悪意の無い悪

コンコン


ラトワネがドアをノックする


 『オーナー、魔王様お連れしました。失礼します』


そう言ってドアを開ける


 意外とちゃんとしてんだなー

 普段もっと間抜けなのに


とラトワネを横目でみながらこの世界に

馴染んでるな〜と感心する魔王様


ドアを開けて中に入るとワークデスクで魔女が何やら仕事をしている

魔王様を見て手を止める


 『わざわざご足労頂いてすまないね』

 『本来ならこちらから足を運ぶとこなんだが』


そう言いながら椅子から立ち上がる魔女

チャイナドレスからすらりと伸びた足をチラ見させながら

魔王様のほうに歩いてくる


 『来なくていいよ、お前みたいなのが来たら妹御がびっくりするわ』

 

 私はこの女に妹御は合わせたくないと心底思ってる

 だって見た目がエロいんだよ

 お兄ちゃんが普通に軽蔑されそうだからな!


 『ふふ、妹ってこの子かい?』


そう言ってモニターの画面をリモコンで切り替える

画面に映ったのは変なサングラスかけてジュース飲んでる

妹、月依だった


 『ぶっ、なんでいるんだ???つけてきたのか』


とびっくりする魔王様


 『あんたが店に入ってくる時に怪しい子があんたを

 気にしてたので何者かな?と思ったが妹か』

 『わざわざ心配されるなんて愛されてんね〜』

 

と魔女が笑いながら言う


 『電話がやっぱ怪しかったか〜』

 『あとでうまく弁解しておくかな、はぁぁ』


と溜め息ついてしばらくモニターを眺めていると魔女が


 『さて、本題なんだが』


といってサッと4枚の写真を机に広げた

手にとって見る魔王様


 『誰だこいつら?』


と思ったが1枚の写真に目が止まる

変装してるようだが見た事ある奴だ


 『いや、こいつ知ってるな』


と魔王様は1枚の写真を魔女の方に見せる


 『この前会社で見たよ、こいつ』

 『んでこいつらなんなの?』


と魔王様が魔女に説明をもとめる


 『こいつらは、私の知り合いの子の会社から

 とあるデータを盗んで売り捌いたのさ

 大企業なら大した痛手にもならないようなデータなんだが

 やっとの思いで会社を起こし、軌道に乗り始めた矢先に人手不足から

 応援を頼んだ人間に裏切れたって訳だ

 機密データーって程じゃなかったのだが、客の信頼を失う事に

 なってしまったんだよ。信用問題は独り立ちし始めた会社にとっては

 闇を抱えるようなもんだからね』


 と写真を見ながらだが遠くを見ているような目で話す魔女。

その姿を見て、魔王様は写真に映る4人の若者はもはや後悔しても

遅いなと同情し手を合わせて拝んでおいた


 『で?復讐するのか?なら別に私いらなくない?』


 と魔王様が自分の必要意義を問う

再び魔女が説明に入る


 『こいつらはね、子供なんだよ

 もしこいつらが悪党で、自分達が悪事を行い

 その行為で金銭を得て、他人を蹴落として

 それを商売としている

 それをわかっている、そうならまだいいんだよ

 私とこの街の住人に危害を加えない限りはね

 まぁ良くはないが、その場合ならもっと簡単に

 闇に落としてるんだけどね

 こいつらは自分達が悪党だとは思ってないのさ

 自分達はハッキング、その他の情報戦力を使い

 巧みにデータを盗み、それをうまく売る

 それは自分達の努力でそれが出来る自分達が

 素晴らしいとさえ思ってる。

 バレなければ大丈夫、自分達ならバレない

 そんな感じなんだろうね

 悪い事をしているという認識がない

 悪意の無い悪

 一番タチが悪いタイプだ

 この街を治めてる私としては

 ただ懲らしめるよりも、教育が必要かなって思ってね

 悪い事をしたらお仕置きされるんだよ』

 

そう言いながらにやっとする魔女を見て


 うわ〜悪そうな顔してるよ


と思う魔王様


 

続く

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