あるとしたら最先端技術だ。
俺用のタブには、俺がこちらに来てから使えるようにと作っておいてくれたらしい武器や防具、それと『取説』が入っていた。単純に名前が『取説』なので、何の取り扱い説明書なのかは現段階で不明だが、今取り出すと濡れるので後で確認しよう。
他のタブも大雑把に分類されていた。ガラクタとか完成品とか素材とか。丸ごと、って何のことかと思ったら、魔物の亡骸が丸ごと放り込まれていた。なるほど、解体して素材にする前の状態を入れてあったらしい。
完成品タブには、俺が再現した魔道具を含むたくさんの物が入っていた。翻訳魔道具を見つけたんだけど、何に使ったんだろう。この大陸は大陸内で共通語だし、翻訳する必要なさそうなのに。
本や資料の類をインベントリにしまっておく発想はなかったのか、何か事情があったのか、紙類は『取説』だけだった。まぁ、あんな立派な本棚があればな。
しかし、片付け下手なリョー兄ちゃんがよくあの本棚を維持できたな。ガレ氏が片付けてくれたのかな。
重ねて着けていたブレスレットを片方外すと、表示されていたリストも空中に溶けて消えた。見た感じがとてもファンタジーだ。
といっても、この世界は割と機械文明なところがあるから、こんな見るからにファンタジーな現象はめったにないけど。
絶縁体なんて今この辺にあるものでもないので、ひとまず外したインベントリのブレスレットは反対の腕に着けて。
浴槽の壁にもたれて息を吐く。温泉気持ちいい。
それにしても、今日は色々ありすぎた。呑気にインベントリの構造に悩んでいたのは、随分前に感じるけど今朝のことだ。しかもその日のうちに斜め上に解決するし。
その後も、誘拐犯には再誘拐されかけるし、魔物の群れは襲ってくるし。厄日だったのかね。
全部その日のうちに解決してるんだからなんとも言えない。俺のやったことなんて、状況に流されただけだしな。確かに魔法陣を書いたのは俺しかできないことだっただろうけど、それ以外は全部周りの人が動いてくれた。そう考えると、俺は実に恵まれていると思う。
問題は、あれだ。国選技師の内定。
国選技師って、何だろうね。この世界の常識はまだ完璧じゃない俺には、未知の称号だ。流されてないでちゃんと聞いておくべきだったか。義務とかあるなら遠慮したいんだけど、今からお断りなんてできそうにない。何しろ国王陛下直々のご指名だし。
日本で言いかえて、なんとか褒賞の授与とか、人間国宝に選ばれたとか、そのくらいの感覚で良いならもらっといても不利はないかなぁと思うけど、この世界で楽観視して良いとは思えないしなぁ。
手が空いたらキャレ先生に相談だなぁ。国に関わる大事なら、後見人に相談しなくちゃ。
好き勝手に、俺があったら便利だと思う物を作って、まだ世の中に無いならついでに特許取っちゃおう、ってくらいの感覚なんだけど。自由度が奪われるのは嫌だよな。
まぁ、何にせよ、明日はドラさんと山脈奥地の生態系調査に専念しなければ。
まだまだしばらくは学院で平和に学生していたいしね。
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