第17話 北へ

計画していた用件を済ませ。文野は東北を訪ねる事にした。翌朝、ビュッフェ形式の朝食を済ますと荷物を片付けて旅行に行くのだ。どうやら今朝の杉山は、宿舎のホテルで朝食を取るようだ。杉山の泊まっているホテルは、系列が一緒なので、食事は選べるのだ。さてお腹もいっぱいになったし、準備しようかな?文野が席を立とうとしたときに「おはようございます。文野さん」「おはようございます杉山先生」「もう終わったんですか?お時間有るなら付き合って下さい」「分かりました。ではコーヒでも貰ってきます。杉山先生はブラックでよろしいですか?」「ありがとうございます。」「今朝はあちらのホテルで朝食取るとばかり思ってました」「昨日久しぶりに飲んだので少し散歩してきたんです。シャワー浴びてすっきり爽快です」「まぁ愉しかったんですね。良かったこと」「文野さんは、お友達とゆっくり出来ましたか?」「はい。色々言われましたけれどいつまでも友達だからねって言って貰えて嬉しかったです」「良かったですねぇ。友達って有難いですよね。」「ところでこの後は?」「私は東北にプチ旅行を予定してます」「良いですね。お一人ですか?」「はい。先生は?」「僕は何の予定もないです。いきなり出張だったんで」「そうでしたね。直ぐお帰りですか?」「部長に連絡したらゆっくりしてこいと言われて困っていたところです」「まぁいつも忙しくしていますから良い機会ですねぇ」「あのぅ僕もご一緒して良いですか?」「えっ」「ご迷惑ですか?」「いえ驚いただけです。そうですね。先生なら愉しそう」「ひとつだけお願いがあります」「何でしょう?」「先生は止めてください」「そうですねぇでは修司さんとお呼びしましょうか?」「是非」「やはり杉山さんとお呼びします。慣れないので…。「残念です」「まぁ」「では準備して迎えに来ます」「はい。荷物は軽くして来てくださいね」「そうします」ラウンジを出た二人はそれぞれの部屋へ戻った

着替えを済ませて二泊三日分の着替えと洗面具をリュックに詰めて後は土産と荷物をキャリーバッグに詰めて自宅へ宅配便で送る。ショルダーバッグとリュックを担いでキャリーバッグを引いてフロントへ。既に杉山は、来ていたが、キャリーバッグを引いている「杉山さん荷物は、全部持っていくんですか?」「いやぁ邪魔なんですけど。自宅は僕が帰らないと受け取れないし」「二泊三日分の着替えは分けてあるんですか?」「はいこれです」「可愛い~ボストンバッグ…ですか?」「実は昨日帰りに見つけて今度は出張の時に使おうと思って買ったんです。直ぐに使えて良かった。近くのコンビニで自宅宛に送って来ますね」「杉山さん、私もこれからもフロントから送るので一緒にうちへ送りましょう?家には両親がいるので必ず受けてれますから」「よろしいですか?」「もちろん。2個口で送れば良いじゃないですか」「ではその様に」フロントで文野の自宅宛で送る手続きを済ませて二人は近くの駅へ向かう

「良い天気ですねぇ。」「本当に。旅行日和ですよ。」「文野さん、何だかスッキリした顔をしていますよ?」「分かります?そうなの。でも杉山せ、杉山さんもそう見えます。」「任務終了なんでね」「では楽しんで参りましょう。」

関内駅を目指して二人は歩く。9時を過ぎているので通勤ラッシュの混雑はない筈だ

「横浜駅で乗り換えますか?」「取り敢えず急ぐ予定もないので来た電車に乗りましょう」「了解」「実は今回Jrばかりを利用したので京浜急行に乗りたかったんです。」「京急ですか?またどうして。」「以前勤めていた時に利用していたので…。」「わかりました。では京急で品川駅まで行きますか?東北新幹線は、上野発ですから」「わがまま言って良いですか?」「勿論ですよ。」「杉山さんも乗りたいものや行きたいところがあれば遠慮しないで言って下さい」「僕は、急に休みを取らされた予定もない男です。気にしないで下さい。」

結局京浜急行で品川駅まで行ってJRに乗り換えて上野駅へ向かった。上野駅からは東北新幹線で岩手県盛岡へと向かった「文野さん良く来ていたところですか?」「いいえ。以前お世話になったので顔を出そうかと…。でもスキーとかで安比高原スキー場とかも行ったことあります」「へぇスキーですか?」「尻餅ついてばかりでしたけど大分上達したんですよ?」「スキーは、新潟が多かったですね。湯沢に知り合いが、ペンションを経営していたのでバイトしながら遊ぶ感じでした」「医大生でもバイトできるんですね?」「僕の周りはいましたよ」

