妹目線

最近のお兄ちゃんが優しすぎる


元々優しかったのだけど

最近の優しさはまた別のような気がする


私のとお兄ちゃんは5歳離れている

私が生まれてすぐお父さんが亡くなってしまったからだと思うけど

私が寂しい思いをしないようによく面倒を見てくれた

5個離れたお兄ちゃんはとても頼もしくて優しくて

病気もせず怪我もしないような健康優良児で

私にとってはヒーローのような存在で

幼い頃は大きくなったら結婚するんだって本気で思ってた


そんなお兄ちゃんが大怪我をして意識不明になった


驚いた所の話ではなかった

物語のヒーローのような存在が

怪我をしたのだ

話を聞いた瞬間目の前が真っ暗になり

少しの間の記憶が無くなったくらいだった


その時お兄ちゃんも人間なんだと思った

いや、人間だから当たり前なのだけど

生死の狭間を彷徨うような

そんな事になって、自分と同じで怪我もすれば

病気もするのだと


初めて自分が兄を守る

そう真剣に思う様になり

失う可能性がある事に

心底恐怖した

初めて神様に祈った

御百度参りにも行った

可能な限り病院に行き声を掛け続けた


お母さんは私には、

あの子は死なないよ!大丈夫だ!

って言って強がっていたけど

夜な夜な泣いているのを見た


テレビドラマや漫画でみるようなものではなく

毎日ほんとに怖い

もしも……に悩まさせる生活が続いた


半年後の事だった

お兄ちゃんが目を覚ました

と病院から連絡が来た

学校を早退して慌てて病院に行き

お兄ちゃんが目を開けている事に

狂喜乱舞した


しばらく私を認識してない感じだったけど

その後はいつもの優しい笑顔だった


一緒に住む様になって少しおかしい?と思う様になった

頭を強く打ったし、半年も寝てたし、仕方ない事なんだと

思ってたけど、なんかうなく言えないんだけど

優しさの種類が違うというか、視線が違うというか

時折なにか違う人に見える時があった


まぁ優しいのに変わりないし

怪我の後遺症もなく健康だし

一緒にいて楽しいので気にしないようにしてたんだけど


なんかこう、女性っぽさというか

同じ目線でいろんな物を見れるようになった

その分兄妹っていうか

友達みたいな感覚がするようにもなった

とても良い事なんだけど

戸惑いも大きい

化粧品や日焼け止めのCMを見て感心してるし

スイーツや食べ歩きに興味深々だし

やたらと料理のレシピをメモってる

生死の境を彷徨えば心境の変化も

そりゃあるよな〜


 『ん?ベランダで電話してる』

 『なんか楽しそう。仕事ではないみたいな』


ん〜よく聞こえないな〜 


 『え?今、私って言ったよね?そんな言い方初めて聞いた』

 『やっぱり仕事なのかな?』


 『どっか出かけるのお兄ちゃん?』


 『うん、あっちょっと散歩がてら買い物にでも、アハハ』


バタンをドアが閉める音を聞いた私は

少し悩んだんだけど

やっぱ私が気になる

怪しいな〜

よし尾行しちゃえ!


慌ててメガネを掛け帽子を被り

尾行スタイルにチェンジした!


そうこれが初めてではないのだ!


フフン

私は鏡を見て決まったなと思い

さっさとお兄ちゃんの後を追う

こういう時は雰囲気も大事だからね

電柱に隠れつつ後を追う

ドキドキ感がたまらない

いつも通りブツブツ言いながら歩いてる


 『あれってちょっと怖いんだよね〜』


公園の前を通り抜け駅へと向かう道だ


私は物陰に隠れつつ後を追う


 『電車に乗るかな〜』


と私も気がついたらブツブツ言ってた

ふと後ろを振り返ると

公園で遊ぶ子供達が一緒になって

隠れてた

そしてその子達の親が私を物珍しそうに見てた


 『アハハハハハ』


と笑いながら私はその場を立ち去ったけど

私が変な人に見られちゃうとこだった

てか見られてたな、たぶん


電車に乗り降りた先から

歩く事数分でとある店につき

その中にお兄ちゃんは入っていった

お兄ちゃんが入って少しして店の前までいく


 『今ここに入っていったよね』

 『何ここ?魔界カフェ??』

 『メイド喫茶のようなとこかしら?』


最近よくあるコンセプトカフェのようだ


 『買い物じゃないじゃん』

 『こんなとこ来なくても私がコスプレしてあげるのに』


入ると見つかってしまう可能性もあるけど

それならそれで連れて帰ればいいかと思い

私は殴り込みに行くかの如くの気合いで店に入る


 『ちょっ、ちょっと露出度高くないですか』

 『私に内緒でこんなお店に来てるなんて

  帰ったらちょっとお仕置きだな

  晩ご飯は激辛料理にしてやる』


 お店の中を見渡しでお兄ちゃんを探してた見たんだけど


 『いないな〜確かに入ったと思ったんだけどな〜』


注文したパフェが出てきたんだけど

これがほんとに美味しくて可愛らしい見た目だった


 『おいしい〜〜』


パフェに夢中になってあっという間に食べ終えてしまった


 『満足♪』


そう私が呟いたら


 『そりゃ良かったね、じゃあ帰ろうか月依』


と後ろから声が聞こえて肩をポンっと叩かれた


 『え?あれ?お兄ちゃん!』


さっきまでいてなかったと思ったのに急に出てきたから

びっくりして声が裏返ってしまった


 『キ、キグウデスネコンナトコデオアイスルナンテ』


見つけるつもりが見つかってしまった

片言の日本語になってしまった


 『何が奇遇ですね、だよ〜つけて来たんだろ』


とお兄ちゃんが優しく言ってくれた


 『あはは、バレてたんだ』


と私が申し訳なさそうにいうと


 『ほら、そこの監視カメラ、それの修理にきてたんだよ』


とお兄ちゃんがカメラを指差しながら教えてくれた

なんだ、こういう趣味があったのかと思ったけど

違ったみたいだった

なぁんだせっかく家でしてあげようと思ったのにな〜


 『一緒に帰ろ、月依』


そう言って笑顔で手を差し出してくれた

そうこれ、こういうのが嬉しいんだけど

ちょっと違う気がするんだよな〜

そう思いつつも手を取って立ち上がって

お店から出ようとした時

お店のかわいい店員さん達がいっせいに


 『魔王様〜また来てくださいね〜』


と声を合わせて言ってきた


 『んなっ!なっ何をっっ』


超焦ってるお兄ちゃんがそこにいた


 『ぷぷー。なぁに魔王様って〜あははははは』


とお兄ちゃんの顔を覗き込んで言ってみる


 『ちがっ、いや、これは違って、ぇとぁと』

 『か、帰るよ、月依』


取り乱してるな、フフフ


 『はぁい魔王様〜帰りましょう』


お兄ちゃんはともて困った顔をしていたけど

今日はとても良い収穫があった

魔王様、たまにつかお♪

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