44.腕輪の持ち主はSランクでした
支局長の呼び出しに応じた担当職員のみなさんの集まりは非常に早かった。
早速応接室が3つのグループに分かれる。
「コイツはここじゃムリだ。下の解体部屋で出してくれ。支局長! 下行きます!」
分かれたグループのひとつ、買い取り依頼グループが早速部屋を出て行った。ついていったのはドイトとエイダ、それに中身をチェックしていたヘリーもそっちに行ってしまう。
エリアスはパーティーリーダーとしてここに残り、ワイルドベア対策会議に付き合って今日の出来事の詳細を聴取されている。
俺の近くには推薦人としてレイン教授と、冒険者登録担当の職員がいた。目の前に置かれたのは、水晶球だ。なんだか、典型的占い師みたいな小道具なんだが。
「まずこちらの申請書に記入をお願いします」
渡されたのは個人情報の記入欄が作られた定型フォームだ。氏名住所出身地国籍携帯端末番号に魔術属性や得意武器にパーティー内での役割まで。
ていうか、魔術師って得意属性なんてあったのか。攻撃魔術が得意なエリアスと補助魔術が得意なヘリーに医療魔術師なキャレ先生と、俺の知り合いな魔術師は属性分けがありそうではないんだけど。
あ、いや、そういうことか。火とか水とかって意味の属性じゃなくて、攻撃とか補助とか身体強化とか、属性扱いされてるのはこっちか。
まぁ、どちらにせよ俺はここを埋める力が皆無だけどな。
俺が必要事項を記入している間に、職員さんは新しいドッグタグを水晶球にくっつけて何やら操作していた。
「レイン先生。出身地ってどうしたら良いです?」
「ここで良いんじゃないかな。国籍もここで登録されてるはずだし」
「魔術属性のところは?」
「魔法陣魔法……じゃダメか。魔道具技師でどうだ?」
それは属性なんですかね。まぁ、言われたとおり書くけど。間違ってないし。魔法陣は書けるけど起動できないから、魔法陣魔法とか書くと嘘になりそうだ。
書けた申請書は、職員さんの手で水晶球に付属しているキーボードっぽいもので写されて、水晶球の中に文字が浮かんで表示されていく。向かい合った俺から見ると逆さ文字だ。
「ではこれで登録します。こちらが新しいギルド証です。C級ライセンス証書は後日郵送となります。何かご質問などありますか?」
はい、と手渡されたのが、さっき水晶球にくっつけて何かしていたドッグタグだ。身につけるのはギルド証で、ライセンス証書は自宅に保管で良いらしい。
つまり、この水晶球はギルド証の管理端末だ。
特に聞くべき事もないなぁ、と思っていたら、レイン教授の方が何かあったようで、はい、と手を挙げた。
「超古代文明期のギルド証があるんだよ。照会してもらえるか?」
「え。そんな昔の情報あるんですか?」
職員さんが答えるより先に、俺が突っ込んでしまった。ありますよ、と答えてくれたのは職員さんだ。
なんでも、冒険者ギルドは入植者たちに最後まで抵抗して生き残った組織なんだそうで、おかげで超古代文明期から使い続けている魔道具が最も残っていたらしい。冒険者登録機能はその頃から継続して使い続けているそうで、古いギルド証がもし残っているなら照会も可能なんだとか。
まぁ、レイン教授が俺のブレスレットを見てはしゃいだ程度には超レアではある。
そんなわけで、促されて腕を差し出した。身につけたまま水晶球にコツリとくっつける。
「えー。あ、あったみたいです。全然読めないですが」
スゴい。あっさり見つかった。
もう離して大丈夫と言われて腕を引っ込め、水晶球を覗き込む。レイン教授も覗き込んでいるから、頭がぶつかりそう。
確かに、表示された名前はリョー兄ちゃんの名前だった。住所もガレ氏が書き残したものに一致している。
レイン教授の首元に魔石が光っているので、翻訳の魔道具を使っているようだ。ということは、読めてるな。
「うわぁ、マジかよ。Sランクじゃねぇか。リツ、知ってたか?」
「冒険者だったことすらこのギルド証でレイン先生に教えられるまで知らなかったですよ」
現在は魔術属性になっている欄には「全」とだけ記されている。魔法陣を自分で開発して魔道具を作り出したような人だ。そりゃなんでもかんでもできるだろう。
表示された国籍と国名から始まる住所に所属ギルドに記載されている地名っぽいところをメモさせてもらった。これで手がかりが増えた。
「この地名なら、山脈の向こう側にある黒の森の入り口あたりだな。長期休暇で行けるぞ」
「え。レイン先生知ってるんですか、この住所」
「これでも考古学者だからな!」
なんと、探す範囲がグッと狭まった。さすがです、レイン教授!
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