ホテルは盛岡駅の近くだった。今回は、杉山も同じホテルを選んで向かいの部屋に泊まる事になった。チェックインまで一時間ある荷物をフロントに預け二人は駅周辺を歩く事にした。

「駅前ですが落ち着いてますね。」「本当に横浜みたいにざわついてなくて良いですよ。」

「通りもきれいですよね」「さぁて昼飯を取りましょう❗どこにするかな?」「やはりわんこそばですかね?」」「食べてみたかったんですよ僕も」「それ行きましょう❗」二人は近くの蕎麦店に入ってわんこそばをたべた

今時は以前のように急いで食べることを望まない場合は普通に食べられるようだ。店の方も美味しく食べて貰った方が良いのだそうだ。

「さてどこへ行きますか?」「バスで安比高原まで行きます」「杉山さんは行きたいところがあれば自由行動でも良いんですよ?」「いやいや、元々何の予定もないので文野さんに着いていきますよ?」「退屈では?」「そんなこと無いですよ」「以前来たのは冬だったので雪が積もっていたんです。雪の壁があったりして…。まったく違うところに来たみたい。」「そうかもしれないな」「また雪の季節に来てみたいですね?」「そうですね」駅前からバスで1時間ほどだ。本来鉄道を利用すればもっと早く着くのだろうが、以前訪ねた様に行きたい文野のわがままである。

「まぁいらっしゃいませ。」事前に訪ねる事を知らせていたので女将さんとスタッフの方々が、出迎えてくれた。「皆さんお元気そうで」「はいお陰さまで。立花様も」「女将さんやめてください。私も従業員として勤めてたんですから」「そうだったわね。あなたが作ってくれたパソコンのソフト今も役に立つのよ。本当に助かったわ助かったわ」女将が文野の手を握って話す「前の職場で使ってた表だったのでを使いやすくしただけなんですよ。私は少しいじっただけです」「わざわざこちらまで足を伸ばしていただいて嬉しいわ」「本当はゆっくり泊まりたかったんですけど、団体さんの予約が入ってるって聞いたので遠慮しました。次回は必ず泊まらせて頂きます」「ありがとう、待ってるわ。ところでこちら様は?」「友人です。杉山さんです」「こんにちは、杉山修司です」そう言って名刺ケースから名刺を取り出して女将に差し出した「まぁお医者様ですか…。文野さんって素敵な女性でしょう?」「はいとても…。」「女将さん、何を仰ってるんですか‥」「あらとてもお似合いよ」ニコニコしているところへ団体客の到着の知らせが入り名残惜しいがホテルを出ることにした。玄関にはスタッフが並んでお迎えの準備だ。お辞儀をしてホテルから離れる。「この近くに観光できそうなと頃ってあるんですか?」「さぁ…。スキーヤーかゴルフ場の利用者ばかりだから名所と言うほどの場所は知らないんです」「では盛岡に戻りますか?」「そうですね。日が暮れると迷ったときに困っちゃうかも」二人はバスで安比高原駅に向かい帰りは電車で盛岡へ戻った。

バスもシーズンオフだと少ないので電車で盛岡へ戻るしか無いのだ。「スキーシーズンではないので雪もなかったですけどそれはそれで静かな良いとこでしたね。」「ええ温泉に浸かってゆっくり過ごすのには静かで良いとこだと思いますよ。杉山さんもどうぞどうぞご贔屓に」「はい。チャンスがあったら行きたいです。一緒に行きましょうよ。ご両親も誘って。」「両親とですか?ゆっくり出来ると良いですけど。うちの父ってせっかちでしょう?ゆっくり出来るかしら?」「立花さんタイプには特に必要ですよ。」「杉山さんの言うことなら聴いてくれるかも…。」「どうしてですか?」「大人しくしてるってことがないんですよ。体は動かなくても頭は動くとか言って町の敬老会の役員を引き受けてるし、嫌でも来年順番で回ってくるのに…。」「さすが立花さんですね。病棟でもよく世話を妬いてました。」「お騒がせしてすみません」「いえ迷惑ではないんですよ。入院中の学生にもよく話し相手になってました」「まぁ、煩さがられていたのでは?」「いやどっちかっていうと相談に乗って挙げてたんじゃないですかね。退院しても道場においでって声をかけてましたから」「本当に世話焼きなんですよ」「立花さんの良いところですよ。」「ありがとうございます」帰り道は話が弾んであっという間に盛岡についた

夕食はフロントの紹介で美味しい地酒が、飲める店で済ませた。二人ともほろ酔い気分でホテルへ戻った「では明日の朝食で」「7時頃で良いですか?」「文野さん7時は出張で来てる方で混雑しますよ。8時で良いですか」「了解しました。お休みなさい」各々の部屋でゆっくり過ごしたのであった

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